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生物多様性条約COP15の成果を踏まえた生物多様性国家戦略の策定に向けて提言を出しました

2022.12.27
要望・声明

2022年12月7日から19日にかけて、生物多様性条約第15回締約国会議(COP15)が開催されました。生物多様性の急速な損失や、それに伴い世界各地で生じている自然資源や生態系サービスの急速な劣化がもたらす社会・経済的リスクへの強い危機感から、生物多様性版パリ協定とも比喩される「昆明―モントリオール生物多様性世界枠組み」(以下、GBF)が合意されました。

4年以上に及んだGBFに関する国際交渉のすべてに参加してきた日本自然保護協会(NACS-J)では、日本の生物多様性と自然の恵みを享受する人々の暮らしを守るために、GBFを受けた意欲的な次期生物多様性国家戦略の策定に向けて、COP15の成果を受けた提言をまとめました。

生物多様性条約第15回締約国会議(COP15)成果を踏まえた生物多様性国家戦略の策定に向けた提言(PDF/566KB)

2022年12月27日

生物多様性条約第15回締約国会議(COP15)成果を踏まえた生物多様性国家戦略の策定に向けた提言

公益財団法人 日本自然保護協会
理事長 亀山 章

2022年12月7日から19日にかけて、カナダ・モントリオール市にて生物多様性条約第15回締約国会議(以下、COP15 )が開催され、昆明-モントリオール生物多様性世界枠組み(以下GBF)等重要な決定がなされた。

現在、中央環境審議会自然環境部会生物多様性国家戦略小委員会において、次期生物多様性国家戦略の改定に向けた検討が進んでいる。生物多様性条約第6条および生物多様性基本法に基づく本戦略は、GBF以外のCOP15の決定事項も精査したうえで、今後、内容を検討する必要がある。

COP15に職員を派遣した日本自然保護協会では、COP15の議論や決定を踏まえて、次期生物多様性国家戦略に関して、以下のことを提言する。

1.30by30について(ターゲット3関連)

陸域と海域のそれぞれ30%をOECM含む保護地域等を通じて保全していく目標、いわゆる 30by30 がターゲット3で合意された。このターゲットでは、面積だけではなく、生物多様性上重要地域の保全および、効果的な保全と管理が目標の要素として含まれている点と、30%に「少なくとも」と形容されていることに留意が必要である。2050ゴールAとして合意された「既知の絶滅危惧種の絶滅が阻止され、種の絶滅リスクを10分の1に削減」させるゴール達成のために、将来、30%以上の目標設定を想定することが必要である。そのため、土地の所有や譲渡、管理にかかる税制措置も可能にする保護地域法制度(保護地域の拡充、OECM認定、および保全管理の推進、人員増や管理能力向上等)の充実について明記するべきである。

2.劣化した生態系の再生について(ターゲット2関連)

ターゲット2において、劣化した生態系の30%を自然再生することが目標値を引き上げて合意された。生物多様性及び生態系サービスの総合評価(JBO 3: Japan Biodiversity Outlook 3)で指摘される通り、日本においては、里地里山・浅海域・砂浜生態系の劣化が懸念されている。この3つの生態系について、それぞれ面積を伴う再生目標を設定するべきである。(第2部第2章3関連)

3.国内資源動員について(ターゲット18、19関連)

ターゲット18及び19は、COP15期間中、大きな焦点となった資源動員(*)に関わる目標である。生物多様性に負の影響を持つ補助金の削除やGBF実施のためのあらゆる資金源からの資源動員について、ターゲット19(b) にある国内資源の大幅な増加のための施策を明記するべきである。(第2部第5章4関連)

* 資源動員は生物多様性条約の交渉で用いられる用語resource mobilization の訳。資金を増やすことを意味することが多いが、資金を増やす制度も含めた広い意味で用いられることもある。

4.気候変動対策による生物多様性の損失の最小化(ターゲット10関連)

ターゲット10において、気候変動対策による生物多様性損失の最小化と好影響の促進が合意された。現在、各地で行われている再生可能エネルギー施設の建設計画の中には、生物多様性の配慮が十分に行われていない計画が数多くみられている。気候変動対策による生物多様性の損失を最小化するために、現行の環境影響評価制度の抜本的な見直しを含む取組を明記するべきである。(第2部第2章4関連)

5.外来種対策(ターゲット6関連)

ターゲット6において、既知または潜在的な侵略的外来種の導入及び定着率の少なくとも50%削減という数値目標を含む、侵略的外来種による生物多様性影響の低減、最小化や緩和が合意された。島嶼を優先地域として特出するなど、日本のような島国においては緊急的な課題として認識されている。侵略的外来種の侵入防止や定着の状況把握は、防除や早期対策のための前提条件となることから、これら監視のための全国的な人材配置も含めた対策を明記するべきである。(第2部第1章3関連)

以上

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