【配布資料】今日からはじめる自然観察「カマキリの卵鞘を探してみよう」
<会報『自然保護』No.530(2012年11・12月号)より転載>
このページは、筆者に、教育用のコピー配布をご了解いただいております(商用利用不可)。
ダウンロードして、自然観察会などでご活用ください。
多くのカマキリは、秋、たくさんの卵を包んだ卵鞘をつくります。
冬は木の葉が落ち、枝などに産みつけられた卵鞘を見つけやすい季節です!
槐 真史(えんじゅ まさし)/厚木市郷土資料館学芸員
卵で越冬し、春に孵化
昆虫の越冬は、種類によって卵であったり、成虫であったりさまざまです。カマキリの仲間は、ごく一部の例外を除き北海道~九州では卵で越冬します。卵と言っても、厚いスポンジ状のものに包まれ、外から観察することはできません。この塊を卵鞘と呼び、暑さや寒さ、乾燥や湿気、衝撃などから卵を守っているのです。関東地方では10~11月ごろに産卵し、翌年の4~5月ごろに幼虫が孵化します。メスの栄養状態、気象条件などに産卵は影響され、産む回数は決まっていないようです。
卵を産む主な場所は、オオカマキリでは木の枝や枯れたイネなどの植物の茎、ハラビロカマキリでは建物の壁面や木の幹や枝などです。卵鞘は大人の親指くらいの大きさで目立ちますが、色が茶褐色なので冬枯れに紛れて見つけにくいかもしれません。産んでいそうな場所をじっくり探すと、慣れてくればたくさんの卵鞘に出合えるでしょう。また、卵鞘の形によって種類分けができるので、名前調べも容易です。
▲産卵中のオオカマキリ(10月)
腹端から出した粘液を泡立てながら、中に卵を産みつけていく。白い卵鞘は時間が経つにつれ、褐色になる。(写真:伊藤信男)
林にすむ? 草地にすむ?
カマキリの仲間は、樹上性と草地性に大別されます。樹上性のハラビロカマキリは広く見られ、街中の公園にも生息します。草地性のオオカマキリやチョウセンカマキリ、コカマキリは、森林とセットの水田や草地、大河川の河原が主な生息地ですので、街中でスポット的に生息している場所は貴重な環境と言えます。
名前の挙がったカマキリの仲間は、本州~九州での自然観察で出合う機会の多い種類です。このほかにヒナカマキリやヒメカマキリといった小型種、前脚のカマ状の内側に円型の黒色紋(もしくは瞳状のリンク紋)がある大型種のウスバカマキリがいます。
▲小型種のヒメカマキリ、右:中型種のコカマキリ(写真:槐真史)
成虫の体長が約15mmのヒナカマキリから、約100mmのオキナワオオカマキリまで、日本には約10種のカマキリが暮らしている。
クイズの答え:B