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大船渡第一・第二太陽光発電所事業の環境影響評価方法書に関する意見書を提出しました

2023.10.11
要望・声明

日本自然保護協会は、岩手県大船渡市で計画されている大船渡第一・第二太陽光発電所事業(事業者:自然電力株式会社、総発電出力35.2M W )の環境影響評価方法書に関する意見書を提出しました。

大船渡第一・第二太陽光発電所事業環境 影響評価方法書に関する意見書(PDF/804KB)


2023年10月6日

自然電力株式会社 御中

大船渡第一・第二太陽光発電所事業 環境影響評価方法書に関する意見書

2〒104-0033 東京都中央区新川1-16-10 ミトヨビル2F
公益財団法人 日本自然保護協会
理事長 亀山 章

日本自然保護協会は、自然環境と生物多様性の保全の観点から、岩手県大船渡市で計画されている大船渡第一・第二太陽光発電所事業(事業者:自然電力株式会社、総発電出力35.2M W、太陽光発電パネル(モジュール):約76,600枚、工作物設置面積約23 ha )の方法書(作成委託事業者:一般財団法人日本気象協会)に関する意見を述べる。
本方法書で示された発電所の計画地のうち、太陽光発電パネルの設置予定場所の全域は五葉山県立自然公園に指定されており、大窪山地区の景観、および自然環境への影響が免れないため、大幅に計画を見直すべきである。

1.イヌワシの地域個体群の存続のため大窪山の開発はすべきではない

本方法書に記載された事業者の猛禽類調査では、イヌワシ(絶滅危惧ⅠB類・国指定の天然記念物)の若い個体や成鳥が継続的に確認されている。イヌワシの個体数は、全国で約500羽と推定され、繁殖成功率は全国平均で24%と減少しており(日本イヌワシ研究会、2015)、東北地方では過去10年(2004年から2013年)で15%と危機的な状況といわれている。

現在、大窪山の周辺で繁殖は確認されていないものの、2004年まで繁殖していた状況が知られており、イヌワシの繁殖環境としてのポテンシャルはあると推定される。また、現在も非繁殖期の餌場として利用されている可能性があり、当該地におけるイヌワシの飛翔、採餌行動などを詳細に調査し、ノウサギなど餌資源の評価を行うとともに、この地域の個体群の存続維持について予測・評価すべきである。

2.点在する湿地への太陽電池パネルの設置は回避すべきである

対象事業実施区域内の大窪山周辺には湧水とその流れ込みにより形成された湿地が点在している。このような湿地にはヤチカワズスゲやウスイロスゲなどのスゲ類やヒメシロネやモウセンゴケなど湿地性の植物が生育し、重要な種(方法書 表3.1-22)にあるハッチョウトンボ(いわてレッドデータブックDランク)やトウホクサンショウウオ(環境省レッドリスト準絶滅危惧種、いわてレッドデータブックCランク)の生息が確認されている。事業者は自主調査を2021年と2022年に実施し、その際に、専門家からの意見により「湿地については基本的に改変を回避する」と対応する旨が、記載(資料‐64)されている。しかし、本計画では、湿地上に太陽電池パネルが設置される箇所があり、また別の湿地を新設の管理用道路(桟橋)が横断する計画になっている(図2 2-3(1) 施設の配置計画(案)、図4 2-8 重要な群落(湿地)の分布状況、図4 2-7(1) 重要な種の確認位置(拡大1))。湿地を適切に保全するためには、詳細な現地調査を行い評価のうえ、計画の見直しを行うべきである。

3.本アセス図書を常時公開し、ダウンロード、印刷ができるようにすべきである

本アセス図書の閲覧は、環境影響評価法により定められているとはいえ、縦覧期間が 1ヶ月2週間と短く、また縦覧場所も限られている。インターネット上で閲覧は可能ではあるが、印刷やダウンロードができないため、縦覧期間終了後は、アセス図書の内容が実際の計画地の状況と齟齬がないか確認することが難しい。

地域住民や利害関係者等が常時、容易に精査できることが、環境影響評価の信頼性にもつながるものであり、地域との合意形成を図るうえでも不可欠である。全事業の環境影響評価図書を常時公開している事業者もあり、本事業者の対応は不親切といわざるを得ない。縦覧期間後も地域の図書館などで、図書を常時閲覧可能にし、また、事業者のホームページ上で随時インターネットでの閲覧とダウンロード、印刷を可能にすべきである。

以上


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