「海岸の植物群落が危ない」 沿岸管理計画に意見提出
会報『自然保護』No.465(2002年4月号)より転載 海岸の植物群落の5割が
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NACS-Jでは、植物群落レッドデータ・ブック(群落RDB)を活用した保護施策に関する調査研究に取り組んできたが、平成13年度から、海岸植物群落保護のプロジェクトをすすめている(これには河川環境整備財団・河川整備基金助成を受けています)。
まず群落RDBに記載された7492件の植物群落を解析した結果、24の植物群系が「特に危機に瀕している」「危機に瀕している」と判断された。その中で、海浜草本群落、マングローブ林、海岸低木林、河川礫原草本群落など河川や湿地、海岸等水辺の植物群落が危機に直面していることが明らかになった。
これに基づき、海岸の植物群落のデータ解析を行った結果、群落RDBの記載された海岸植物群落のうち、保護管理状態の悪いものが42%、保護対策が必要なものは48%であった。そして海岸植物群落へ負荷を与えている原因として、護岸工事や埋め立てなどの水際開発、人の踏みつけ、ゴミ・廃棄物の投棄、盗掘などが大きいことが明らかになった(中間結果)。
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沿岸管理の全国的な計画づくり
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昨年12月、国土交通省は、望ましい沿岸管理のあり方を検討する「沿岸域総合管理研究会」を発足させ、同研究会は、今後の議論の参考にするため、今年2月に海や海辺に関する意見の募集を行った。意見の募集に際して、海・海辺のデータ集をホームページに掲載したが、海岸植物群落についてはまったく触れられていなかった。ほかの自然環境についてもほとんどデータが示されていなかった。
そこでNACS-J研究部では、海・海辺の自然環境についての科学的な調査に基づくデータが不足していること、特に海岸の植物群落や藻場、地形改変等の現況把握調査とモニタリング調査が必要であること。モニタリング調査にはNGOや市民の参加を得た調査体制をつくる必要があるとの意見を提出した。今後、海岸植物群落の補足調査を行い、その詳細な状況を把握すると共にその保全策を検討したいと考えている。
地方自治体による沿岸管理計画の策定作業が始まっている地域もある。皆さんもお近くの沿岸管理計画づくりに注目していただきたい。 (開発法子・保護研究部専門部長)
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沿岸域総合管理計画づくりが全国で始まっている
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新しい全国総合開発計画である「21世紀の国土のグランドデザイン」(平成10年3月閣議決定)は、「沿岸域の安全の確保、多面的な利用、良好な環境の形成及び魅力ある自立的な地域の形成を図るため、沿岸域圏を自然の系として適切にとらえ、地方公共団体が主体となり、沿岸域圏の総合的な管理計画を策定」することとした。そのため「国は、計画策定指針を明らかに」することになった。
これを受けて、政府は平成12年2月、「21世紀の国土のグランドデザイン」推進連絡会議において、「沿岸域圏総合管理計画策定のための指針」を決定した。この指針で、多様な関係者(行政・民間企業・漁業者・住民・NPO等)の参加と連携による十分な調整を図り、公平性・効率性が確保された計画とすること、影響が明らかな場合には河川流域も視野に入れた広域な視点から策定すること、概ね50年先の将来を見据えたものが望ましい、などの沿岸管理の計画策定にあたっての視点や基本理念などを打ち出した。
(参考資料:国土交通省、旧国土省ホームページ)
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