【配布資料】今日からはじめる自然観察「砂浜の生きものを探そう!」
<会報『自然保護』No.546(2015年7・8月号)より転載>
このページは、筆者の方に教育用のコピー配布をご了解いただいております(商用利用不可)。
ダウンロードして、自然観察などでご活用ください。
(写真:大橋信彦)
砂浜に出かけて、どんな生きものが暮らしているか、砂浜から陸につながる環境はどうなっているか、
いつもより地面に目を凝らしてみて、ぜひ観察してみてください。
向井 宏(海の生き物を守る会代表)
実は豊かな砂浜の生態系
砂浜で遊んだことがありますか? 夏には暑くて足をやけどしそうになり、 砂浜には生きものがあまりいないように感じる人も多いでしょう。冬は冷たく、一日の内でも温度差が大きい環境ですから、生きものにとってはとても大変なところです。また、砂浜には波が寄せてきて、砂を常に引っかき回しています。砂浜は、潮の満ち引きで海水にいつも浸かっている部分と、そうでない部分があります。実は、その両方に多くの生きものがすんでいます。
では、どんな生きものがすんでいるのでしょうか? 砂浜を手で掘ると海水が出てきます。この海水を濾してみると、その中には顕微鏡で見ないと見えないほど小さな生きものがびっくりするほどたくさんいるのですが、ここでは目で見えるものだけを考えましょう。
砂浜の斜面の上の方には、陸の生きものが主にすんでいます。とくに塩分に耐性のある特徴的な海浜植物と言われる植物が、このあたりに生えています。ハマゴウ、コウボウムギ、ハマエンドウなどです。また、そのあたりには、浜辺に特徴的な昆虫類もすんでいます。
一方、砂浜の斜面の下の方で、波が寄せたり引いたりしているところをよく見ると、三角形をした二枚貝(ナミノコガイやフジノハナガイ)が、波に乗ってコロコロと転がり、波が引くと砂浜に潜り込むのが見えるでしょう。大潮の時に海水が引いてしまった砂浜では、砂の上を這っているホタルガイやツメタガイの仲間、ときには大型の巻貝も見つけることができます。
砂浜の中央付近で見つけることができるのはスナガニの仲間です。昼間は砂浜に巣穴が空いているのが見えるばかりですが、早朝や夕方、夜になると出てきて砂浜を走り回っているのが観察できるでしょう。砂も掘ってみると、カニの仲間やスナホリムシ類などがすんでいることがあります。
海と陸をつなぐ砂浜
砂が見える場所だけではなく、海水が引いたところから海浜植物が生えているところも含めて、ひとつながりの砂浜の環境です。でも、最近の砂浜はコンクリート護岸ができてしまって、海浜植物が生える場所がなくなっていることが多いのです。海岸は陸と海の境目にあり、陸の生態系と海の生態系の両方の性質を持っています。
このようなふたつの生態系の境目のことをエコトーン(移行帯)と呼びます。エコトーンではふたつの生態系の特徴が複雑な生息場所をつくり、陸と海それぞれの生きものがすんでいるので、多様性が高いことが知られています。この特徴は、陸と海のつながりでできているのです。そこをコンクリートで固めると、陸と海のつながりはなくなってしまいます。自然の海岸の環境を守ることが、人間の環境を守ることにもつながります。
自然しらべ2015・砂浜ビンゴ 参加者募集!!
「自然しらべ」は、みんなで見ればみえてくる、という合い言葉で、全国の皆さんと実施する日本の自然の健康診断です。今年のテーマは“砂浜”。日本は、小さな島国ですが、海岸線の長さは堂々の世界第6位。世界有数の“海岸線大国”です。海岸線の自然は重要な財産……のはずですが、ずいぶんと改変されてきています。そうした海の自然の実態を知りたくても、海の調査は陸に比べて遅れがち。そのために海の自然保護は陸に比べて大きく遅れています。
例えば、NACS-Jが2004年から2007年の4年間にわたってみんなで調べた「市民参加の海岸植物群落調査」でも、人工物がない浜は12%しかなく、海岸独自の環境が失われている現状が報告されています。それから約10年、今の砂浜はどうなっているのでしょうか。
今は世界遺産になっている白神山地や知床にもかつては森の伐採計画がありました。NACS-Jは、森という自然の大切さを全国の会員の皆さんと観察や調査をしながら見つけてきました。森の自然保護のように、海の自然保護も進めたい。NACS-Jはそう考えて、今年の自然しらべのテーマを砂浜に選びました。全国の皆さんと一緒に調べれば、日本の砂浜の現状が見えてくるはず。あなたの参加をお待ちしています!
(志村智子/日本自然保護協会 保護室)
★全国でビンゴを楽しみながら砂浜を調べます。ぜひ参加して、結果をNACS-Jまで送ってください。
詳しくは「自然しらべ2015 砂浜ビンゴ」のウェブサイトを見てね!
また、砂浜教室を開催します。神奈川県、千葉県、新潟県で予定。(詳しくは>>こちら)
自然しらべ2014「赤とんぼさがし!」結果がまとまりました。
昨年7月から4カ月間、記録を募集していた「赤とんぼさがし!」では、全国各地の583地点、2656名(延べ参加者数)の方から、2169件の写真記録をいただきました。日本トンボ学会の専門家の方たちのご協力により、記録されたトンボの同定を行いました。その結果、今回の自然しらべの調査対象の「田んぼ」で記録された赤とんぼの上位はアキアカネ(179件)、ナツアカネ(92件)、ノシメトンボ(74件)という順になりました。
参加者の方からは、「大まかに『赤とんぼ』と認識していたトンボたちをあらためて見分けるきっかけになりました」「赤とんぼはどこにでもたくさんいるもの、という思い込みがありましたが、調べてみると随分少なく、一生懸命に探さないと見つからないことに驚きました」というコメントが寄せられています。また、自然観察会や授業で取り入れてくださった方や、お子さんやお孫さんと一緒に調べてくださった方も多くいらっしゃいました。
長らくお待たせしてしまった参加者の方には、結果レポート(B5版4ページ)と参加者プレゼント(抽選)をお送りします。ウェブサイトにも、結果レポート・目録、写真コンテスト入賞作品を7月上旬掲載しますので、ぜひご覧ください。
(大野正人/日本自然保護協会 普及室)