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(仮称)薮川地区風力発電事業の環境影響評価方法書に関する意見書を提出しました

2023.05.16
要望・声明

日本自然保護協会(NACS-J)は、岩手県盛岡市および岩泉町で計画されている(仮称)薮川地区風力発電事業の環境影響評価方法書に対し、イヌワシや希少コウモリ類の生息地であることから、自然環境と生物多様性の保全を重視した調査・評価を行うように意見を述べました。

(仮称)薮川地区風力発電事業 環境影響評価方法書に関する意見書(PDF/740KB)


22023年5月16日

株式会社グリーンパワーインベストメント 御中

(仮称)薮川地区風力発電事業における環境影響評価方法書に関する意見書

〒104-0033 東京都中央区新川1-16-10 ミトヨビル2F
公益財団法人 日本自然保護協会
理事長 亀山 章

日本自然保護協会は、自然環境と生物多様性の保全の観点から岩手県盛岡市及び下閉伊郡岩泉町で計画されている(仮称)薮川地区風力発電事業(事業者:株式会社グリーンパワーインベストメント、最大総出力:140,000kW、基数:23~34基程度)の環境影響評価方法書(作成委託事業者:日本工営株式会社)に関する意見を述べる。

1)事業計画による自然環境への影響

同アセス図書の対象事業実施区域は、配慮書段階で事業実施想定区域に含まれていた緑の回廊および県立公園が外されており、一定の自然環境への配慮がなされている。しかし、依然として対象事業実施区域にはイヌワシの生息地が含まれているなど自然環境への懸念がある。そのようなことからも自然環境の慎重な調査を行い、自然環境面への影響を正しく評価すべきである。

2)種の保存法の指定種イヌワシの生息調査

同アセス図書のP.288表4.3-11(2)の専門家等へのヒアリング結果にあるように、対象実施区域周辺にはイヌワシが生息している。そのため、岩手県自然環境保全指針(優れた自然)の保全区分はBランクになっている。専門家からのヒアリングでも「Bランク以上の範囲は事業実施区域から外すことを検討した方が良い」とコメントがあるにも関わらず、同アセス図書の対象実施区域の特に東側はBランクが広く含まれたままである。そのため、同事業によるイヌワシへの影響が強く懸念される。
そのため、事業者は事業によるイヌワシの繁殖等生息への影響を回避・低減する観点から、環境省「猛禽類保護の進め方(改定版)」にしたがって繁殖成功年を含めた2営巣期以上の調査を行い、行動圏の内部構造を適切に評価すべきである。

3)コウモリのハイリスク種の詳細な調査

環境アセスメントデータベース(EADAS)によると、軽松沢川の左岸尾根上の風力発電機の設置を検討している尾根に、モリアブラコウモリおよびチチブコウモリの生息が確認されている。モリアブラコウモリとチチブコウモリは、風力発電施設によるバットストライクを受けやすいハイリスク種である。それにも関わらず、同図書P.397、P.405で示されている哺乳類(コウモリ類)の調査地点は、これら事前に示されているハイリスク種の生息状況を考慮した調査地点になっていない。事前に示されているコウモリ類のハイリスク種の生息地を考慮し、調査地点を再考すべきである。

4)土砂災害のリスク

対象事業実施区域のうち、工事用・管理用道路の新設等を想定している場所は、ほとんどが土石流危険渓流となっており、下流は土砂災害警戒区域となっている。それにも関わらず、土砂災害リスクに関する調査が示されていない。土砂災害のリスクに関する詳細な調査を行うべきである。

5)同図書の公開方法

同アセス図書の閲覧は、環境影響評価法により定められているとはいえ、縦覧期間が 1ヶ月と短く、また、縦覧場所も限られている。インターネット上で閲覧は可能ではあるが、印刷やダウンロードができない。また縦覧期間終了後は閲覧することができないため、アセス図書の内容が、実際の計画地の状況と齟齬がないかの確認もできない。
地域住民や利害関係者等が常時、容易に精査できることが、環境影響評価の信頼性にもつながるものであり、地域との合意形成を図るうえでも不可欠である。全事業のアセス図書を常時公開している事業者もあり、閲覧可能期間を短くしている本事業者の対応は不親切といわざるを得ない。閲覧可能期間に限らず、縦覧期間後も地域の図書館などで、図書を常時閲覧可能にし、また、随時インターネットでの閲覧とダウンロード、印刷を可能にすべきである。

以上

薮川地区の高原の写真早坂高原から見た事業予定地(撮影:島田直明)

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