ブナ林の再生をめざす、秋田県森吉山麓高原に行ってきました。
自然保護部の志村です。
9月1、2日に秋田県の森吉山麓高原に行ってきました。
台風の影響もなく、日差しはじりじりと暑いものの、ススキの穂がきれいで、秋が近いことを感じました。
この高原は、牧場として開拓され、キャンプ場として使われていましたが、現在では、かつてのブナ林の再生をめざした再生事業が行われています。
ここを訪れたのは、自然再生専門家会議の一員として現地調査のためで、自然再生推進法で重視している、科学的な計画づくりや、多様な主体が協働してすすめられているか、再生の進捗状況はどうかなどについて、全国の再生の現場を何カ所かずつ現地調査しています。
森吉山麓高原は、冬は2~3メートルの積雪がある多雪地帯です。ササが地面を覆いつくしてしまうと、他の樹木が生育できなくなってしまうため、ササが広がる前に小さな島状の森をつくり、そこを核にしてブナの森が広がっていけるようにと、10年間いろいろな試行錯誤してきたそうです。
再生事業地のすぐ隣の森には、クマゲラという日本最大のキツツキの仲間が生息しており、国設鳥獣保護区の特別保護地区に指定されています。クマゲラは、かつては北海道だけに生息しており、本州にはいないとされていたのですが、ここ森吉山周辺は本州で初めて繁殖が記録された場所なのです。
クマゲラが生息するのは、餌となる虫がいるような枯れ木や、営巣に使える大きな木もある成熟した森。クマゲラが生息できるような森を広げていこうと、この事業が始まったそうです。
現在の計画では、100年後に森になる姿を描きながら取り組まれています。クマゲラのために、ふたたび森に戻そうという協議会の、壮大で真摯な取り組みに頭が下がるとともに、膨大な努力を見せていただいたことで、ブナ林など再生の難しい自然についてはとくに、いまある自然を残すことの重要さをあらためて深く感じました。