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道北で計画されている3つの大型発電所計画段階環境配慮書に対して意見書を出しました

2022.03.23
要望・声明

日本自然保護協会(NACS-J)は株式会社ユーラスエナジーによる、北海道北部で計画されている「(仮称)宗谷管内風力発電事業」、「(仮称)留萌北部(沿岸)広域風力発電事業」、「(仮称)抜海・豊田風力発電事業」の各事業について、環境配慮書段階で、以下のような自然環境への影響が十分に回避できない場合には、事業の撤回も含めて検討すべきであると意見を出しました。

  • チュウヒ、クマタカ、タンチョウ、オジロワシ、シマフクロウなど絶滅危惧種への影響回避。
  • 重要な植物群落および、ミヤマハナワラビやテシオコザクラなど絶滅危惧種への影響回避。
  • トウキョウトガリネズミや各種コウモリ類など絶滅危惧種への影響の回避。
  • 宗谷丘陵を中心とした日本を代表する周氷河地形の保全。

さらに、生物多様性保全上、重要な地域の計画地からの除外。また、既設の風力発電事業および本事業者が計画中の風力発電事業による渡り鳥などへの累積的な影響を適切に評価すべきと意見しました。


2022年3月22日

(仮称)宗谷管内風力発電事業計画段階環境配慮書に関する意見書

〒104-0033 東京都中央区新川1-16-10 ミトヨビル2F

公益財団法人 日本自然保護協会
理事長 亀山 章

(仮称)宗谷管内風力発電事業(事業者:株式会社ユーラスエナジー、総出力:約60万kW、120~150基程度)実施想定区域内には、オジロワシ、クマゲラなどの鳥類、テシオコザクラなどの絶滅危惧植物の生息が予想される。また周辺には既設の風力発電施設が複数存在しているのに加えて、大規模な風力発電事業が複数計画されており累積的な自然環境への影響が多大になると懸念される。 このようなことから、本事業による自然環境への影響が十分に回避できない場合には、事業の撤回も含めて検討すべきである。

1)生物多様性保全上の重要な地域が含まれている

本事業実施想定区域内には、一般社団法人コンサベーション・インターナショナル・ジャパンによって生物多様性保全の鍵になる地域(KBA)に指定されている猿払、サロベツ川・天塩川の2か所が含まれている。2030年までに世界の陸域・海域の少なくとも30%を保全・保護することを目指す生物多様性に関する新たな世界目標「30 by 30(サーティー・バイ・サーティー)」が推進されている中で、計画段階とはいえ、このような生物多様性保全上重要な場所での大規模な開発行為の検討をおこなうべきではない。

2)鳥類への影響

本事業実施想定区域ではハヤブサ、オジロワシ、チュウヒなどの希少猛禽類だけでなく、クマゲラ、オオジシギといった希少鳥類が生息していると考えられ、風車によるバードストライクが強く懸念される。環境省作成の陸域版センシティビティマップにおける注意喚起メッシュ図では、重要種がおり、かつその集団飛来地が重なっているA1、A2のメッシュが含まれており、鳥類への影響が強く懸念される。そもそも配慮書段階とはいえ、このような生物多様性の喪失をもたらす可能性が高い地域を、事業想定区域に含めて検討を行うべきではく、事業者の環境配慮への姿勢のあり方が疑われる。

3)日本を代表する周氷河地形の改変

宗谷丘陵の北部は最終氷期に凍結-融解作用を受けた周氷河地形が卓越し、「日本の地形レッドデータブック第2集-保存すべき地形-」(小泉武栄・青木賢人(編)、2002年、古今書院)において「宗谷丘陵の周氷河性波状地」として掲載されている。本事業は「宗谷丘陵の周氷河性波状地」の約57.9%の範囲が事業予定地に含まれており、新たな作業道の建設などにより日本を代表する周氷河地形の改変が危惧され、「宗谷丘陵の周氷河性波状地」のエリアを事業地から外すべきである。

4)哺乳類への影響

本事業実施想定区域には、環境省のレッドリストにおいて絶滅危惧Ⅱ類(VU)のトウキョウトガリネズミ、メホオヒゲコウモリ、ウスリホオヒゲコウモリなどの哺乳類が生息しており、本事業の実施により、これらの絶滅危惧種への影響が懸念される。特にトウキョウトガリネズミは本事業実施想定区域の草原や草地などに生息しているが、国内では北海道に局所的に分布するのみであり、本事業実施にあたってはその影響を最大限に考慮すべきである。

