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地熱の優良事例形成検討会に参加してきました。

2015.04.23
活動報告
icon_tsujimura.jpg 保護室の辻村です。
 
今年の3月から環境省により、「国立・国定公園内の地熱開発に係る優良事例形成の円滑化に関する検討会」が開催されています。この第2回会議が、4月23日に開催され、ゲストスピーカーとして参加しました。
 
日本自然保護協会は、2011年8月1日に、日本における電力エネルギーの展望について、1)原子力発電によるエネルギー供給を計画的になくすこと、2)省エネルギーを第1に進め、地域の自然にあったエネルギーシステムへ転換することと表明しています。この観点から、日本自然保護協会としては、自然再生可能エネルギーとしての地熱発電や風力発電については、その導入を否定するものではありません。しかし、これまでの地熱発電事業では、温泉資源への悪影響の危惧を源泉所有者に与え続けていることや、自然公園の景観上の問題など、地域と融和し自然環境を保全しながら進めてきたとはいえません。
 
今日の会議では、まず、優良事例を形成するために、その前提として考慮されるべき日本の国立・国定公園が守る日本の自然と生物多様性が、世界と比較して非常に貴重でかつ希少であることをお話しさせて頂きました(参考記事「登山やトレイルランニング…… 個性豊かな日本の自然を賢く楽しむために。」)。そのうえで、国立・国定公園で守られていない重要な自然があることや、自然公園の規制の強弱を定めている地種区分と実際の自然の自然度とが整合していないことを明らかにしました。ですから、開発等の可否判断の基準は、地種区分ごとの一律の基準で対応するのではなく、特別保護地区や第一種特別地域となっている範囲は厳正に保全することは当然ですし、その他の地域だとしても、自然環境への影響を最大限回避することを念頭に個別のケースごとに可否判断をすることが必要不可欠で、さらなる規制緩和はもってのほかです。
 
生物多様性国家戦略2012-2020によれば、日本の生物多様性は4つの危機にさらされています。第1の危機は、開発や乱獲による種の減少や絶滅および生息・生育地の減少。第2の危機は、里地里山などの手入れ不足による自然の質の低下。第3の危機は、外来種による生態系のかく乱。そして第4の危機が、温暖化による地球環境の変化による危機です。この第4の危機である地球温暖化は、我々の暮らしを支える生物多様性の基盤を根幹から破壊する可能性があります。この解決のために、持続可能な自然エネルギーの導入促進が急務であることは自明です。一方で現代世代を生きる我々の責務は、持続可能な自然エネルギーを中心としたエネルギー供給体制へと早急に社会構造を改善し、世界の宝ともいえる豊かな自然環境を後世に引き継ぐことです。いずれも、守るべきものは、我々が暮らすこの自然環境、生物多様性を守ることのはずです。
 
この観点から見た場合、自然エネルギーの導入のための開発行為が国家戦略でいう生物多様性への第1の危機になるということは、本末転倒だと言わざるを得ません。
 

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