西表島・イリオモテヤマネコ行動圏の農地開発事業は見送りに
会報『自然保護』No.449(2000年9月号)より転載
昨年何度か報道され、国会での論議もなされていた沖縄県西表島・大富の国有林を払い下げて行う農地開発事業は、自然保護問題の解決ができないことから、県は2001年度予算要求を断念、見送りが決定した。
この地域は、西表島森林生態系保護地域の隣接地で、小さな起伏の連なりの中に湿地と沢が広がり、数頭のイリオモテヤマネコの行動圏となっている。また、秋にはサシバの大群が越冬地に南下する際の休息地としたり、水辺は八重山地域にすむカエル類にとって重要な生息地となっている。県が各分野の研究者に依頼してまとめた自然環境の報告書も昨年NACS-Jに提供されている。
NACS-Jは、その内容、そしてこの用地のすぐ隣まで、かつてコウモリ類の重要な生息環境との調整に困難を極めた野球場規模の構造改善農地がすでに広がっていることなどから、これ以上の森林の開発はするべきではないと判断し、地元の「西表島自然史研究会」の意見を伺いつつ、農地改良組合・沖縄県・林野庁(九州森林管理局)・環境庁に環境の保全と農地開発事業の見直しを働きかけていた。
地元では、この問題の関係者が協議会をつくり、どうしたら良いかを話し合う仕組みができている。NACS-Jは今後も、この仕組みが有効に働くよう必要な働きかけを続けていく考えである。この問題については、何人もの会員の方から協力のご寄付やご意見のお手紙などをいただいてきた。島の農業と自然保護が両立する方法をみつけるため、今後も努力したいと考えている。
(横山隆一・常務理事)