5)重要な植物群落、植物種への影響

本事業実施想定区域には、環境省の学術上重要な群落の特定植物群落である声間ミズナラ矮性林・トドマツ林、東浦(宗谷丘陵)自然林、東浦トドマツ林、北大天塩地方演習林蛇紋岩地帯アカエゾマツ林、猿払川中流の湿原が含まれ、さらには稚内市の天然記念物である目梨高山植物群落も含まれている。また、環境省のレッドリストにおいて絶滅危惧ⅠA類(CR)のミヤマハナワラビ、北海道のレッドリストにおいて絶滅危惧ⅠA類(CR)のヤチランやエゾセンノウ、テシオコザクラなど絶滅危惧植物が多数自生し、特に幌延町の町花であるテシオコザクラは、天塩川流域の蛇紋岩地の一部にしか分布していない植物である。それにも関わらず幌延町内のテシオコザクラの分布推定エリア全域が本事業実施想定区域に含まれている。環境影響配慮書段階でも、生物多様性保全上重要なことが明白な場所を計画地に入れている事業者の生物多様性に対する見識を疑わざるをえず、重要な植物群落や絶滅危惧植物の生息地は事業実施エリアに含むべきではない。

6)累積的影響

本事業実施想定区域の周囲には、複数の風力発電事業および計画が存在する。特に本事業者である、株式会社ユーラスエナジーはユーラス宗谷岬ウインドファーム、天北ウインドファームを既に稼働させており、さらには、川南ウインドファーム、(仮称)留萌北部(沿岸)広域風力発電事業、(仮称)抜海・豊田風力発電事業を計画している。本事業は、これらの既存の事業および計画中の事業と相まって自然環境へ累積的な影響を発生させる恐れがある。特にオジロワシなどカムチャッカ半島からの渡り鳥のルートであり渡来地でもあるため、個体群への影響が強く懸念される。詳細な事業区域選定は、少なくとも既設の風力事業および同社が計画中の風力事業の累積的な影響を加味して行うべきである。

以上


2022年3月22日

(仮称)留萌北部(沿岸)広域風力発電事業における
計画段階環境配慮書に関する意見書

〒104-0033 東京都中央区新川1-16-10ミトヨビル2F
公益財団法人 日本自然保護協会
理事長 亀山 章

(仮称)留萌北部(沿岸)広域風力発電事業(事業者:株式会社ユーラスエナジー、総出力:約35万kW、70~80基程度)計画区域には、オジロワシやクマタカなどの鳥類、ミヤマハナワラビなどの絶滅危惧植物の生息が予想され、生物多様性保全上重要な地域が含まれており、自然環境への影響が強く懸念される。また周辺には既設の風力発電施設が複数存在しているのに加えて、大規模な風力発電事業が複数計画されており累積的な自然環境への影響が多大になると懸念される。 このようなことから、本事業によって自然環境への悪影響が十分に回避できない場合には、事業そのものの撤回も含めて検討すべきである。

1)生物多様性保全上重要な地域が含まれてい

本事業実施想定区域には、一般社団法人コンサベーション・インターナショナル・ジャパンにより生物多様性保全の鍵になる地域(KBA)として指定されているサロベツ川・天塩川が含まれている。2030年までに世界の陸域・海域の少なくとも30%を保全・保護することを目指す生物多様性に関する新たな世界目標「30by30(サーティー・バイ・サーティー)」が推進されている中で、計画段階とはいえ、このような生物多様性保全上重要な場所での大規模な開発行為の検討をおこなうべきではない。

2)鳥類への影響

本事業実施想定区域には(公財)野鳥の会が定めた重要野鳥生息地(IBA)のサロベツ原野が含まれている。さらに、環境省作成の陸域版センシティビティマップにおける注意喚起メッシュ図では、風車の建設には注意を要するエリア(A3)が含まれており、チュウヒ、クマタカ、タンチョウ、オジロワシなどの生息への影響が強く懸念される。配慮書P.63にこれら鳥類の「主な生息地でない」と記述されているが、主な生息地でなくても事業想定区域は生活圏であり、風車によるバードストライクなどによって、生存そのものに影響があることから、本事業実施想定区域からIBAおよび陸域版センシティビティマップのA3のエリアは除外するべきである。

3)重要な植物群落、植物種への影響

特定植物群落「天塩河口アカエゾマツ林」と「天塩町干拓~更岸海岸林」が事業実施想定区域に含まれている。また事業実施想定区域の草地には環境省のレッドリストにおいて絶滅危惧ⅠA類(CR)のミヤマハナワラビ、絶滅危惧Ⅱ類(VU)のフタマタイチゲ、湿地には環境省のレッドリストにおいて絶滅危惧ⅠA類(CR)のチシマヒメトグサ、絶滅危惧Ⅱ類(VU)のエゾナミキなどの絶滅危惧植物が自生していると予想される。これら重要な群落や植物種の喪失の恐れがあり、特定植物群落および絶滅危惧植物の分布が予想されるエリアは計画地から完全に除外するべきである。

