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(仮称)栗子山風力発電事業の環境影響評価準備書に関する意見書を提出しました

2023.10.16
要望・声明

日本自然保護協会(NACS-J)は、福島県福島市、山形県米沢市で計画されている「(仮称)栗子山風力発電事業(事業者:JR東日本エネルギー開発株式会社)」の環境影響評価準備書に対し、近隣に生息する絶滅危惧種イヌワシの詳細な調査とアセス書の常時公開を求めて意見書を提出しました。

(仮称)栗子山風力発電事業の環境影響評価準備書に関する意見書(PDF/700KB)


2023年10月15日

JR東日本エネルギー開発株式会社 御中

(仮称)栗子山風力発電事業 環境影響評価準備書に関する意見書

〒104-0033 東京都中央区新川1-16-10 ミトヨビル2F
公益財団法人 日本自然保護協会
理事長 亀山 章

日本自然保護協会は、自然環境と生物多様性の保全の観点から、福島県福島市、山形県米沢市で計画されている(仮称)栗子山風力発電事業(事業者:JR東日本エネルギー開発株式会社、最大34,000 kW、基数:最大10基)の環境影響評価準備書(作成委託事業者:株式会社建設技術研究所)に関する意見を述べる。

本計画は、配慮書および方法書で含まれていた国有林の緑の回廊および保安林を対象事業実施区域から除外するなど、自然環境への一定の配慮がみられる。一方で、本環境影響評価準備書の作成の際に実施した猛禽類の調査では、周辺地域でイヌワシおよびクマタカの飛翔が年間を通じて確認されており、風車の稼働によりバードストライクの懸念が大きい。このようなことから、より詳細な調査を行い、一部地域の除外も含めて事業の再検討を行う必要がある。

1.イヌワシに関する調査を再度行うべきである

本準備書内では希少猛禽類のイヌワシ(絶滅危惧ⅠB類・国指定の天然記念物)やクマタカ(絶滅危惧ⅠB類)の飛翔が確認されている。特にイヌワシは10km以上営巣地から離れているにもかかわらず、2020年~2022年の間に計画地およびその周辺で一年を通じて継続的に43例の飛翔が確認されている。

イヌワシは全国で約500頭と推定され、繁殖成功率は全国平均で24%と減少している。本事業における風力発電機への衝突確率はいずれも20年に1回である0.05頭/年を下回っているが、衝突死は地域個体群の存続に関わる問題である。対策として、動物を寄せ付けないため付近に砂利を敷くなど対策をおこなうとしているが、そもそも事業実施区域のほぼ全域には既存の林道も存在せず、本事業実施のために森林を伐採すること自体が、イヌワシを誘導することにつながると思われる。

このようなことからも、本地域でのイヌワシの飛翔状況を、より正確に明らかにするため、さらに1,2年間のイヌワシの飛翔状況を調査し、事業実施によるイヌワシへの影響をより詳細に明らかにする必要がある。

2.本環境影響評価図書を常時公開することが求められる

本環境影響評価図書の閲覧は、環境影響評価法により定められた期間ではあるが、縦覧期間が 1ヶ月程度と短く、また縦覧場所も限られている。インターネット上で閲覧は可能ではあるが、印刷やダウンロードができないため、縦覧期間終了後は、環境影響評価図書の内容が実際の計画地の状況と齟齬がないかを確認することが難しい。

地域住民や利害関係者等が常時、容易に精査できることが、環境影響評価の信頼性にもつながるものであり、地域との合意形成を図るうえでも不可欠である。全事業の環境影響評価図書を常時公開している事業者もあり、閲覧可能期間に限らず、縦覧期間後も地域の図書館などで、常時閲覧可能にし、また、随時インターネットでの閲覧とダウンロード、印刷を可能にすることが求められる。

以上

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