2011年9・10月号(No.523) 特集:自然を壊さずにエネルギーをつくる
会報「自然保護」No.523 特集:自然を壊さずにエネルギーをつくる(PDF/3.0MB)
自然を壊さずにエネルギーをつくる
福島第一原子力発電所事故を受け、私たちの社会は、
エネルギーの利用と供給のあり方を見直し、
新たなエネルギーシステムをつくり出すことが求められています。
今回の特集は、座談会と先進地の取り組みから、
自然を壊さずに持続可能なエネルギーづくりを進めるにはどんな課題があり、
どんな突破口があるのかを探ります。
座談会
生物多様性を損なわずに、地域が再生可能エネルギーを選択するには?
飯田哲也(ISEP)×横山隆一(NACS-J)×大熊孝(新潟大学名誉教授)
自然エネルギー、持続可能なエネルギー、再生可能エネルギー、どれもが、自然に優しいエネルギー供給をイメージさせる言葉です。
これらの言葉はほぼ同義に使われ、実際の発電方法として、風力発電、小中規模な水力発電、地熱発電、バイオマス発電などがCO2排出の削減効果が高く、枯渇する資源を使わないという利点があると言われています。
しかし、実際にこうした再生可能エネルギーの発電場所をどんどん増やすことが、結果的に生物多様性の破壊につながれば、持続可能な社会をつくることはできません。
今回の特集では、エネルギー問題に詳しいゲストを招き、NACS‐J の生物や環境教育、河川環境が専門の理事との座談会を企画しました。地域で自然を守りながら再生可能エネルギーを選択するには、何を考え、どう進めていくべきか、お伺いしました。
日本が再生可能エネルギーに向かうためのステップ
司会:日本の自然環境を守っていくことと、エネルギーの自給を考えることは、これまで少し遠い関係のように感じられてきました。しかし今、エネルギー問題は非常に身近で切迫した問題となりました。
今日は、原子力発電をやめて、再生可能エネルギーに置き変えていくために、考えなくてはいけないことをお伺いします。まずは、前提として何を押さえておくべきか、お一人ずつお聞かせください。
大熊:日本のエネルギー利用全体を振り返ってみると、30%の節電をすれば1980年代後半から90年代前半ごろの消費に抑えられるはずですし、50年後には人口が3分の2になり、エネルギーの需要量も減ってきます。
そういう中でエネルギー政策が考えられるべきでしょう。少し不便を我慢すれば、大規模な自然破壊をせずに、原子力発電はやめて、再生可能エネルギーに転換していくことができるのではないでしょうか?
飯田:これまで日本の電力政策は、電気を生産する供給側の論理や利益が優先され続けてきました。今、これを見直し、電気を使う消費側が必要な電力量を管理・制御するデマンドサイドマネージメントを徹底的に活用すれば、消費側の我慢の手前で、今の利便性や企業活動をまったく損なわずに、短期的にも2~3割は確実に省エネすることが可能です。
CO2も大気汚染も減らせるので、省エネは最も急ぐべきです。政治改革が本物になり、原発を死守しようとかたくなになっている経産省を改革できれば、省エネや再生可能エネルギーへの転換にもっと有効な政策がつくれるはずです。
ただしその前に再生可能エネルギーと比べると、化石火力と原子力発電は生物多様性を根こそぎなくし、文明の存続すらも危うくするリスクが圧倒的に大きい発電方法です。その害悪の大きさを、まず共通認識として踏まえることが大切です。
それから熱利用の見直しも大変重要です。電気を起こすとき60%もの熱を捨てています。熱で利用したいものは熱のままで供給すべきで、特に暖房や給湯などの低温の熱は、太陽熱やバイオマス燃料から利用すべきだし、それ以前に断熱で相当削減できます。
それを今、オール電化などで電気をまた熱に変換することを促進するのは、実はエコロジーの犯罪行為ともいえます。日本はもっと熱利用を政策の柱にするべきです。
横山:これまでは発電所建設もほかの開発問題と同じく、土地利用の善し悪しが問題となり、その場所ごとに保護活動が起きてきました。
ここ数年は特に規模の大きい風力発電所の建設で、取り付け道路の工事なども含め大規模な土地の改変やバードストライクなどが問題となり、業者任せの自主的な環境アセスでは済まされない、法律に基づいた透明性の高い環境影響評価が必要になってきています。
今、再生可能エネルギーの発電量を原子力発電に差し替えられるほどの量にしていく、発電する場所も増やしていくためには、これからは自然環境の状態をまず考えて、つくっても大丈夫なところを地域ごとに選ぶという方向に転換していく必要があると思います。
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