自然しらべ2016 海辺で花しらべ!「砂浜で暮らすのは?」
実は豊かな砂浜の生態系
砂浜で遊んだことがありますか?
夏には暑くて足をやけどしそうになり、 砂浜には生きものがあまりいないように感じる人も多いでしょう。冬は冷たく、一日の内でも温度差が大きい環境ですから、生きものにとってはとても大変なところです。
また、砂浜には波が寄せてきて、砂を常に引っかき回しています。砂浜は、潮の満ち引きで海水にいつも浸かっている部分と、そうでない部分があります。
実は、その両方に多くの生きものがすんでいます。
では、どんな生きものがすんでいるのでしょうか? 砂浜を手で掘ると海水が出てきます。この海水を濾してみると、その中には顕微鏡で見ないと見えないほど小さな生きものがびっくりするほどたくさんいるのですが、ここでは目で見えるものだけを考えましょう。
砂浜の斜面の上の方には、陸の生きものが主にすんでいます。とくに塩分に耐性のある特徴的な海浜植物と言われる植物が、このあたりに生えています。ハマゴウ、コウボウムギ、ハマエンドウなどです。また、そのあたりには、浜辺に特徴的な昆虫類もすんでいます。
一方、砂浜の斜面の下の方で、波が寄せたり引いたりしているところをよく見ると、三角形をした二枚貝(ナミノコガイやフジノハナガイ)が、波に乗ってコロコロと転がり、波が引くと砂浜に潜り込むのが見えるでしょう。大潮の時に海水が引いてしまった砂浜では、砂の上を這っているホタルガイやツメタガイの仲間、ときには大型の巻貝も見つけることができます。
砂浜の中央付近で見つけることができるのはスナガニの仲間です。昼間は砂浜に巣穴が空いているのが見えるばかりですが、早朝や夕方、夜になると出てきて砂浜を走り回っているのが観察できるでしょう。砂も掘ってみると、カニの仲間やスナホリムシ類などがすんでいることがあります。
海と陸をつなぐ砂浜
砂が見える場所だけではなく、海水が引いたところから海浜植物が生えているところも含めて、ひとつながりの砂浜の環境です。でも、最近の砂浜はコンクリート護岸ができてしまって、海浜植物が生える場所がなくなっていることが多いのです。
海岸は陸と海の境目にあり、陸の生態系と海の生態系の両方の性質を持っています。このようなふたつの生態系の境目のことをエコトーン(移行帯)と呼びます。
エコトーンではふたつの生態系の特徴が複雑な生息場所をつくり、陸と海それぞれの生きものがすんでいるので、多様性が高いことが知られています。この特徴は、陸と海のつながりでできているのです。そこをコンクリートで固めると、陸と海のつながりはなくなってしまいます。自然の海岸の環境を守ることが、人間の環境を守ることにもつながります。
(向井 宏/海の生き物を守る会代表)
※会報『自然保護』2015年7・8月号「今日かはじめる自然観察」より転載