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普天間飛行場代替施設建設事業の工事中止とジュゴンの生息状況調査の実施に関する要望書を提出しました

2023.04.12
要望・声明

2022年7月に沖縄県名護市久志の海域で見つかった草食動物の糞が、DNA分析によりジュゴンの糞であることが明らかになりました。このことを受けて、日本自然保護協会(NACS-J)は沖縄防衛局に工事の一時中止と徹底したジュゴンの生息状況の調査を求め、沖縄県にも調査の徹底を求めるとともに市民からの目撃情報を集めやすくするためサイトの広報充実を求めました。

【沖縄防衛局宛て】普天間飛行場代替施設建設事業の工事中止とジュゴンの生息状況調査の実施に関する要望書(PDF/525KB)
【沖縄県宛て】沖縄のジュゴン個体群の生息状況調査の実施に関する要望書(PDF/533KB)

2023年4月11日

内閣総理大臣  岸田 文雄 様
防衛大臣    浜田 靖一 様
内閣官房長官  松野 博一 様
沖縄防衛局長  小野 功雄 様
環境大臣    西村 明宏 様

公益財団法人 日本自然保護協会
理事長 亀山 章

普天間飛行場代替施設建設事業の工事中止とジュゴンの生息状況調査の実施に関する要望書

沖縄県名護市久志の海域で2022年7月に草食動物の糞が見つかり、DNA分析によりジュゴンの糞であることが明らかになりました(沖縄県、2023)。このことに対し、沖縄防衛局は発見地が工事実施区域内ではないことを理由に影響がないとしていますが、発見地は工事実施区域から約3 kmの近接した場所です。

この事業の環境影響評価が実施された当時は、日本のジュゴンは沖縄島周辺に数頭生息するという考えが一般的でしたが、2022年度の環境省の調査では八重山地方など広範囲に生息が確認されています。また沖縄県の調査でも伊是名島周辺海域で3年間にわたり食痕が記録されており(沖縄県、2023)、古宇利島、屋我地島、伊良部島、名護市久志では糞からジュゴンの生息がわかり、与那城、糸満などでもジュゴンの目撃記録があります(沖縄県、2023)。

辺野古海域は沖縄島で最大の規模の海草藻場を有していましたが、普天間飛行場代替施設建設事業の埋め立てによりジュゴンが利用していた海草藻場は物理的に消失しています。しかし今般、工事実施区域からわずか3㎞の位置に糞があったことから工事の及ぶ範囲もジュゴンが利用している可能性があります。

また近年、ジュゴンの鳴声らしき音が計198回記録されていますが、風の影響を受けた人工物の音か、ジュゴンの鳴音かは判明していません。

南西諸島ジュゴン個体群は、国際自然保護連合(IUCN)によるレッドリストにて「近絶滅」の評価が下されています(IUCN、2019)。環境影響評価ではジュゴンに影響を与えないということが保全措置としてあげられており、早急に、辺野古・大浦湾における沖縄のジュゴンの生息状況を把握し、沖縄のジュゴンの個体群の保全対策を立てる必要があります。

私たちは、沖縄の生物多様性豊かな自然環境の保全に取り組んでいる立場から、上記の理由にもとづき、普天間飛行場代替施設建設事業の工事の一時中止とジュゴンの生息状況調査の実施を以下のように要望します。

  1. 普天間飛行場代替施設建設事業の工事を一時中止すること
  2. 工事実施区域周辺の広い範囲でジュゴンの環境DNA、食痕、糞の有無の調査を実施すること

参考文献

環境省(2022)令和4年度ジュゴンと地域社会との共生推進委託業務
沖縄県(2023)令和4年度ジュゴン保護対策事業報告書
沖縄県(2022)令和3年度ジュゴン保護対策事業報告書
IUCN Sirenian Specialist Group (2019) The IUCN Red List of Threatened Species. Version 2019-3


2023年4月11日

沖縄県知事
玉城 デニー 様

公益財団法人 日本自然保護協会
理事長 亀山 章

沖縄のジュゴン個体群の生息状況調査の実施に関する要望書

沖縄県が辺野古・大浦湾の環境保全にご尽力いただいていることに感謝しております。
沖縄県名護市久志の海域で2022年7月に草食動物の糞が見つかり、DNA分析によりジュゴンの糞であることが明らかになりました(沖縄県、2023)。このことに対し、沖縄防衛局は発見地が工事実施区域内ではないことを理由に影響がないとしていますが、発見地は工事実施区域から約3 kmの近接した場所です。

この事業の環境影響評価が実施された当時は、日本のジュゴンは沖縄島周辺に数頭生息するという考えが一般的でしたが、2022年度の環境省の調査では八重山地方など広範囲に生息が確認されています。また沖縄県の調査でも伊是名島周辺海域で3年間にわたり食痕が記録されており(沖縄県、2023)、古宇利島、屋我地島、伊良部島、名護市久志では糞からジュゴンの生息がわかり、与那城、糸満などでもジュゴンの目撃記録があります(沖縄県、2023)。

辺野古海域は沖縄島で最大の規模の海草藻場を有していましたが、普天間飛行場代替施設建設事業の埋め立てによりジュゴンが利用していた海草藻場は物理的に消失しています。しかし今般、工事実施区域からわずか3㎞の位置に糞があったことから工事の及ぶ範囲もジュゴンが利用している可能性があります。

また近年、ジュゴンの鳴声らしき音が計198回記録されていますが、風の影響を受けた人工物の音か、ジュゴンの鳴音かは判明していません。

南西諸島ジュゴン個体群は、国際自然保護連合(IUCN)によるレッドリストにて「近絶滅」の評価が下されています(IUCN、2019)。環境影響評価ではジュゴンに影響を与えないということが保全措置としてあげられており、早急に、辺野古・大浦湾における沖縄のジュゴンの生息状況を把握し、沖縄のジュゴンの個体群の保全対策を立てる必要があります。普天間飛行場代替施設建設事業に伴う工事の一時中止を求めることは必須であると考えます。

沖縄県が今回ジュゴンの目撃情報を集めるサイトを作られたことは大きな一歩だと思われます。一般からの情報をより広く集めるため、看板の設置やチラシの配布、新聞記事の掲載なども活用していただきたく思います。

私たちは、沖縄の生物多様性豊かな自然環境の保全に取り組んでいる立場から、上記の理由にもとづいて普天間飛行場代替施設建設事業の工事の中止を求め、ジュゴンの生息状況調査の実施を以下のように要望いたします。

  1. 普天間飛行場代替施設建設事業の工事の一時中止を日本政府に求めること
  2. ジュゴンの環境DNA、食痕、糞の有無の調査を頻度高めて実施すること
  3. 市民からの目撃情報を集めやすくサイトの広報を充実させること

参考文献

環境省(2022)令和4年度ジュゴンと地域社会との共生推進委託業務
沖縄県(2023)令和4年度ジュゴン保護対策事業報告書
沖縄県(2022)令和3年度ジュゴン保護対策事業報告書
IUCN Sirenian Group (2019) The IUCN Red List of Threatened Species. Version 2019

ジュゴン(撮影:東恩納琢磨氏)

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