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発電所の設置や変更の工事事業に対する環境影響評価を定める経済産業省令の改正に対し意見を提出。

2012.09.05
要望・声明

2012年9月5日

経済産業省 原子力安全・保安院 電力安全課 御中

公益財団法人 日本自然保護協会
保護プロジェクト部 辻村千尋

「発電所アセス省令の改正」に対する意見

該当箇所:2(1)計画段階配慮事項の検討を行うべき段階

意見

文章を以下のように修正するべきである。
「計画段階配慮事項の検討は、発電所の配置、事業の位置、規模を検討する段階に行う」

理由

自然環境への影響は、発電所の構造よりも、発電所の配置、事業の位置、規模によって大きく異なるため、計画段階の配慮事項としては必須である。一方発電所の構造は、その位置、配置、規模によって検討可能であるため、優先度が低い。

 

該当箇所:2(2)計画段階配慮事項の選定指針

意見

「発電設備等の構造若しくは配置又は事業の位置若しくは規模に関する適切な複数案(以下「構造等に関する複数案」という)を設定することを基本とし、構造等に関する複数案を設定しない場合は理由を明記する」を、次のように修正するべきである。
「発電設備等の事業の位置、配置、規模に関する適切な複数案(以下「事業の位置等に関する複数案」という)を設定する。その際、事業を実施しない案を含めて設定することを基本とする。また、複数案の比較を行わない場合および事業を実施しない案を含めない場合は、合理的な理由を明記する。」

理由

改正された環境影響評価法の「計画段階配慮事項等選定指針」において、「複数案の検討には事業を実施しない案を含めての検討が望ましい」と明記されている。今回の経済産業省の省令の改正案では、事業を実施しない案に関する記載が明記されておらず省庁間で不整合となっている。環境省の指針の考え方に則り、複数案には事業を実施しない案を含めるよう規定するべきである。

 

該当箇所:2(3)計画段階配慮事項について関係行政機関等の意見を求める場合の指針

意見

一般及び関係地方公共団体の長による環境の保全の立場から出された意見に対し、事業者からの回答を義務付けるべきである。

理由

意見に対してどのように対応したのかを明確にするために、意見を求める指針の中で、その意見に対する事業者の回答・見解を示すことを明記するべきである。

 

該当箇所:[専門家等の助言に関する全ての項目]

意見

専門家等の助言を受ける場合は、手続きの全ての段階において、その専門家の氏名・所属・専門分野を公表すること。

理由

専門家等の助言とは、公的であり、かつ専門家としての科学的な根拠をもった助言である。従って私人ではなく公人的な存在であるためプライバシーの侵害にはあたらない。また、事業者が選定した専門家等が、助言を与えるに相応しい専門家等であるかについては、第三者の評価が重要である。このため、事業者は専門家等の氏名と所属を公表することで、助言を与えるに相応しいことを証明しなければならない。

 

該当箇所:2(4)第二種事業の判定基準(法第4条第3項関係)<一部改正>

意見

判定に当たり考慮すべき「重要な自然環境」の範囲に、➄として、「地下水の環境」を加えること。

理由

発電所建設にともなう汚水の発生等の影響が地下水に及ぶことは避けなければならない。また、環境によっては湿地のように地下水が表層に近い所に帯水層がある場合もあり、こうした場所では道路による地下水脈の寸断が、乾燥化に繋がるなど大きな影響を及ぼすことが考えられる。したがって、考慮すべき重要な自然環境に、地下水の環境を加えるべきである。

 

該当箇所:2(6)環境保全措置指針(法第 12 条第1項関係)<一部改正>

意見

「事後調査の項目及び手法の選定、事後調査の終了の判断、並びに事後調査の結果を踏まえた環境保全措置の実施及び終了の判断に当たっては、必要に応じ専門家の助言を受ける等により、客観的かつ科学的に行うこととする。」を、次のように修文するべきである。
「事後調査の項目及び手法の選定、事後調査の終了の判断、並びに事後調査の結果を踏まえた環境保全措置の実施及び終了の判断は、第三者で氏名を公表された専門家による、客観的かつ科学的な評価を得て行うこととする。

理由

科学的な判断には客観性と公平性が重要である。従って、第三者で氏名・所属・専門分野を公表された専門家による判断が必要である。

 

該当箇所:2(7)報告書作成指針(法第 38 条の2第1項関係)<新規追加>

意見

「発電所事業に係る工事が完了した段階で報告書を作成する。その際、当該工事に当たって講じた環境保全措置の効果を確認し、報告書に含めるよう努める。必要に応じて、工事中又は施設の供用後において、事後調査や環境保全措置の結果等を公表する。」を、以下のように修文すること。
「発電所事業に係る工事が完了した段階で報告書を作成する。その際、当該工事に当たって講じた環境保全措置の効果を確認し、報告書に含める。工事中又は施設の供用後において、事後調査や環境保全措置の結果等は速やかに公表する。

理由

特に風力発電事業でのアセスメントはこれから事例が積み重ねられていくことから、情報の蓄積が重要である。環境保全措置の効果は、影響評価を行ったことの内容の検証となり、影響によっては事業の撤去等や運用の改善に繋げなければならない。事後報告書の公表は、アセスメント技術向上のためにも、努力目標ではなく必要不可欠である。

以上

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