工事中止は評価、自然環境保全の面から 検討されていないのは極めて問題 1999.03.17 要望・声明 工事取りやめ発表に対するコメント 1999年3月17日 北海道の「時のアセスメント」における 道々士幌然別湖線(士幌高原道路) 取り止めの発表に対するコメント (財)日本自然保護協会 保護部長 吉田正人 本日発表された北海道の「時のアセスメント」における道々士幌然別湖線(士幌高原道路)取り止めの発表に関して、当協会は以下の通りコメントを発表いたします。 1.士幌高原道路の未開削区間の工事が取り止めとなったことは喜ばしいことであり、再評価を担当した北海道建設部の検討評価調書よりも踏み込んだ結論を出した、知事の判断を評価したい。既開削区間(国立公園第3種特別地域)についても、舗装などは行わず自然に戻すことを提案したい。 2.しかし最も重要な論点である、自然環境保全の面から見た計画の妥当性が全く検討されていないのは極めて問題である。社会経済情勢の変化のみではなく、自然環境保全の立場から道路建設の妥当性が議論されなければ根本的な問題の解決と言えない。 3.北海道建設部は、「時のアセスメント」検討評価調書(3月11日発表)の中で、「本道路の必要性、妥当性はあると判断する。・・・しかし工事着工は現時点では難しい」と、総合評価を下した。これには将来的な開発の含みが残されており、長期化した公共事業をチェックするという「時のアセスメント」の趣旨を無視した結論である。当協会は昨年10月に出した要請書で、事業推進の立場にある建設部自身が「時のアセスメント」の検討主体となることの問題点を指摘したが、それが現実のものとなった。 4.士幌高原道路の問題は、国立公園内の道路建設のあり方を問う、全国的に重要な意味を持つ問題であった。1995年の自然環境保全審議会で士幌高原道路を含む大雪山国立公園の公園計画が認められた際に、「全線トンネルルート案」が地形、地質、動植物、ふれあいの場に与える影響の調査など、3点の留意事項が付された。環境庁はトンネル案にすることで景観は守ると考えたが、実際にはナキウサギの生息地など生態系への影響の問題が解決できなかった。環境庁はこれを機会に、士幌高原道路を公園計画から削除する手続きに着手す るとともに、景観保護中心の自然公園法を、生物多様性保護の視点から見直すべきである。 前のページに戻る