絞り込み検索

nacsj

下総生物多様性アクションプラン 第1回推進会議を開催しました。

2012.02.29
活動報告

下総生物多様性アクションプラン 第1回推進会議の結果概要(PDF/793KB)


下総生物多様性アクションプラン
第1回推進会議の結果概要

 

■ 日時及び場所
・2012年1月22日(日) 13:00~17:30 松戸市東部スポーツパーク第2会議室

■ 参加者 20名
・ 各市町村の市民団体のメンバー:流山、柏、白井、印西、四街道、市川、取手、手賀沼流域
・ 消費者団体:生活クラブ生協東葛・下総ブロックのメンバー
・ 研究者:国立環境研究所の研究者
・ (NACS-Jスタッフ3名)

■ 会議の目的
「下総生物多様性アクションプラン」は、千葉北西部をモデル地域として、様々な分野の市民団体を巻き込みながら生物多様性や生態系サービスにとって重要な場を再発見し、市町村の境界を越えた広い範囲での保全アクションプランを作成・実行することを目指した事業です。この第1回目となる推進会議は、春からのプロジェクトの本格始動に先立って開催したもので、今後の事業の中核を担う各市町村の地元自然保護団体をはじめとする市民団体の方々に集まっていただき、プロジェクトの趣旨についての理解を深めるとともに、それぞれの市町村での保全の取り組みや成果・課題について共有することを目的として開催しました。


■ 会議の結果概要
shimousasuisinkaigi-1.jpg
1.会議の趣旨説明と自己紹介
はじめに、NACS-Jからこの推進会議の趣旨説明を簡単に行い、その後、参加者それぞれに簡単な自己紹介をして頂きました。shimousasuisinkaigi-2-3.jpg

 

 

2.NACS-Jからの発表:「今後の生物多様性と市民活動」

NACS-Jの道家哲平(保全研究部国際業務担当)から、2010年に開催された生物多様性条約COP10の成果や、それを踏まえた市民が果たすべき役割について報告しました。
COP10については、今後10年間の新しい生物多様性戦略計画(通称「愛知ターゲット」)について主に解説を行いました。愛知ターゲットでは、生物多様性と生態系サービスの損失を止めるための20個の目標が掲げられたことや、根本原因への対処(例:生物多様性に有害な補助金の撤廃)や数値目標が盛り込まれました。そして、その達成には多様な市民の積極的な参加とアクションが不可欠であることを報告しました。
また、愛知ターゲットの達成を目指した多様な主体の様々な活動を共有することを目的としたIUCN日本委員会の「にじゅうまるプロジェクト」の紹介や、現在全国各地で進んでいる「生物多様性地域戦略」の持つ可能性について紹介を行いました。

shimousasuisinkaigi-5.jpg3.各団体からの事例紹介
次に、参加頂いた団体のうち5つの団体から、それぞれの市町村での保全活動のこれまでの取り組みや成果、市内での保全上の課題について発表いただきました。

shimousasuisinkaigi-9A.jpg

 

 

○流山市:NPOさとやま 岡田さん
NPOさとやまは、つくばエクスプレスの沿線開発に伴う「市野谷の森」の保全運動がきっかけとなって組織された団体で、観察会や環境省のモニタリングサイト1000などの調査を中心に活動されています。流山市では2008年に地域戦略ができましたが、戦略の中で自分たちの活動場所や調査活動自体が重点地区や市のモニタリング活動としても位置づけられたとのことです。一方で、重点地区以外の場所の保全方針が不十分であることや、調査成果の具体的な活用方法が見えていない点、保全の担い手が少ないことなどが、市内の保全上の課題だとのことです。

○柏市:柏自然ウォッチャーズ 森さん
shimousasuisinkaigi-11.jpg柏自然ウォッチャーズは、柏市が過去に市内の自然環境基礎調査を行う際に、参加を呼びかけた市民の方々が調査後も集まって組織された団体です。その後も市内全域を6ブロックに分けての独自の調査や個々の里やまでの保全活動を続けられており、そのデータや活動実績が基礎となって地域戦略「柏市いきもの多様性プラン」ができたとのことです。戦略では、調査データを元に約37ヵ所の生物多様性ホットポイントを選定しており、現在はそれらの保全行動計画の元となる「診断カルテ」を作られています。ただ、ほとんどの場所が私有地で、地権者の高齢化や農地・森林の管理放棄が深刻で、高額な土地の値段や市の財政難のため公有地にはできないことが、市内の保全上の課題だとのことです。

shimousasuisinkaigi-13A.jpg○印西・白井市:北総里山クラブ 長谷川さん
北総里山クラブは、開発が進む北総線沿いに残る印西・白井市の貴重な里やまの保全をめざし、複数の市民団体が連合で組織したネットワーク団体です。北総線沿いには、残されている自然の素晴らしさに憧れて引っ越してきた方々が多いものの、未だに複数の開発計画が現在も進行しており、それを残したいという新住民が保全運動の中心を担っています。町の魅力であり経済的にも重要な里やまの価値を早急に明らかにし、街作りの中で守られていく仕組みを創出することが市内の保全上の課題だとのことです。


