【配布資料】今日からはじめる自然観察「ひっつき虫を探そう」
<会報『自然保護』No.541(2014年9・10月号)より転載>
このページは、筆者の方に教育用のコピー配布をご了解いただいております(商用利用不可)。ダウンロードして、自然観察などでご活用ください。
秋から冬にかけては、まさにひっつき虫シーズン。
ひっつき虫とは、昆虫ではなく、動物や人間にひっついてくる植物のタネ!
どんな方法でくっついているのか、ルーペで観察してみてください。
岩槻秀明(自然科学系ライター)
種子植物(以下、植物と記します。)にとって最大の仕事、それは、花を咲かせて自らのタネを残すことです。タネは次世代へと命をつなぎ、分布を広げる役割を担っています。ただ、分布拡大のためには、タネを広くまき散らす必要がありますが、植物は動けません。
そこで、さまざまな仕掛けをつくって、自然の力や動物を利用し、タネを散布させようとしています。これを「種子散布」と言います。種子散布の方法は、種類によって異なります。例えば、秋の野山を彩る木の実たちは、目立つ色彩で鳥を惹きつけています。鳥は木の実を食べますが、タネまでは消化されないので、ふんとともにあちこちへとまき散らされるのです。
実は私たち人間も、知らず知らずのうちに種子散布に貢献しています。その最たるものが「ひっつき虫」です。皆さんは野山歩きで、服に大量のタネがくっついて、苦労した経験はないでしょうか。これらのタネを種類問わずに総称したものがひっつき虫です。
ひっつく工夫あれこれ
秋から冬にかけては、多くの種類のひっつき虫を観察できます。その中でも特によく見かけるのが「おなもみ」です。現在、野外で見かける「おなもみ」は、大多数が外来種のオオオナモミです。オオオナモミのとげは、先端がかぎ爪状になっていて、服の繊維に引っかかる形でくっつきます。ちなみに在来種のオナモミは、今や絶滅危惧Ⅱ類に指定されるほど数を減らしています。
あぜ道を歩くと、よく細長いタネが服にたくさんつきます。これはセンダングサの仲間のタネです。鋭いとげで直接繊維のすき間に刺さり、しかもご丁寧に滑り止めまでついているため、取るのには非常に苦労させられます。ほかにも、ネバネバの粘液で付くような種類も存在します。
ひっつき虫はくっつくしくみが面白いため、遊び道具としても最適です。フエルトに貼り付けて絵を描いたり、布を持って原っぱを歩き、布にくっついた種類数を競ったり、自分なりの楽しい遊び方を考えてみましょう。ただ、とげの鋭いものもあるので、扱いに気をつけましょう。それから、オオオナモミやアメリカセンダングサなど、一部の外来種は繁殖力が非常に強く、生態系への影響が心配されています。服についたひっつき虫を拡散させないなどの配慮も必要です。
クイズの答え:
【ひっつき虫】B ダイコンソウ、C ヌスビトハギ、E コセンダングサ
【ひっつき虫ではないもの】A オニスゲ、D ヒメクグ
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