NACS-J会員・自然観察指導員が、 地域の生物多様性を支えるキーマンになろう!
2007年11/12月号より転載
あなたの地域の専門家 〝トコロジスト〟を目指す
私が最も苦手とする質問は「あなたのご専門は?」と聞かれることです。仕事柄、いろいろな生きものについて広く浅く扱ってきたので、「鳥の専門家」とか「鳴く虫の専門家」と名乗ることにどうも躊躇を感じてしまうのです。
そんな気持ちでいたところ、ふと気づいたのは、何も学問分野や分類群だけが専門家の尺度ではないのではないか、「ある場所の専門家」という存在があってもよいのではないかということでした。私でいえば、「平塚の専門家です」と宣言したらどうだろうと思いついたのです。考えてみると、地域の現状を把握したり、その将来計画を立てるというようなときに、さまざまな分野の専門家の力はもちろん不可欠ですが、その土地について隅々までよく知っている人も大きな役割が果たせるのではないでしょうか。
その場所の専門家を重要な存在と位置づけていくためには、まず呼び名をつけたいとも考えました。知人に呼びかけてみたところ、大磯町でアオバトの生態研究グループの中心となってこられた田端裕さんから「トコロジスト」という提案がありました。私もこの呼び名を気に入り、それ以来、機会をみては普及に努めているところです。辞書に載るのはだいぶ先かもしれませんが、「東京湾のトコロジスト」「新宿御苑のトコロジスト」など、各地でそう名乗る人が出てくれば、徐々に知名度もアップしてくるのではないかと期待しています。
〝トコロジスト〟の役目
トコロジストは、その土地の専門家ですから、地形地質や動植物はもちろん、歴史・名所旧跡・民俗伝承などにも関心を持ち、さらには土地の所有関係や法的な位置づけ、行政による将来計画などについても積極的に情報を集めるとよいでしょう。何よりも、自分の足で常に歩き回り、実際の状況を把握するのが大事なことです。一人で何でも調べるのが難しいときは、得意分野を受け持ちながら、トコロジスト集団をつくっていくという発想も必要でしょう。
埼玉県の自然観察指導員・小見寺公一さんは、会報特集の中で「地元のことは幅広く知っており、そうした視点から人に伝えたり、行政に意見を言う」と述べられています。これは、まさに私がイメージしているトコロジストそのものの姿ではないかと感じました。
NACS-Jの会員の方々、また自然観察指導員の皆さんは、それぞれの地域で活躍されている方が多いと思います。トコロジストを目指すことを通じて、地域の自然保護に貢献されることを願っています。
(平塚市博物館館長・浜口哲一)
★生物多様性を支える行動 チェックポイント
<自然観察指導員として>
□ 特定の生きもののことだけでなく、地域のことを幅広く知っている。
□ 地域の自然環境について行政に意見やアドバイスをしたことがある。
自然観察指導員になれる講習会のご案内はこちら↓↓↓
https://www.nacsj.or.jp/sanka/shidoin/index.html
※講習会日程一覧 https://www.nacsj.or.jp/katsudo/shidoin_schedule/
<一般市民として>
□ 地域の自然に関心を持っている。
□ 自然保護活動に参加したり、支援している。
<森を守る消費者として>
□ 国産材の家具の購入や、家を建てるときに積極的に国産材を利用したことがある。