『海の生物多様性フォーラム~日本の海の今を考える~』を開催しました
5月19日(土)に、東京渋谷で『海の生物多様性フォーラム~日本の海の今を考える~』を開催しました。
講演者は、環境省、国交省、農水省の方々や、各NGO団体、学識経験者と多様な立場の方にお越しいただき、海の生物多様性について率直な意見を交わす貴重な機会となりました。
NACS-J田畑理事長の挨拶、環境省の渡辺綱男自然環境局局長からのメッセージに続き、Ⅰ部の講演は、海洋研究開発機構理事の白山義久先生。
日本の海の生物多様性の高さとそれを支える海洋環境、そして人間が海に与えている様々なインパクトについて、最新の研究をもとにご講演いただきました。
Ⅱ部のパネルディスカッションは、セッションごとに登壇者がそれぞれの取り組みを紹介するとともに、今後に向けた問題提起をおこないディスカッションを行いました。
テーマは、震災復興と生物多様性・水産資源管理・海洋保護区のあり方、と盛りだくさん。
セッション1:東北 「津波被災地の沿岸域、生物多様性と復興・復旧を考える」
被災地で進んでいる長大な防潮堤の計画に対して、地域によって、そんな高いものはいらないという地域があれば、もっと大きなものを希望する地域もあるそうで、地域の意見をきちんと聞くこと・意見を反映させることの大切さが繰り返し話題にあがりました。
また、関係者や外部団体間の情報共有や、地域の方々の自然・生物多様性への関心を高めることの重要性についても指摘されました。
セッション2:生物「回遊する生物の減少、水産資源の管理を考える」
ウナギやクロマグロはすでに壊滅的な状況です。MSC認証制度や、公的規制と自主規制などを魚種や地域の危機的状況を踏まえて効果的にすすめていく必要があることが見えてきました。また、消費者・社会の意識を変えていくことの重要性も示されました。
セッション3:空間 「日本の海洋保護区8.3%、その内容を考える」
海域の総合的な空間管理はまったく新しい分野です。これまでの日本の海域管理の歴史や独自性を踏まえるとともに、新しい発想も持って、様々な種類の保護区が生物多様性に対して有効なものとなるように、今後も様々な主体が連携して検討を進めていく必要性が確認されました。
NACS-J安部からは、17日に発表した「日本の海洋保護区は8.3%」は見直すべき、という提言をもとに生物多様性保全を目的とした海洋保護区制度の再構築について発表を行いました。
Ⅲ部は総合討論です。これまでのディスカッションを踏まえ、新たな生物多様性国家戦略に向けた熱い議論が進められました。
たくさんの課題がありますが、海の保全が、森林などに比べてここまで遅れてしまった理由の一つは、関係する法律、省庁がとても多くて複雑なことです。地域住民や学識経験者、NGOなどの活動団体、そして行政も関係省庁が一堂に集まり、連携して課題に向き合っていくことが、何より重要であることが確認されました。
最後に、第Ⅰ部の講演者・白山先生から、「これまで非常にマイノリティであった海の話しがこれだけ主流化の俎上に上がったことが驚き。」というコメントがあったように、今回のフォーラムは、海の保全の新たな一歩となったと感じます。
今後も、新たな生物多様性国家戦略策定に向け、連携して取り組んでいける機会をつくっていきたいと思います。
NACS-Jのtwitterで、当日のセミナーのようすをご紹介しています。
https://twitter.com/#!/NACSJonline
(保護プロジェクト部 志村智子)