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(仮称)つがる南第2風力発電事業 環境影響評価準備書に関する意見書を提出いたしました

2025.05.28
要望・声明

日本自然保護協会(NACS-J)は、青森県つがる市で計画されている「(仮称)つがる南第2風力発電事業」の環境影響評価準備書に関して、屏風山湿原池沼群を含む生物多様性上重要な場所での開発、希少鳥類、コウモリ類のブレード等への接触リスクの増加など、自然環境への影響が懸念されることから、事業実施は慎重に判断すべきとの意見書を提出しました。


2025年5月26日

株式会社 新エネルギー技術研究所 御中

(仮称)つがる南第2風力発電事業 環境影響評価準備書に関する意見書

〒104-0033 東京都中央区新川1-16-10 ミトヨビル2F
公益財団法人 日本自然保護協会
理事長 土屋 俊幸

日本自然保護協会は、自然環境と生物多様性の保全の観点から、青森県つがる市で計画されている(仮称)つがる南第2風力発電事業(事業者:株式会社新エネルギー技術研究所、最大30,100 kW、基数:最大7基)の環境影響評価準備書(作成委託事業者:株式会社アズテック及び株式会社数理計画、以下本アセス図書と言う)に関する意見を述べる。

1.本事業予定地は生物多様性上重要な場所であり、事業実施は慎重に判断すべきである

本事業対象事業実施区域は、一般社団法人コンサベーション・インターナショナル・ジャパンによって生物多様性保全の鍵になる地域(KBA)に指定されている屏風山湿原池沼群に全域が含まれている。
更には、風力発電機設置予定地の100m圏内の大堤のため池は、環境省によって絶滅のおそれのある地域個体群の「青森県のカンムリカイツブリ繁殖個体群」が確認されている。カンムリカイツブリは津軽平野での個体数は増えているものの、大堤のため池は全国的にみると限られた繁殖地である。このような絶滅のおそれのある地域個体群生息地に近接して、風力発電機の設置を検討していることは生物多様性を軽視していると言わざるをえない。
2030年までに世界の陸域・海域の少なくとも 30%を保全・保護することを目指す生物多様性に関する新たな世界目標「30 by 30(サーティー・バイ・サーティー)」が推進されている中で、既に風力発電機が複数稼働している場所であるとはいえ、このような生物多様性保全上重要な場所での大規模な開発行為の実施は慎重に判断すべきである。

2.希少鳥類、コウモリ類への影響が多大であり、事業実施は慎重に判断すべきである

本事業は既に11基が稼働しているつがる南風力発電事業の事業地周辺に、風力発電機を新たに7基設置する事業計画である。このようなことから、本アセス図書には、稼働中のつがる南風力発電事業での、令和5年春から令和6年春までのバットストライクおよびバードストライクの調査結果が掲載されている。それによると、バードストライクは猛禽類2例を含む26例、バットストライクはヤマコウモリやヒナコウモリなどの28例が確認されている。特に、令和5年8月には本事業対象事業実施区域の中心部で国内希少野生動植物種のハヤブサのバードストライクが発生している。しかし、本アセス図書によると、ハヤブサの衝突確率は環境省モデルで令和5年0.0008個体/年、令和6年0.0007個体/年、由井モデルでは令和5年0.0107個体/年、令和6年0.0089個体/年とし、ブレード等への接触の可能性は低いと結論づけている。
風力発電機が増えれば、必然的にこれまで以上に衝突確率は高まることは自明の理である。さらには、今後周辺海域では、大規模な洋上風力発電事業の計画が多数あり、海岸付近の渡り経路が利用できなくなる可能性が高い。このように、現時点でブレード等への接触の可能性は低いとしながらも、既に希少猛禽類のバードストライクが発生している上に、今後さらなるバードストライクが増加する懸念があることから、事業実施は慎重に判断すべきである。

3.鳥類の事後調査は2ヶ月だけでなく通年で稼働中は継続して行うべきである

本アセス図書によると、鳥類の事後調査は、鳥類の繁殖期の6月と7月のみ実施するとしている。しかし、稼働中のつがる南風力発電事業によって確認されているバードストライクの26例中、過半数の14例は6月と7月以外の期間に発生している。そのうち、生態系に多大な影響がある希少猛禽類のバードストライクは8月と3月と、事後調査計画期間外である。本事業による鳥類への影響を把握するためには、事後調査は繁殖期の短期間に限定せず、一年を通じて行う必要がある。

4.風力発電機などの保守点検を徹底的に行うべきである

秋田県秋田市で、本事業者の子会社が運用していた風力発電機のブレードが破損し、近くで倒れていた男性の死亡が確認されている。ブレード破損・落下による直接的な人的被害や動植物の生息地破壊の可能性も考えて、現在稼働中のつがる南風力発電事業も含めて、これまで以上に現地での風力発電機などの保守点検頻度などを増やすべきである。

以上

事業実施区域を示した地図の画像

事業実施区域を示した航空写真

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