絞り込み検索

nacsj

赤谷には「尾瀬」の地名発祥の地「オゼノタ」がある!?

2015.07.16
活動報告
icon_syumiya.jpg エコシステムマネジメント室の朱宮です。
 
7月12~13日で、赤谷プロジェクトエリア内の小出俣山頂周辺の「オゼノタ」の探索と小出俣沢周辺の試験地設定の下見に行きました。
 
「オゼノタ」は、小出俣山の南側に派生する尾根を「オゼノ尾根」とも呼んでいることからもわかるように「尾瀬」という地名が使われています。
幕末~明治時代のイギリス外交官・アーネスト佐藤氏の息子であり、植物学者、登山家、日本自然保護協会初代理事でもある武田久吉氏の古い紀行文には、この尾根からオゼノタについての記載があるそうです。紀行文には、「尾瀬の田」という字があてられているようだということで、「尾瀬」という地名の起こりは群馬県からだという証拠になるのではと、川古に泊まって探しにいったものの「見つからなかった」と記述されているそうです。
 
「オゼノタ」の場所は小出俣とされ、山頂から南東にのびる尾根にはオゼノ尾根という名称で登山地図にも記載されています。そこで、赤谷プロジェクトの環境教育ワーキンググループが、おそらく山頂付近に湿地のような環境があるのではないかと考え、今回の探索に至りました。
 
横山NACS-J参事は10年前の6月にも探索をしています。今回同行した赤谷サポーターの川端さんも10年前に横山と一緒に山頂に上がっていますが、その時はまだ雪が残っており、湿地の存在は確認できなかったそうです。
 
そこで今回は1ヶ月ずらし7月にしてみました。オゼノ尾根は登山道もなく山菜取り(ネマガリタケ)の方が登るぐらいでほとんど人が入らないため、チシマザサやリョウブなどの低木の藪こぎになります。特に1600mを超えたあたりから、ササの密度や高さが増し、泳いでいるかんじになりました。10年前の探索では雪が残っていたため快適だったそうですが、この日は暑く汗が噴き出します。
 

20150712akaya1.jpg
▲写真1:山頂付近。横山NACS-J参事と赤谷サポーターの川端さん 
 
必死に登り続け、ようやくササがすねより低く藪こぎがなくなると山頂です(写真1)。
ここからの眺望は本当にすばらしかったです。
谷川岳から平標山までの森林に覆われることのない森林限界以上の雪食地形や雪崩斜面が見渡すことができます。
 

20150712akaya2.jpg
▲写真2:上越国境の山々、万太郎山方面。雪食地形が発達する。赤谷川本谷源頭部
 
雪崩斜面は森林に覆われることはなく、イヌワシが狩りをする狩り場になっていることがわかります(写真2)。振り返れば赤谷プロジェクトの下流側が見られ、森林に覆われた状態が確認できます(写真3)。赤谷プロジェクトではここにイヌワシの狩り場となる草地を創生しようとしています。冬季には雪崩斜面は雪に覆われてしまうため、低標高での狩り場を作ることになるということが理解できます。
 

20150712akaya3.jpg
▲写真3:小出俣沢周辺、台形のピークは大峰山。ここまで赤谷プロジェクトエリア。集水域がまるごとエリアに入っていることがよくかる。昔は茅場などがあり草地も多かったようだが、現在では完全に森林に覆われてしまっている。
 
さて、一番の目的であったオゼノタの発見ですが、はよくわかりませんでした。山頂は狭く、南側は崩壊斜面になっています。北側もやや段差がありますが、湿地が維持されるような環境ではないようです。
「オゼノタ」の地名がどこから来たのか謎が深まります。
 
翌13日は、林野庁の職員の方々(伊與部さん、藤澤さん、藤木さん、永町さん)と小出俣沢周辺のスギやカラマツの人工林に設置しようとしている試験地の下見にいきました(写真4)。

20150712akaya4.jpg
▲写真4:小出俣における試験地の視察。
 
現場は50年~60年生の人工林ですが、広葉樹がかなり侵入している林分が多く、実験区を設定すると不成績造林地での効果的な伐採方法の検討という意味合いになりそうです。伐採方法は、通常の間伐、広葉樹保残間伐、主伐、広葉樹保残型主伐を想定しており、実験区設定のためには間隔をおいて繰り返しも必要ですが、人工林が狭く工夫が必要そうであることがわかりました。
 
試験地の視察のあとは、スギ漸伐試験地に設置したセンサーカメラの交換に行きました(写真5)。2011年に人工林を伐採し、復元の状況をモニタリングしており、センサーカメラによる観測もその一環です。10カ所設置してありますが、4年が経過して草本や低木などが背丈を超えるくらいになっているところもあり、巡回するだけでもたいへんでした。

20150712akaya5.jpg

▲写真5:センサーカメラを交換するNACS-Jの藤田。

 
しかし、初期遷移の状況がよくわかり、巡回するだけでもたいへん勉強になりました(写真6)。人工林内のシカ柵はなんとか無事でしたが、伐採地内に設置されたシカ柵は今年の雪により2カ所でそれぞれポールが折れ、壊れてしまいました。多雪地での観測の難しさも実感しました。

20150712akaya6.jpg
▲写真6:20m皆伐区の復元状況。4年前に伐採を行った手前が自然林(広葉樹二次林)。北側を向いており日陰になるためタラノキ、タケニグサ、イチゴの仲間などの侵入が見られない。
 

前のページに戻る

あなたの支援が必要です!

×

NACS-J(ナックスジェイ・日本自然保護協会)は、寄付に基づく支援により活動している団体です。

継続寄付

寄付をする
(今回のみ支援)

月々1000円のご支援で、自然保護に関する普及啓発を広げることができます。

寄付する