おもしろカメ話vol.3 「カメの暮らす環境あれこれ」
おもしろカメ話vol.3「カメの暮らす環境あれこれ」
カメの暮らす環境
一般的にフィールドで観察できるカメは、ニホンイシガメ、クサガメ、ミシシッピアカミミガメ、ニホンスッポンの4種類です。これらのカメは、湖沼・池・河川などの水辺で見られますが、5~8月ごろに、産卵に適した土手や畑などで卵を産みます。「水辺エコトーン※」と呼ばれる、水辺と陸域が一体となったこの水辺環境を守ることがカメの保全につながります。
▲水辺エコトーン※:陸から水辺への連続性をもって推移していく水際のこと。途切れなく変化することで多様な環境が生まれ、さまざまな動植物が暮らしやすい場所となります。
カメはお掃除屋さん?
自然の中で、カメは動物も植物も食べています。基本的に素早い動きができない生きものなので、動物や魚の死体や熟して落下した果実なども食べるなど、拾い食いをする雑食タイプです。自然生態系の「分解」にかかわるお掃除屋さん(スカベンジャー・腐肉食動物)の役割を担っているのです。
日本固有種ニホンイシガメ
ニホンイシガメは、山間部の池沼や河川の中流から上流、田んぼの水路などの水辺に生息していますが、近年の調査では各地で減少し、確認できても若い個体が少なかったり、オスとメスの比が偏っていたりしています。
たった8年でほとんど外来のカメに!(in 揖斐川支流山除川)
岐阜県と三重県の県境付近にある揖斐川(いびがわ)支流の山除川(やまよけがわ)で2002年と2010年に、カメの生息調査を行いました。
2002年は約8割がニホンイシガメだったにもかかわらず、2010年にはミシシッピアカミミガメが約9割となり、優占種が入れ替わってしまいました。
それまで比較的良好な環境が保たれていたと思われた場所でも、8年のうちにカメの世界では大きな変化が起こっていました。(矢部隆)
♦カメの受難・直面している危機♦
日本の生物多様性の危機が訪れているように、野生のカメの生息状況も悪化しています。
- 生息場所の分断
- 開発や道路建設などで越冬地などとの間の水辺エコトーンが断ち切られる。車にひかれるロードキルも発生。
- 水際がコンクリート護岸化されることで、生息や繁殖を妨げられる。
- 農耕・漁獲活動
- 耕作放棄による影響
- トラクターや耕耘機に挟まれるなどして負傷したり、死ぬことがある。
- 耕作放棄地が乾燥化することで、生息地を追われる。
- 水質の悪化
- 家庭や工場、農業排水による水質の悪化。
- 外来種による問題
- ほかの種類のカメとの交雑による遺伝子汚染や産卵場所などをめぐる種間競合。
- 人間が持ち込んだアライグマや野犬、ウシガエルなどによる捕食問題。
- 乱獲
- ペット用として商業目的で行われる乱獲。国外へ持ち出されている場合も。