4)累積的影響

本事業実施想定区域の周囲には、複数の風力発電事業および計画が存在する。特に本事業者である株式会社ユーラスエナジーが、ユーラス遠別ウインドファームを既に稼働させている。さらには、(仮称)浜里風力発電事業、川南ウインドファーム、(仮称)宗谷管内風力発電事業、(仮称)抜海・豊田風力発電事業を計画している。本事業は、これらの既存の事業および計画中の事業と相まって自然環境へ累積的な影響を発生させる恐れがある。特にオジロワシなどカムチャッカ半島からの渡り鳥のルートであり渡来地でもあるため、個体群への影響が強く懸念されることから、少なくとも既設の風力事業および同社が計画中の風力事業の累積的な影響を加味して事業計画地の選定を行うべきである。

以上


2022年3月22日

(仮称)抜海・豊田風力発電事業計画段階環境配慮書に関する意見書

〒104-0033 東京都中央区新川1-16-10ミトヨビル2F
公益財団法人 日本自然保護協会
理事長 亀山 章

(仮称)抜海・豊田風力発電事業(事業者:株式会社ユーラスエナジー、総出力:約12万kW、約25~30基)実施想定区域には、オジロワシ、クマタカなどの希少猛禽類や、絶滅危惧種のコウモリ類、絶滅危惧植物の生息が予想される。また周辺には既設の風力発電施設が複数存在しているのに加えて、大規模な風力発電事業が複数計画されており累積的な自然環境への影響が多大になると懸念される。 このようなことから、本事業実施にあたっては自然環境への影響を最大限考慮し、自然環境への影響が十分に回避できない場合には、事業の撤回も含めて検討すべきである。

1)生物多様性保全上重要な地域が含まれている

本事業実施想定区域には、一般社団法人コンサベーション・インターナショナル・ジャパンにより生物多様性保全の鍵になる地域(KBA)に指定されている、サロベツ川・天塩川が含まれている。2030年までに世界の陸域・海域の少なくとも30%を保全・保護することを目指す生物多様性に関する新たな世界目標「30 by 30(サーティー・バイ・サーティー)」が推進されている中で、計画段階とはいえ、このような生物多様性保全上重要な場所での大規模な開発行為の検討をおこなうべきではない。

2)鳥類への影響

本事業実施想定区域にはオジロワシ、クマタカ、チュウヒなどの希少猛禽類が生息していると考えられ、風車によるバードストライクが強く懸念される。環境省作成の陸域版センシティビティマップにおける注意喚起メッシュ図では、本事業実施想定区域全域が、重要種がおり、かつその集団飛来地が重なっているA3となっている。さらには、浦ら(2021)による「陸上風力発電に対する鳥類の高精度な脆弱性マップ作成の実践-北海道北部地域における事例」に掲載されているセンシティビティマップの脆弱性カテゴリーで、高脆弱性地域に本事業実施想定区域の半分の地域が該当する。このようなことから、事業実施想定区域の大半は、風車によるバードストライクなど鳥類への影響が強く懸念される場所であることは明白であり、鳥類への影響が強く懸念される区域は事業実施区域から除外すべきである。配慮書段階とはいえ、このような事業実施により生物多様性の喪失をもたらす場所を事業実施想定区域に含めて検討している事業者の自然環境への配慮の姿勢に対し、強い疑問を感じざるをえない。

3)哺乳類への影響

本事業実施想定区域には、環境省のレッドリストにおいて絶滅危惧Ⅱ類(VU)のウスリホオヒゲコウモリやオヒキコウモリなどのコウモリ類等が生息しており、風車建設によるバードストライクなどによって、これら重要な動物への影響が懸念される。

4)重要な植物群落、植物種への影響

環境省の学術上重要な群落の特定植物群落である稚内~抜海丘陵ササ草原、勇知のミズナラ林、夕来トドマツ林・海岸林が、本事業実施想定区域に含まれている。これら群落は生物多様保全性の観点から風力発電設備や搬入路の設置に伴う土地改変を行うべきではない。また、本事業実施想定区域内には環境省のレッドリストにおいて絶滅危惧ⅠA類(CR)のミヤマハナワラビやミヤマノギク、ホソスゲなどの絶滅危惧植物が自生している可能性があり、事業実施区域決定の際には最大限の配慮を行うべきである。

5)累積的影響

本事業実施想定区域の周囲には、複数の風力発電事業および計画が存在する。特に本事業者である、株式会社ユーラスエナジーはユーラス宗谷岬ウインドファーム、天北ウインドファームを既に稼働させており、加えて、川南ウインドファーム、(仮称)留萌北部(沿岸)広域風力発電事業、(仮称)宗谷管内風力発電事業を新たに計画している。本事業は、これらの既存の事業および計画中の事業と相まって自然環境へ累積的な影響を発生させる恐れがある。特にオジロワシなどカムチャッカ半島からの渡り鳥のルートであり渡来地でもあるため、個体群への影響が強く懸念されることから、少なくとも既設の風力事業および同社が計画中の風力事業の累積的な影響を加味して事業計画地の選定を行うべきである。

以上


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