「今までの計画にこだわらず、柔軟に見直したい」
NACS-J、WWF-J、日本野鳥の会、3団体の会長との会談で愛知県知事が発言
2005年に開催が予定されている愛知万博の会場建設問題に関して3月17日、NACS-J、WWF-J、日本野鳥の会3団体の会長が、愛知県知事と会談しました。3団体の代表は昨年8月、会場建設予定地である愛知県瀬戸市の海上の森を合同視察し、同日愛知県知事に対して会場建設計画に対する申し入れ書を提出しましたが(本文はこちら)、それに対する回答は県側から受け取ってはいませんでした。
会談は東京・都市センターホテルで正午から約1時間行われました。会場には東京、愛知から約40人の報道陣が詰め掛け、この問題の関心度の高さを物語っていました。会談には、県側から愛知県知事・神田真秋氏、国際博推進局長・森徳夫氏、国際博推進局環境調整課長・近藤徳雄氏が、NGO側からは、NACS-J 会長・沼田眞、WWF-J会長・大内照之氏、日本野鳥の会会長・黒田長久氏、同副会長・岩垂寿喜男氏が列席しました。
▲会談後にコメントする 神田知事
会談後に知事は、「3団体からはかねてから要望書を受けており、その趣旨を本日あらためて聞かせていただいた。3団体の博覧会や環境への思いを聞き、たいへん勉強になった。現在は計画の見直し作業中なので、今日は申し入れに対する回答などの具体的な結論をお話ししたわけではない。状況を簡単にご説明したもので、中身の詳しいやり取りはしていない」とコメントしました。記者からの「提案されている国営公園構想については」「(BIEから求められたように)3団体の理解は得られそうか」という質問に対しても、「ざっくばらんに意見交換したのみで、具体的にどうするかという議論はなかった」との答えでした。今後の協議については、「必要であればトップ同士、あるいは事務レベル同士での議論はやぶさかではない」との回答でした。
その後3団体の代表の記者会見が、会談と同会場で行われました。冒頭、日本野鳥の会の岩垂寿喜男副会長が「今日の機会は、知事からの要望で実現したもの。我々側も昨年提出した3つの意見をまとめた申し入れ書に対する答えを聞きたかったので、この要望を受け入れた。知事からは、『住宅や道路計画も含め、今までの計画にこだわらず、何にも固執せず、柔軟でフレキシブルに見直しをする』というコメントがあり、これは抜本的な見直しを意味すると受け取った。このあとどうなるのかを見定めたい」と述べました。
▲3団体代表の記者会見
続いてWWF-J大内照之会長、NACS-J沼田眞会長、日本野鳥の会・黒田長久会長から、それぞれの団体から知事に対して申し述べた内容の説明がありました。NACS-Jの沼田会長からは、「2つの意見を述べた。1つは、従来の自然公園は自然がどういう特徴を持っているかで指定されていたが、『里山公園構想』は新しい概念であり、人と自然との関わりを重視したもので、海上の森はまさにそれに該当するということ。2つ目は、似たような事例で長野オリンピックのとき、岩菅山に当初滑降コースが予定されていたが、自然環境への配慮からこの場所を回避することになった。万博計画でも、人と自然のつながり尊重し、海上の森に下手に手を加えず、この場所から撤退してほしいと述べた」と説明がありました。
記者からの「今日の会談で満足は得られたか」「3団体の意見はどう取り入れられていくのか」という質問には、岩垂氏から「要望書に対する具体的な回答はまだないので、現段階では感想はない。『柔軟に検討する』とのことだから、どういう対応になるか見定めたい」との発言がありました。最後に「IUCN総会への決議案提出はどうなるか」という質問に対しては、岩垂氏から「もちろん生きている」とのコメントがありました。
このように、今日の会談の時点では、昨年8月の申し入れ書等、自然保護サイドからの意見に対する回答はまだ得られていません。今日の会談を契機に、今後地域のNGOを含め、さまざまな人の意見を取り入れて会場建設計画が見直されることが求められています。