「今後のプラスチック資源循環施策のあり方について(案)」に対して意見を提出しました
2020年11月に「今後のプラスチック資源循環施策のあり方について(案)」が発表されました。日本自然保護協会では、これに対して海ごみ問題など海の保全に取り組む視点から意見を提出しました。
2020年12月25日
「今後のプラスチック資源循環施策のあり方について(案)」に対する意見
公益財団法人日本自然保護協会
理事長 亀山 章
「今後のプラスチック資源循環施策のあり方について(案)」に対して以下のとおり意見をのべます。
考え方について
1. プラスチックという素材に着目することは重要な視点であり賛同する。
理由:プラスチックは約半世紀の間に社会に広く浸透し、私たちは多くの恩恵を受けてきたが、時間が経つにつれプラスチックが持つ課題も明らかになってきた。人間が長年利用してきた有機物とは異なり、微細化しても容易に分解はしないプラスチックは、海洋中に流出すると回収が困難であるばかりか、プラスチック製品に使われている添加剤が環境ホルモンとして海洋生物や人体にも影響をもたらすことが徐々に明らかにされてきている。人類の歴史にとって新しいこの素材が持つ課題は、現状の廃棄物処理法や資源有効利用促進法では解決できていないことから、意欲的な施策の実行を期待する。
2. 2050年までに海洋プラスチックごみの新たな追加汚染をゼロにまで削減する目標は、期限を2030年に巻き上げて実現する施策が必要である。
理由:G20大阪サミットにおいて、2050年までに海洋プラスチックごみの新たな追加汚染をゼロにまで削減する目標が我が国の提案により共有された。これは成果ではあったが、現在、回収されないプラスチックは全世界で年1200万トンに及び、さらに増加する予測もある(※1)。日本のごみ回収率は高いとされるが、日本の国土の4倍以上の広さがあり、世界で最も広い範囲に海洋ごみが集中して漂う「太平洋ごみベルト」と言われる海域においては、文字が認識できるごみの1/3に日本語が記載されていた(※2)。海洋に流出したプラスチックを回収する方法が確立していない現状においては、海洋への追加汚染をゼロにする目標を2030年に巻き上げて実現する施策が必要と考える。
https://www.nacsj.or.jp/2020/09/21731/
※2 代替品や熱回収より「総量削減・リユース」を ―「今後のプラスチック資源循環施策の基本的方向性」への共同提言を提出
https://www.nacsj.or.jp/media/2020/10/22230/
主な施策について
3. リデュース(削減)については、より具体性に施策を展開して欲しい。また、リデュースの項目にバイオマスプラスチックを挙げるならば、化石燃料由来のプラスチックの削減としてと明記することが必要である。
理由:主な施策の最初にリデュースが挙げられていることは重要であり賛同する。ただし、過剰な使用を回避するための具体的な記載は見られず、リユースやリサイクルに比べて実効性が懸念される、より具体的な施策を展開して欲しい。
また、回避可能なプラスチックの使用を削減するための方策の一つにバイオマスプラスチックを挙げているが、バイオマスプラスチックは、プラスチック製品に使われている添加剤がもたらす環境ホルモンの課題においては解決策にならず、プラスチックという素材としてはまだ課題を有している。化石燃料という有限の資源の削減という意味であるならば、化石燃料由来のプラスチックの削減と明記することが必要と考える。
4. 回避可能なプラスチックと回避不可能なプラスチックの両リスト化を進めることが必要である。
理由:対策の促進には対象を明確にすることが必要である。EUでは、回避可能なプラスチックのうち市場にあげることができない品目を挙げて具体的に進めている。
5. バイオプラスチックへの代替促進にあたっては、回収・廃棄処分までの設計・計画が必要である。
理由:「バイオプラスチックへの代替促進にあたっては、生産体制から製品ごとの利用ポテンシャルまでサプライチェーン構築を計画的に行うことが重要」とあるが、バイオプラスチックについてもどのようにすれば循環が成り立つかは未知の部分が多いと考えられる。そのため、生産だけでなく、回収・廃棄処分までを計画し、検証できるようにすることが必要と考える。
環境省による意見の募集(パブリックコメント)について
今後のプラスチック資源循環施策のあり方について(案)に対する意見の募集(パブリックコメント)について(※外部サイトに移動します。)
今後のプラスチック資源循環施策のあり方について(案)(※外部サイトに移動します。)