尾瀬国立公園 公園区域及び公園計画変更書の誤りについて
環境省が意見募集のために公開した、尾瀬国立公園の公園区域及び公園計画変更書(原案)につきまして、「日本の自然保護運動発祥の地」の記述箇所に重大な誤りがあり、以下のとおり意見を申し述べます。
今回の公園計画変更書には「(尾瀬は)ゴミ持ち帰り運動、マイカー規制、排水対策等の自然環境保全活動に先進的に取り組んできたことから、『日本の自然保護運動発祥の地』とも呼ばれている。」とありますが、尾瀬の自然保護運動は市民が数々の開発行為に異を唱え、反対運動を展開してきたことから始まっています。当会の前身である尾瀬保存期成同盟は、1949年に尾瀬の電源開発計画に反対し、当会自身もこれまで尾瀬の自然保護の重要性を訴えてきた立場から、この事実を歪めるような記述は看過できません。
「日本の自然保護運動発祥の地」と尾瀬が呼ばれるようになった経緯に関して、正しい記述への修正を求めます。
尾瀬国立公園 公園区域及び公園計画変更書への意見(PDF / 539 KB)
ご参考:
尾瀬国立公園の公園区域及び公園計画の変更に関する意見の募集(パブリックコメント)について(環境省)
2020年11月17日
尾瀬国立公園 公園区域及び公園計画変更書への意見
公益財団法人 日本自然保護協会
日本自然保護協会は、1949年に前身の尾瀬保存期成同盟が発足して以来、70年以上にわたり尾瀬の自然保護活動に関わってきました。
尾瀬国立公園は2007年に日光国立公園から分離して、29番目の国立公園として指定されました。今回の区域及び公園計画変更は、尾瀬国立公園が誕生して初の計画変更です。
今回の公園計画変更の主要部分である、災害により廃業した渋沢温泉の利用施設からの削除と、利用が少なく荒廃気味の小沢平裏燧線道路や渋沢大滝までの歩道の削除などは、現在の利用実態に即した計画変更であり、まったく異存はありません。これらの利用計画の変更に加えて、尾瀬国立公園の概要や沿革についても加筆などが行われ、より分かりやすい記述に変更されています。
しかし、その記述の一部である尾瀬の自然保護の歴史に関しては重大な誤りがあり、当会として看過できないため以下の通り意見を申し述べます。
自然保護発祥の地としての尾瀬について
計画変更書の「2 指定理由の変更内容」の「④利用」(3ページ目)、および「3.地域の概要の変更内容」の「エ 人文その他の特殊景観」(5ページ目)に「ゴミ持ち帰り運動、マイカー規制、排水対策等の自然環境保全活動に先進的に取り組んできたことから、「日本の自然保護運動発祥の地」とも呼ばれている。」と記述があります。
確かに、近年の尾瀬では環境省がリードして先進的な保護活動が行われています。しかし、それらの取り組みは近年のことであり「自然保護発祥の地」と呼ばれる所以ではありません。
尾瀬の自然保護運動は市民が数々の開発行為に異を唱え、反対運動を展開してきたことから始まっています。1949年に電力会社の電源開発計画に反対し、尾瀬保存期成同盟(当会の前身)が学者・文化人・登山家を中心に結成され、請願運動を行い、尾瀬の自然保護の重要性を訴えてきました。
公園計画は指定された国立公園を適正に保護し、利用するための方針を明らかにするものです。このような重要な計画文書に尾瀬における自然保護の重要な歴史を歪めるような記述があってはなりません。当会は「日本の自然保護運動発祥の地」と尾瀬が呼ばれるようになった経緯に関しての正しい記述への書き換えを求めます。
以上