植物群落レッドデータブック活用のため 委員会での議論はじまる
NACS-Jでは1996年4月に刊行した植物群落レッドデータブックを自然保護活動の場で有効に活用するための取り組みを続けている。
昨年度までに群落RDBに掲載された約7,500件のデータを日本地図上に表現するための環境整備をすすめてきた。また、今年6月には「環境影響評価技術指針に盛り込むべき重要な植物群落~保護上の危機の視点から選んだ第1次リスト~」を公表している。
さらに今後の活用方針・展開を検討するため、NACS-Jでは「RDB植物群落活用委員会」を立ち上げるべく、1998年6月20日にその準備会を開催した。
準備会では、ネットワーク化による研究者間の情報の共有の仕方、今後の調査のあり方、RDBデータの公表のあり方、普及版の作成の計画等について議論が行われた。
今後NACS-Jでは委員会での議論を基に、群落RDB普及版の作成、情報共有化のためのサテライトの設置、ケーススタディとしてのデータの補足調査等について取り組んでゆく予定である。
なお、この植物群落レッドデータブック・データベースの活用事業には、NTTデータ通信株式会社の「NTTデータ10周年記念いちまる募金」の寄付金が活用される予定である。
レッドデータブック(RDB)
「絶滅のおそれのある生物種や破壊のおそれのある環境のリスト」をいいます。世界で最初のRDBは1966年にIUCN(国際自然保護連合)により作られました。その後世界の各地方、各国ごとに作成されています RDBは、多くの動植物に絶滅の危険が迫っている現状を明らかにし、それを広く知らせ、人々の関心を高め、行政や企業や市民が絶滅の危機に瀕している動植物を保護するための行動をとっていく目的のもとに作られたもので、保護活動の科学的な根拠となっています。
*日本で最初のRDBは、1989年にNACS-JとWWF-Jから発行された、「植物種」編です(書名:「我が国における保護上重要な植物種の現状」)。
植物群落レッドデータ・ブック
自然の構成要素である植物群落そのものの多様性を、また動植物の生息・生育地として、生態系の多様性を守るために植物群落という単位での保護・保全が必要です。そこで、緊急に保護・保全が必要な「植物群落」についてリストアップし、その保護を訴えたのが植物群落RDBです。日本全国で7492件の「植物群落」がリストアップされました(『自然保護』?405参照)。
「植物群落」とは?
植物種の集まりのひとかたまりを植物群落と呼びます。これが多数、複雑に絡まりあい、そこにすむ動物や水や土壌など生物以外のつながりを含めて、生態系を構成します。森や草原、尾瀬のような湿原、河原の草むら、道ばたの雑草たち、これらはみんないろいろな植物が集まって暮らしている「植物群落」です。「植物群落」は、自然をかたち作っている重要な要素なのです。
「植物群落」を守ることの意味
- 植物群落はそれ自身が自然の重要な構成要素ですから、「植物群落」を守るということは、自然そのものを守るということになります。
- また、「植物群落」は野生動物たちの生息地でもあるので、野生動物たちを守ることでもあります。
- そして、「植物群落」を守るということは、そこにすむ野生動物、さまざまな動植物との”つながり”の中で維持されている水や土や空気といった環境、その中で生きている人間の暮らしを守ることでもあるのです。