shimousasuisinkaigi-15.jpg○市川市北部:市川緑のみずがき隊/緑の市民フォーラム 岩田さん・森角さん
都市開発の進んでいる市川市では、これまでそれぞれの緑地を保全することに力を尽くしてきたものの、緑地を点でなく線で守ることが重要だとの考えから、市からの委託を受けて市内北部全域での自然環境調査を行いました。その結果も踏まえて、複数の市民団体が協力して北部2地域についての「水と緑の回廊構想」を市に提案しました。これは市川市の「市民政策提案制度」を利用して行ったものですが、共に提案が採択され、市が今後策定する地域戦略の基礎としても採用されることとなりました。提案では個別に数十の保全計画を提案しており、これを市の政策としてきちんと実行されていくよう市民側からも積極的に協力しなが進めることが、課題だとのことです。

shimousasuisinkaigi-17A.jpg○四街道市:四街道メダカの会 近藤さん
四街道メダカの会は、市内の「成山」の開発計画がきっかけとなって組織された団体で、現在は市内のいくつかの里やまで親子向けの観察会やメダカの里親制度の取り組み、モニ1000里地調査や政策提案などを行われている団体です。市内が狭いこともあり、他の分野の市民団体ともうまく連携がとれています。一方で、宅地開発は少なくなってきたものの、産業廃棄物処理場の建設問題は未だに深刻で、行政による歯止めがきかないのが市内の保全上の課題だとのことです。

shimousasuisinkaigi-19.jpg4.NACS-Jから下総アクションプラン趣旨説明
次に、NACS-Jの高川晋一(保全研究部)から、本プロジェクトの今後の事業計画案と、NACS-Jとして各地域の市民の活動や本プロジェクトの推進のためにサポートできるツールや機会について説明しました。
NACS-Jでは、愛知ターゲットの実現にむけて、生物多様性と生態系サービスの両方からみて各地域において重要な場所を再評価し、それらで様々な分野の市民団体を主役とした保全アクションプラを広域(下総エリア西部)にわたって作成・実行していくことを本プロジェクトの目標に掲げています。
その第1歩として2012年度は、ワークショップや研修会を連続開催し、地域の重要地域を市民団体と共に選定する予定です。
NACS-Jから参加者の皆さんには、このプロジェクトの主役となって欲しいということと、他団体への呼びかけ協力や、生物データや観察会などの既存イベントの機会を事業推進のために活用させて欲しいというお願いをしました。

shimousasuisinkaigi-21.jpg5.国立環境研究所の研究紹介:角谷さん
推進会議にはこのプロジェクトを学術的な面からサポートして頂ける、国立環境研究所の角谷さんらの研究チームにもご参加頂きました。
発表では、環境省で進んでいる「生物多様性評価の地図化業務」についての紹介や、生物多様性の「相補性」というものに着目して保全上優先度が高い地域を選ぶための新しい解析手法についてのご自身の研究内容を紹介いただきました。また、土地利用や人口予測を踏まえた将来の生物多様性の予測や、限られた労力のもとでの最適な保全努力量を探るための研究もされているそうです。今後は全国解析と平行して千葉県もモデル地域として位置づけ、保全の優先度の解析や、生物多様性の将来予測、将来様々な対策をとった際の適性保全努力量についての解析を行っていただけることになりました。

shimousasuisinkaigi-25.jpg6.グループ議論:下総アクションプランの可能性について
本会議の最後に、参加者にいくつかのグループに分かれていただき、現場での保全上の課題を踏まえた上で、この下総アクションプランに何を期待するかや、複数・多分野の市民団体が連携してできることについて、話し合いました。
議論の結果、以下のような課題解決のアイデアが提案されました。

  • 重要な場所でも農業の継続が困難だったり土地が売り払われ宅地や産廃処理場になることが課題である。生物や生態系サービスにとっての重要性を調査したり、評価基準をつくったり、経済的価値に置き換えたり、重要地域で生産される農作物のブランド化を図る。
  • ブランド化された保全型農作物を消費者が選択的に購入できるような仕組みを生協などの団体と協力して作る。
  •  調査や保全の担い手が不足している事も課題。また、行政は担当者が変わると政策が進まなくなることもあるのが課題。それに対しては、行政に参加呼びかけや地権者への説明を手伝ってもらいながらも、市民自らがボランティアを組織化・育成し、保全の主役として活躍することが大切。
  •  子どもを対象としたイベントを通じて、親世代の巻き込みと次世代の育成を図る。
  •  生態学者はもちろん、生きものを研究対象とする生態学以外の研究者も活動に巻き込み、予算獲得の協力者や保全の担い手となってもらう(例:分子生物学)

まとめ
春からのプロジェクト開始にむけて今後も推進会議を開催する予定です。次回は各団体がもつノウハウや活動内容をいかに有機的に組み合わせ、この下総アクションプランのプロジェクトの内容を具体的にどのように良いものにしていくかについて、実質的な話し合いを開始する予定です。

shimousasuisinkaigi-hyou.jpg

前のページに戻る

あなたの支援が必要です!

×

NACS-J(ナックスジェイ・日本自然保護協会)は、寄付に基づく支援により活動している団体です。

継続寄付

寄付をする
(今回のみ支援)

月々1000円のご支援で、自然保護に関する普及啓発を広げることができます。

寄付する