木曾のヒノキ自然林保全の検討が始まりました。
長野・岐阜県坂井地域にあるヒノキの自然林は、建築材として特に価値の高い木曽五木といわれる樹種を含む森林です。ヒノキは日本の中でも本州中央部に集中していますが、過去1000年以上にわたって伐採利用をし続けてきた結果、自然林は枯渇してしまう恐れがあります。
この森が今もわずかに残る国有林を今後どうしていくかについて、NACS-Jの意見書がきっかけともなり中部森林管理局に専門家会議が組織され、NACS-Jも委員として参加しています。7月23~25日は現地検討と第二回専門家会議が開かれ、今残っている自然林をできるだけまとまりを持って保護林とすることが合意され、局の原案とする具体的な範囲の検討に移りました。8月には地域の首長や林業業界関係者なども参加される、最初の設定委員会が開かれます。
問題は、林業としてみたときに資源として利用価値の高いものは、人工林育ちでない天然ヒノキであり、この大径木こそが利用対象になっている一方、それが育つには少なくも300年以上かかり、伐採跡地に天然更新させていくことは大変難しいという状況にあることです。残存する森を維持するとともに、過去に伐採した跡地が更新していない(再度ヒノキが生えてきていない)ところの修復も合わせて考えなくてはなりません。また、天然の大径木でなくてはならないという文化財修復や伝統的資源利用の習慣と、自然遺産・資産の保護保全の関係をどうすべきかについても、ようやく議論が始まります。これからは人工林で育てた木で代替することを提案し、自然林を守り続けたいと思います。
(写真:現場を案内する森林管理署職員から、資源利用の経過と残存状態、自然林が残る範囲を聞き、図面で位置を確かめる。)
(常勤理事・横山隆一)