自然を活かしたまちづくり・ 震災復興を支援します
東日本大震災の復興において自然の恵みを活かしたまちづくりを進めるためには何をすればいいのかを考えるため、5月3日、宮城県名取市で「グリーン復興と生物多様性座談会」を開催しました(東北大学大学院生態適応グローバルCOE、名取エコミュージアム研究会と共催)。
当日の名取市は大雨洪水暴風波浪警報が発令されるほどの大雨でしたが、地元の方々だけでなく、関東圏の方々、環境省、スタッフも含めて約70名が参加しました。
第一部では東北大学・中静透教授(NACS-J評議員)とNACS-J保全研究部・朱宮が、まちづくりに生物多様性保全を活かす重要性について、具体例を踏まえて講演しました。第二部では、地元の名取市で活動をしている企業や学校、市民グループなど5団体から保全活動を紹介いただき、今後の復興のあり方を話しあう座談会を行いました。
名取市は海岸のハマボウフウ、自然遡上するサケ、ホタルなど海から山までさまざまな生きものが暮らす豊かな自然があること、津波によって海岸部は壊滅的な被害を受けたこと、国主導で高い防潮堤を建設することがすでに決まった地域であることなどが話題提供されました。
この堤防設置のための市主催の意見交換会に参加した地域の方からは、被災した人々を前にして、高い堤防ではなく、低い堤防でもいいから生態系を活かした地域づくりにしたいと思っていても話せなかった苦しい状況が語られました。
これからの復興計画は、従来の土木中心の復興ではなく、私たちひとりひとりの地域の暮らしのあり方を見つめ、災害とどう向き合うか、どうすれば私たちが豊かな暮らしができるのか、行政だけでなく地域住民、市民団体、企業など多くの人々と共有し、将来を見据えたまちづくりを考える機会にしたいという声が多数あげられました。
この座談会で、地域の人々のさまざまな意見を復興計画に反映させることの重要性と難しさを参加者と共有することができました。NACS-Jでは、今後も地元の方の願いが復興に取り入れられるよう支援していきます。
▲参加者からは、被災地で「自然も含めて守りたい」との思いを言えずにいた辛い状況も語られました
▲宮城農業高校で実施している復興桜プロジェクトを高校生たちが紹介
(藤田卓/保護プロジェクト部)