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(仮称)宗谷丘陵南風力発電事業の計画段階環境配慮書に関する意見書を提出しました

2023.09.27
要望・声明

「(仮称)宗谷丘陵南風力発電事業(事業者:ジャパン・リニューアブル・エナジー株式会社)」は、絶滅の危機にあるイトウの国内最大の産卵地が計画地内に含まれるなど、生物多様性に甚大な影響がある計画であるとして、日本自然保護協会は、計画段階環境配慮書の段階で事業中止を求めて意見書を提出しました。

(仮称)宗谷丘陵南風力発電事業計画段階環境配慮書に関する意見書(PDF/722KB)


2023年9月27日

ジャパン・リニューアブル・エナジー株式会社 御中

(仮称)宗谷丘陵南風力発電事業 計画段階環境配慮書に関する意見書

〒104-0033 東京都中央区新川1-16-10 ミトヨビル2F
公益財団法人 日本自然保護協会
理事長 亀山 章

日本自然保護協会は、自然環境と生物多様性の保全の観点から、北海道稚内市、宗谷郡猿払村、天塩郡豊富町で計画されている(仮称)宗谷丘陵南風力発電事業(事業者:ジャパン・リニューアブル・エナジー株式会社、最大354,000 kW、基数:最大59基)の計画段階環境配慮書(作成委託事業者:株式会社建設環境研究所)に関する意見を述べる。

本計画は、事業実施想定区域に国内最大級のイトウの産卵河川流域を含んでおり、他の風力発電事業と比較して生物多様性への影響が甚大であることから、以下に述べるように事業は実施すべきではない。

1.本事業計画地はイトウの国内最大の産卵地であり、事業による影響は甚大である。そのため、本事業は行うべきではない

サケ科イトウ属のイトウは、かつては北日本の45河川水系に生息の記録があったが、近年急激に生息河川が減少している。現在の生息河川は北海道の11水系のみ(福島, 2008)で、うち、安定した個体群を維持している河川は7水系のみであり(江戸, 2007)、絶滅の危機に瀕している。そのため、「環境省レッドリスト2020」で絶滅危惧IB類(環境省)に、IUCNレッドリストでCritically Endangered(深刻な危機)に指定されている。

本事業の事業想定区域東半分の猿払川流域は、天塩川と並んで国内最大のイトウの生息河川であり(福島, 2008)、イトウの重要な生息地となっている。特に、本事業は、イトウの個体群維持にとって重要である以下のイトウ産卵河川流域に事業実施想定区域が計画されている。

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※希少種保護の関係上、ウェブサイトでは一部情報を黒塗り表示にしています。

上記の河川上流域に風力発電施設が建設される場合、流域の森林が伐採され、作業道が建設されることにより、以下のようなイトウへの影響が懸念される。

1)上流域の森林が伐採されることにより、流域の保水力が失われ夏季などに河川の流量減少が生じやすくなり、高水温と酸欠によってイトウが死亡する危険性が高まる。

2)降雨時にイトウ産卵河川への土砂の流入および堆積が生じやすくなり、卵や仔魚の死滅、稚魚の餌となる水生昆虫の死滅、イトウの隠れ場所となる倒流木の量の減少、産卵に欠かせない河床礫の露出減少が起こりやすくなる。

3)作業道が沢を横断する箇所へ設置されるカルバートにより、イトウ遡上の阻害が発生し(福島, 2015, 福島, 2018)、イトウの産卵場所への遡上が不可能になる。

以上のように本事業の実施は、工事中だけでなく工事完了後も継続的にイトウの生息地への影響が甚大であり、絶滅に瀕しているイトウの国内最大個体群の存続を危うくする恐れが極めて高い。このようなことから、生物多様性保全の観点より本事業は実施すべきではない。

2.計画地は道北では数少ない自然植生が広範囲にみられる場所であり、自然林を保護するために事業は行うべきではない。

これまで道北では多くの風力発電事業が沿岸地域や丘陵地域の採草地で計画され建設されてきた。しかし、本計画の事業実施想定区域の内陸部は比較的人為の影響が少なく、自然植生が広範囲でみられる。本アセス図書でも、事業実施想定区域の大半が植生自然度9のエゾマツ、トドマツによる針葉樹自然林、もしくは、これら針葉樹種に広葉樹種が混交する針広混交林の自然林であることが示されている。これら森林のほぼ全域は国有林であり、かつ保安林に指定されている。

本事業の実施は、広範囲の自然林の伐採が伴うことが予想され、伐採樹木本数は十万本以上であることが推定される。本事業の実施によって、貴重な道北の自然環境が大幅に改変されることは避けるべきであり、本事業は実施すべきではない。

3.鳥類への累積的影響を正しく評価して計画地を選定すべきである

事業実施想定区域の周辺には、既設の川南風力発電事業、天北ウインドファーム、さらきとまないウィンドファーム、上勇知ウィンドファーム、宗谷岬ウインドファームがあり、建設中の(仮称)北海道(道北地区)ウィンドファーム豊富、(仮称)樺岡風力発電事業、(仮称)川西風力発電事業、(仮称)芦川風力発電事業が存在する。さらには、(仮称)豊富山風力発電事業、(仮称)宗谷丘陵風力発電事業、猿払村および浜頓別町における風力発電事業、(仮称)勇知風力発電事業など複数の風力発電事業が環境影響評価手続き中である。事業実施想定区域周辺は、オオワシやオジロワシ等の海ワシ類およびノスリの渡りのルートにあたるが、上記のように風力発電事業が過密状態にあり、これら既存事業および計画が対象事業の存在と相まって生じる累積的影響が懸念される。累積的影響が発生しないように、十分に計画地を検討すべきである。

4.本環境影響評価図書を常時公開すべきである

本環境影響評価図書の閲覧は、環境影響評価法により定められているとはいえ、縦覧期間が 1ヶ月程度と短く、また縦覧場所も限られている。インターネット上で閲覧は可能ではあるが、印刷やダウンロードができないため、縦覧期間終了後は、環境影響評価図書の内容が実際の計画地の状況と齟齬がないかを確認することが難しい。

地域住民や利害関係者等が常時、容易に精査できることが、環境影響評価の信頼性にもつながるものであり、地域との合意形成を図るうえでも不可欠である。全事業の環境影響評価図書を常時公開している事業者もあり、閲覧可能期間を短くしている本事業者の対応は不誠実といわざるを得ない。閲覧可能期間に限らず、縦覧期間後も地域の図書館などで、図書を常時閲覧可能にし、また、随時インターネットでの閲覧とダウンロード、印刷を可能にすべきである。

引用文献

  • 江戸謙顕 (2007) イトウの生態と保全.北海道の自然:45,2-9.
  • 福島路生(2008)イトウ:巨大淡水魚をいかに守るか.魚類学雑誌:55(1),49-53.
  • 福島路生(2015)サケ科魚類のプロフィール-13 イトウ.SALON情報:9,35-38.
  • 福島路生(2018)猿払イトウ保全協議会で取り組むカルバートの問題.北方林業:69(4),141-145.

以上

幻の魚イトウの写真婚姻色で赤く色づいたイトウのオス(写真提供:国立環境研究所)

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