宮城県の南三陸町で開催された「志津川湾展」で、湿地植物の移植の状況や、植生調査について展示・発表してきました。
保護・研究部の朱宮です。
3月21日~22日、宮城県の南三陸町で、志津川湾の自然環境や生きものについて紹介する企画展示会「志津川湾展」があり、寺浜での湿地植物の移植後の植生(参考記事:https://www.nacsj.or.jp/diary2/2014/10/post-529.html)や、まきだし実験の結果、2013年に実施した水戸辺川の底生動物と有機物の調査結果を発表しました。
植生調査は、河野耕三さん(綾町役場)、大渕香菜子さん・皆川拓さん・西野文貴さん・増田頌人さん・鈴木花江さん(東京農業大学)と私が行いました。まきだし実験は、宮城大学の関さやかさんと神宮字寛先生、水戸辺川の調査はてるはの森の会の林裕美子さんと名古屋女子大学の村上哲生先生が調査を行いました。
この「志津川湾展」は、ネイチャーセンター友の会が主催となり、物産販売と併設する形で志津川湾の生き物たちを紹介しています。また、当日は東北大学の学生が子ども達と一緒に標本を使って博物館の展示を実際に工夫して展示してみるという取り組みも行われていました。
土日ということもあり、延べ1068人が訪問してくれたようです。また物産販売と併設されていたこと、コーヒーを無料で出すなどくつろげる空間を作る工夫もされていたことで、一般の方が入りやすかったということもあるかもしれません。私たちの発表は少し学術的すぎたのと、他の展示は標本と合わせて展示されていたこともあり、残念ながら他の展示と比べるとちょっと少なかったかなという印象でした。
▲志津川湾展の展示
移植元の波伝谷と移植先の寺浜のようすもみてきました。
▲移植元は波伝谷の高台移転先をつなぐ復興道路の建設のため消失しました。3カ所から移植をしましたが、すべて消失しました。
▲正面に見えるのが高台移転先です。高台の上のスギ林の周辺にモニタリングサイト1000の一般サイトがあります。復興道路はこの高台に8mの高さで接続される予定です。手前は農地復旧が行われた後で、移植元の一つが消失しました。高台移転先の造成で出た土をほ場整備のために使っています。池の周辺にはミズアオイや水草がたくさん見られました。
▲復興道路の基礎部分ができつつあります。波伝谷の湿地はこの工事によりすべて消失しました。
21日の夕方には、日本総研の研究員である藻谷浩介さんの講演がありました。
地域を元気にするためには、若い人が安心して子育てができる環境をつくること、地域の中で経済が回るようにすること、地元の食とエネルギー(地産地消)の重要性をお話されていました。できるだけ、油を使わず、地元のものを食べる、あるいは売っていく工夫をすることだということです。
地域の固有の生物多様性を保全することは、お母さんが安心して子育てをする環境面での貢献をすると思いますし、森林の活用は地域の生物多様性を豊かにするだけでなく、地元のエネルギーの創出に貢献するかもしれません。その象徴が、復元したミズアオイであり、南三陸ではみられなくなったイヌワシであるのだと思いました。地域の生き物の健康状態は、そこが人間も安心して暮らしていける場所であるかどうかの指標であると改めて感じました。
▲藻谷浩介さんの講演