濃飛横断自動車道計画(リニア関連工区)への要望書を出しました
濃飛横断自動車道計画(リニア関連工区)への要望書(PDF/901KB)
中津川市長 青山 節児 殿
公益財団法人 日本自然保護協会
理事長 亀山 章
濃飛横断自動車道計画(リニア関連工区)への要望書
濃飛横断自動車道計画(リニア関連工区)事業のルート及びその近傍に点在する小湿地群は、シデコブシ、ハナノキ、シラタマホシクサ、ヘビノボラズなどの東海丘陵要素植物と呼ばれる、多数の希少な植物が生育する環境となっています。この湿地群は、環伊勢湾の独特の地史を背景としてきたこの地域にしか存在しない特異な環境です。その重要性については、これまでも研究者をはじめ多くの指摘があります。
今回公開されたルート案では、主要な小湿地群は回避されています。しかし、日本自然保護協会が独自に解析した下記に示す結果から、本事業の実施により重要な小湿地群に不可逆的な影響が出ることが予測されますので、環境影響の低減に関して以下の点を強く要望いたします。
1.中津川市千旦林地区周辺で地形改変を行ってはならない
図1は、国土地理院提供の数値標高モデル(10mメッシュ(標高))をもとにArcGISを用いて、TWI(Topographic wetness indices)指標による水の集まりやすさを評価した結果を示したものです。この図の緑丸で示したものがハナノキの分布で、青色が濃いほどTWI値が高く、地表面の水がより集まりやすいことを示しています。この図を見るとハナノキの分布する小湿地群は、水の集まりやすい平坦地に連続する微緩傾斜地に特異的に分布していることがわかります。また、周辺には同様に水の集まりやすい平坦地に連続する微緩傾斜地が広がっており、ハナノキが分布する潜在的なポテンシャルが高いことも判明しました。
さらに図2は、地表面の水がどの方向に向かって流れているのかを東西南北8方位に色分けして評価したものです。この図からその流向は一定の方向にまとまっているのではなく、複雑に入り組んだ流向となっていることがわかりました。こうした場所で盛土や切土による地形改変が行われることは、地表水の流向を変化させ、かつ水の集まりやすい場所を変化させることとなります。その結果、ハナノキの分布する小湿地群を物理的に回避したとしても、水文環境を大きく変化させることは避けることができず、小湿地群の乾燥化をひきおこし、この地域にしか存在しない特異な環境を破壊することになることが予測されます。したがって、この地域での地形改変は行ってはならないと考えます。
2.環境影響の軽減措置の検討は公開の場で専門家による科学的な議論をもとに行われるべきである
当該地域の小湿地群の希少性と学術的な重要性は、以上の指摘の通りです。こうした場所での環境影響の軽減措置の検討は、その妥当性を科学的根拠をもって示さなければ、合意形成の手続き上も十分なものといえません。現地説明会では、「環境調査等について専 門家の意見を踏まえながら実施する」としていますが、専門家については、その氏名、所属、専門分野を公表し、ふさわしい専門家であることを証明する必要があります。環境影響評価の手続きでは、調査および影響予測、評価が科学的に行われること、住民等の意見が民主的に聴取され反映されることが基本です。したがって、環境影響の軽減措置の検討は公開の場での専門家による科学的な議論をもとに行っていただきたい。
以上
図1.水の集まりやすさの評価
図2.地形から評価した地表水の流向