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世界自然遺産・知床半島の携帯電話基地局の整備に対する意見を提出しました

2024.05.07
要望・声明

日本自然保護協会(NACS-J)は、世界自然遺産・知床半島において検討されている、携帯電話基地局および電源設備としての太陽光パネル等の建設計画に対し、国立公園及び世界自然遺産である当地の生物多様性と風致景観の保全に大きな懸念があるため、早期着工の見合わせと慎重な検討を求め、総務省をはじめ関係省庁と通信電話事業者に対し意見書を提出しました。

世界自然遺産・知床半島の携帯電話基地局の整備に対する意見(PDF/174KB)


2024年5月7日

総務大臣   松本 剛明  様
環境大臣   伊藤 信太郎 様
国土交通大臣 斉藤 鉄夫  様
林野庁長官  青山 豊久  様
携帯電話事業者(株式会社NTTドコモ、KDDI株式会社、ソフトバンク株式会社、楽天モバイル株式会社)様

公益財団法人 日本自然保護協会
理事長 亀山 章

世界自然遺産・知床半島の携帯電話基地局の整備に対する意見

令和4年4月に知床半島でおきた観光船の事故を契機に、地方公共団体からの要望により、総務省をはじめとする関係省庁と通信電話事業者が、昨年4月に「知床半島地域通信基盤強化連携推進会議」を立ち上げ、知床半島の通信基盤強化に向け、携帯電話基地局の整備が検討されてきた。4月26日に地方公共団体や関係者も交えた第2回の連携推進会議が行われた。報道によると、事業者が知床岬で携帯電話基地局の電源設備として太陽光パネルと蓄電池施設等を約7,000平方メートル(約84メートル四方)の規模で建設し、また半島東部のニカリウスでも基地局建設候補地を選定して今年建設し、観光船・漁船からの通信や現地の動画ライブ配信もできるようにするということである。
知床半島は、世界自然遺産に2005年に登録されており、特に半島の中心部から岬にかけては国立公園の特別保護地区に指定されており、本来、開発等から厳重に守られるべきエリアであることを踏まえ、日本自然保護協会は我が国の貴重な自然を保護する立場から以下の意見を述べる。

  1. 観光船の事故は、事業者の運営の過失によって多くの死者を出した海難事故である。本来は観光船の業務無線や衛星携帯電話の搭載などにより安全管理の徹底を行うべきであり、携帯電話の通信強化の必要性には疑問がある。
  2. 本件は、国立公園及び世界自然遺産の生物多様性と風致景観の保全に大きな懸念があるため、携帯電話事業者は5月に予定されている早期の着工を見合わせ、慎重に検討すべきである。
  3. 国立公園の特別保護地区のような原生的な自然のなかでは、利用者の利便性よりも、不便さを伴う非日常の自然体験こそが優先されるべきであり、海域も含め携帯電話の通信強化を知床半島の核心部および周辺の海域で進めるべきではない。
  4. 国立公園特別保護地区、世界自然遺産登録地内で行われる開発行為として、知床岬での太陽光パネル264枚の建設は改変規模として看過されるものではなく、世界自然遺産の普遍的価値を損なわないか、環境省は世界自然遺産の審査機関である国際自然保護連合(IUCN)に意見を聞くなど、慎重な検討が求められる。
  5. 環境省は、今後、全国の国立公園・国定公園において、知床と同様に地方自治体の要望に応じて、携帯電話の基地局やそれに伴う太陽光パネルの設置が容易に進まぬよう保護地域に関する対応方針を立てるべきである。

以上

Google Earthによる知床岬の衛星画像Google Earthによる知床岬の衛星画像

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