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(仮称)宮城気仙沼風力発電事業 環境影響評価準備書に関する意見書を提出いたしました

2025.06.19
要望・声明

日本自然保護協会(NACS-J)は、宮城県気仙沼市で計画されている「(仮称)宮城気仙沼風力発電事業」の環境影響評価準備書に関して、事業予定地のほぼ全域が県立自然公園であり、日本の生物多様性保全や、今後予定しているイヌワシ野生復帰事業への影響などが懸念されることから、事業予定地の再検討を行うべきとの意見書を提出しました。


2025年6月9日

東急不動産株式会社 御中

(仮称)宮城気仙沼風力発電事業 環境影響評価準備書に関する意見書

〒104-0033 東京都中央区新川1-16-10 ミトヨビル2F
公益財団法人 日本自然保護協会
理事長 土屋 俊幸

日本自然保護協会は、自然環境と生物多様性の保全の観点と、今後予定しているイヌワシ野生復帰の観点から、宮城県気仙沼市で計画されている「(仮称)宮城気仙沼風力発電事業」の環境影響評価準備書(以下、本アセス図書と言う)」に関する意見を述べる。

1.南三陸地域でのイヌワシ野生復帰において、北上山地の連続性が不可欠であるため、事業予定地の再検討を行うべきである。

日本自然保護協会は、南三陸地域イヌワシ生息環境再生プロジェクト協議会と協力して、本事業予定地を含む南三陸地域において、イヌワシの生息環境の再生に取り組んできた。2023年からは、飼育下で繁殖したイヌワシを野生復帰させる事業の準備を進めている。本事業予定地は、北上山地の南北の連続性を維持する重要な場所に位置していることから、「宮城県自然環境共生指針」(宮城県、平成14年)及び「宮城県自然環境保全基本方針」(宮城県、平成18年)において、生態系ネットワークとしての重要性が明示されている。イヌワシの野生復帰の観点からは、日本最大のイヌワシ生息地の一つである岩手県内と、イヌワシの野生復帰を予定している南三陸地域の両地域の間が、イヌワシの生息地としての連続性を確保していることは極めて重要である。しかし、本事業予定地に風力発電施設が設置されると、両地域のイヌワシの生息地としての連続性が分断されることになり、イヌワシ野生復帰事業への悪影響は甚大である。絶滅の危機にあるイヌワシの保全・回復のために事業予定地の再検討を行うべきである。

2.本事業予定地は、地域の水資源保全と災害防止の観点から重要な場所である。予防原則に基づいて事業予定地の再検討を行うべきである。

本事業予定地は、干害防備保安林、保健保安林、水源涵養保安林、砂防指定地、災害土砂流出危険地区に指定されており、事業予定地としては積極的に回避すべき場所である。また、本アセス図書で示された調査結果から、本事業による水資源への悪影響や、災害リスクの増加が、将来に渡って発生しないと評価することは困難である。さらに、地域住民から不安の声が多く寄せられている状況もある。地域の水資源保全と災害防止の観点から、予防原則に基づいて事業予定地の再検討を行うべきである。

3.計画地のほぼ全域が県立自然公園であり、事業予定地の再検討を行うべきである。

本事業予定地は全域が気仙沼県立自然公園である。本事業の事業者である東急不動産株式会社および子会社のリニューアブル・ジャパン株式会社は、現在、国内において、計14件の大型風力発電事業を計画しており、そのうち5件が自然公園(国立・国定公園、県立自然公園)内での計画である。さらに、そのうち4件の計画は、事業実施区域が全域自然公園内となっている。
2030年までに陸と海の30%以上を健全な生態系として効果的に保全しようとする30by30がネイチャーポジティブ実現のための目標となっている。現在、日本の陸域の保護地域は約20.5%であり、残りの約9.5%の面積を増やすために保護地域の拡張やOECMの推進が図られている。自然公園は既に保護地域となっており、このような場所で大規模な開発を行うことは、ネイチャーポジティブと逆行するものであるため、事業予定地の再検討を行うべきである。

以上


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