(仮称)六郎館岳風力発電事業の環境影響評価方法書に関する意見書を提出しました
日本自然保護協会(NACS-J)は、鹿児島県大隅半島の「大隅半島緑の回廊」で計画されている(仮称)六郎館岳風力発電事業の環境影響評価方法書に対し、全国的に見て生物多様性上重要な場所であることから、自然環境と生物多様性の保全を重視した調査・評価を行うように意見を述べました。
(仮称)六郎館岳風力発電事業 環境影響評価方法書に関する意見書(PDF/688KB)
2023年5月15日
ジャパン・リニューアブル・エナジー株式会社 御中
(仮称)六郎館岳風力発電事業 環境影響評価方法書に関する意見書
〒104-0033 東京都中央区新川1-16-10 ミトヨビル2F
公益財団法人 日本自然保護協会
理事長 亀山 章
日本自然保護協会は、自然環境と生物多様性の保全の観点から、鹿児島県肝属郡肝付町船間地区、錦江町大原地区で計画されている(仮称)六郎館岳風力発電事業(事業者:ジャパン・リニューアブル・エナジー株式会社、約51,600 kW、基数:最大12基)の環境影響方法書(作成委託事業者:株式会社長大)に関する意見を述べる。
1)大隅半島緑の回廊への配慮がされていない
本アセス図書の対象事業実施区域(約670ha)は、環境配慮書段階の事業実施想定区域(約1,765ha)から区域を絞り込んだもののであるが、その際に林野庁が設定した大隅半島緑の回廊への配慮は行われておらず、生物多様性上重要な緑の回廊が占める面積割合は大幅に増加している。このような生物多様性を軽視した再生可能エネルギーの導入は、行うべきではない。生物多様性を考慮した対象事業実施区域を再度検討すべきである。
2)風力発電機の設置場所が未確定
緑の回廊を中心とした大半の本事業実施区域内には現在、大型のタワーやブレードを搬入することができる搬入路は存在せず、風力発電機の搬入のためには既存道路の大幅な拡張および新規に搬入路の整備を行う必要がある。しかし、最大12基設置予定の風力発電機の設置場所が不明であるため、どのような経路でどの程度の風力発電機を搬入するかが未確定の状態である。このような状態では、自然環境への影響を正しく評価することは困難であり、現計画段階で環境影響評価を正しく行うことは不可能である。
3)希少な腐生ランや着生ランの詳細な調査が必要
大隅半島の照葉樹林には、「環境省レッドリスト2020」で絶滅危惧種ⅠA類のヘツカラン、絶滅危惧ⅠB類のキリシマエビネ、カンランなどの希少なランが生育している可能性がある。また「環境省レッドリスト2020」で絶滅危惧ⅠA類のサクラジマエビネ、絶滅危惧ⅠB類のタネガシマムヨウラン、ナゴランなどの腐生ランや着生ランが生育している可能性もある。腐生ランの同定は花季のみ可能であるが、その重要性から確実に同定し記載すべきである。また、樹上の着生ランに関しても、一本一本の樹上の確認を慎重に行い確実に同定し記載すべきである。
4)改変されるミミズバイ-スダジイ群集の予測結果の根拠が不明
本方法書の表4.3-22重要な自然環境のまとまりの場への影響の予測結果において、自然植生(植生自然度9)のミミズバイ-スダジイ群集の予測結果で、「事業実施想定区域内に一部が存在することから、事業によりその一部が改変され、事業実施による影響が生じる可能性があると予測する。」と記述しているにもかかわらず、影響程度が〇(影響はない)としている根拠が不明である。改変されるにもかかわらず、影響がないと断定している科学的な根拠を記述すべきである。
以上