アカガエルの卵探しに出かけよう!
「クルルルル、キュルルルル」。冬の厳しい寒さが少し緩む早春の日、里やまを訪れるとこんな不思議な声がします。それは卵を産みに水辺に集まるアカガエルたちの鳴き声です。翌日再び訪れると、宝石のように透明なゼリーに包まれた黒いつぶつぶの塊を見つけられるでしょう。これがアカガエルの卵です。アカガエルは春先の一番早い時期に卵を産むカエルです。本州にはニホンアカガエルとヤマアカガエルの2種類が生息しており、成熟した雌が毎年ひとつの卵塊(たくさんの卵の集合体)を産みます。早春に卵を産むのは、水生昆虫やヘビなどの天敵を避けてなるべく早くオタマジャクシを大きくする戦略だと言われています。
カエルと言えば水辺の生きものだと思われがちですが、夏の間アカガエルは草地や森の中で生活しています。秋から冬の間に水辺に移動して冬眠し、春先になると水が浅くたまった水田や山すそのくぼ地・ため池などで産卵し、産卵が終わるとまた冬眠してしまいます。アカガエルは少しぜいたくで、夏でも乾燥しない広い森、春先に水がたまる湿地や水田、道路やU字溝で森と水辺が分断されていない、といった環境がセットで必要です。この環境はほかの多くの里やまの生物にとっても大切なため、アカガエルの卵塊が毎年たくさん見られるということは、森と水辺の状態が良好である指標と言えます。
NACS-Jではアカガエルの卵塊を市民調査員と全国約70カ所で調べる「モニタリングサイト1000里地調査(モニ1000)」を環境省と共同で実施しています。これまでの調査結果から、ノウサギが全国的に減少していることが明らかとなり9月に新聞などにも掲載されましたが、ホタルやヤマアカガエルが全国的に減少していることも分かりました。原因は、圃場整備による水田の乾田化や宅地・農道・U字溝による森と水辺の分断に加え、水田が長年耕作放棄されたことで水辺自体がなくなっていることなどです。一方で、市民が湿地や水田を再生したことでアカガエルの数が回復したという場所もあり、身近な里やまを守る市民活動の重要性も明らかとなりました。
皆さんも里やまに出かけてアカガエルの卵塊を見つけることで、「カエルの目」になって近所の自然環境に今どんな変化が起こっているか見つめ直してみませんか?
調査は「2週間に一度、新しい卵塊を全部数える」という簡単な方法なため、農家さんや子どもたちと一緒に取り組むところも全国に多くあります。調査にチャレンジしたい! 近所の調査地に行ってみたい! という方はモニ1000のウェブサイトもごらんください。