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(仮称)北海道厚田風力発電事業 環境影響評価方法書に関する意見を提出しました

2024.04.30
要望・声明

日本自然保護協会(NACS-J)は、「(仮称)北海道厚田風力発電事業」について、石狩市における風力発電ゾーニング計画書との整合性や、また本事業予定地でのネイチャーポジティブ推進方策への懸念から、環境影響評価方法書に対する意見を出しました。


2024年4月30日

東急不動産株式会社 御中

(仮称)北海道厚田風力発電事業 環境影響評価方法書に関する意見書

〒104-0033 東京都中央区新川1-16-10 ミトヨビル2F
公益財団法人 日本自然保護協会
理事長 亀山 章

日本自然保護協会は、自然環境と生物多様性の保全の観点から、北海道石狩市厚田区で計画されている(仮称)北海道厚田風力発電事業(事業者:東急不動産株式会社、最大91,500kW、基数:最大15基)の環境影響評価方法書(作成委託事業者:日本気象協会)に関する意見を述べる。

1.石狩市における風力発電ゾーニング計画書と整合を図るべき

本事業の事業実施区域の約89%が、石狩市における風力発電ゾーニング計画書が定める環境保全エリアとなっている。風力発電ゾーニング計画書P.9で、環境保全エリアは、生活環境、自然環境の保全上重要な地域や、各種関係法令等による保護地区や規制区域などの「環境保全を優先すべきエリア」とされている。本アセス図書P.344で記述されているように、当該風力発電ゾーニング計画書には厚田区の動植物に関する評価が不十分などの問題があり、現地の環境と齟齬がある可能性はある。しかし、石狩市が、全域を対象とするアンケート調査や環境調査などの正当な手続きを踏んで作成したものである以上、最大限、尊重すべきである。風力発電ゾーニング計画書の環境保全エリアで大規模な風力発電計画を行うことは、各地で推進されている再生可能エネルギーの適正なゾーニングの取り組みを蔑ろにするものであり、自治体や地域の理解を難しくすることになる。

2.本事業予定地でのネイチャーポジティブ推進方策

そもそも本事業はアセス手続きの方法書段階であるため、現時点では自然環境への負の影響は十分に評価されていない。そのため、回避や緩和措置の具体的な方策が未確定な状態であり、ネイチャーポジティブの実現を方針に掲げても空論に終わる可能性は否めない。そのことを前提として、以下の意見を述べる。

本アセス図書P.2では本事業予定地で、カーボンニュートラルとネイチャーポジティブの同時実現をめざす方針を掲げている。しかし、ネイチャーポジティブに向けた取組みに記述されている管理や再生に関する記述内容が乏しく、目指す方向と対策とのギャップが大きい。

本事業地は大規模牧草地になる前は、森林であったことから、本アセス図書で示されている一部地域の森林の再生は一定のネイチャーポジティブに資すると考えられる。一方で、具体的なネイチャーポジティブの取り組みとして示されているのは、草地性の鳥類の保全だけであり、目標とするネイチャーポジティブのビジョンが何か不明である。ネイチャーポジティブの実現に際しては、影響の回避や緩和を優先し、その上で保全や回復措置をとらえるというミティゲーションヒエラルキーの考え方が重要である(後述のIUCNのネイチャーポジティブの10原則の一つ)。そのためには、方法書の段階で調査・予測・評価の方法を十分に検討しておく必要がある。

さらには、ネイチャーポジティブへの理解が乏しいことも記述内容から読み取れる。活動案①に掲げている希少鳥類のモニタリングの実施は、あくまでも個体数の回復・維持・減少を把握することが目的であり、より重要なのは、その結果に基づいて、必要な対策を取ることである。そのため、本アセス図書で示されている希少鳥類のモニタリングの実施内容では不十分である。

また、IUCNは、2023年に発行した「Nature Positive for Business」の中で、ネイチャーポジティブをめざすための10の基本原則を掲げているが、本事業はこの10原則に即したものではない。Nature as a wholeの原則に鑑みれば、草原環境の保全目標は生態系全体であるべきであるが、本アセス図書では鳥類の保全だけが示されており、他の動植物の記述が一切見られず、生態系全体を保全する視点が欠如している。

活動案③の自然共生サイトへの申請についても、国が定める基準にある通り、管理主体や活動計画に関する「ガバナンスに関する基準」や、「活動による保全効果に関する基準 」を満たす必要がある。保全活動の検討やその継続的な活動体制についての記述がないまま、自然共生サイトへの登録を検討するという記述だけが先行している状況は、保護地域をめぐる国際課題の一つペーパーパーク(机上の地図では設定されているものの管理が伴わない保護地域)のOECM版を作る行為ではないかという疑念さえ生みかねない。

以上のように、本アセス図書で示されている保全活動では、カーボンニュートラルとネイチャーポジティブの同時実現目標は、負の影響がある事業実施を正当化するための免罪符と捉えることが可能であり、典型的なグリーンウォッシュと言わざるを得ない。

以上

(写真:安田秀司氏提供)

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