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関西電力が公表した5件の風力発電所開発の計画段階環境配慮書に対して意見書を提出しました

2022.06.30
要望・声明

関西電力株式会社は5月30日に、北海道4件、宮城県1件の合計5件の陸上風力発電所開発を検討開始し、計画段階環境配慮書を公表しました。
これら計画は他の陸上風力発電事業計画と比べても、自然環境への配慮が著しく欠如しており、今回、日本自然保護協会(NACS-J)は、それぞれの事業の計画段階環境配慮書について意見書を提出しました。
(仮称)伊達・千歳ウィンドファーム事業には、イヌワシやクマタカなどの鳥類や自然度の高い広葉樹林への影響、支笏洞爺国立公園への影響が懸念されることから、事業計画の中止を求めています。(仮称)古平・仁木・余市ウィンドファーム事業、(仮称)小樽・赤井川ウィンドファーム事業、(仮称)川崎ウィンドファーム事業は自然度の高い広葉樹林、鳥類のバードストライク、土砂災害増大などへの影響が懸念されることから、事業計画を中止するか事業想定区域の抜本的な見直しを求めています。(仮称)夕張ウィンドファーム事業には田園景観維持を目指している「栗山町景観計画」への配慮を求めています。

(仮称)伊達・千歳ウィンドファーム事業計画段階環境配慮書に関する意見書(PDF/256KB)
(仮称)古平・仁木・余市ウィンドファーム事業計画段階環境配慮書に関する意見書(PDF/215KB)
(仮称)小樽・赤井川ウィンドファーム事業計画段階環境配慮書に関する意見書(PDF/224KB)
(仮称)川崎ウィンドファーム事業計画段階環境配慮書に関する意見書(PDF/215KB)
(仮称)夕張ウィンドファーム事業計画段階環境配慮書に関する意見書(PDF/190KB)

2022年6月30日


関西電力株式会社 御中


(仮称)伊達・千歳ウィンドファーム事業計画段階環境配慮書に関する意見書


公益財団法人 日本自然保護協会 
理事長 亀山 章

日本自然保護協会は、自然環境と生物多様性の保全の観点から、北海道伊達市および千歳市で計画されている(仮称)伊達・千歳ウィンドファーム事業(事業者:関西電力株式会社、最大総出力:79,800kW、基数:最大19基)の計画段階配慮書に関して意見を述べる。
本事業は下記のような懸念があり、生物多様性の喪失などの自然環境面での甚大な影響が予測されることから、計画段階環境配慮書段階で計画を中止すべきである。

1.種の保存法の政令指定種イヌワシとクマタカの個体群に影響を及ぼす懸念がある

事業実施想定範囲では、「絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律」(種の保存法)において国内希少野生動植物種に指定されているイヌワシとクマタカの生息が確認されている。イヌワシは国の天然記念物にも指定されており、特に北海道では繁殖状況が厳しく、絶滅のリスクが高い。道南地域の個体群は、個体数が極めて少なく、他地域の個体群とは生息地が分断され孤立している。本事業の遂行は、生息が確認されている同地域のイヌワシの生息環境を脅かし、生息個体を発電施設への衝突事故の可能性にさらすことになり、道南地域のイヌワシ個体群の絶滅に繋がることが強く懸念される。環境省は2021年8月19日に「イヌワシ生息地拡大・改善に向けた全体目標」を発表し、地域ブロックごとのつがい数・繁殖成功率の目標値を設定した。目標値達成にむけた「生息環境改善促進候補地」に北海道の個体群も含まれており、本事業は今後求められるイヌワシの保全の取り組みに逆行するものである。

2.その他の鳥類の生息への影響が懸念される

当該地域はノスリなどの渡り鳥の春季秋季ともに渡りの経路となっている。また事業実施想定範囲は(公財)日本野鳥の会が定めた重要野鳥生息地(IBA)の支笏・洞爺に該当し、さらに、環境省作成の陸域版センシティビティマップにおける注意喚起メッシュ図では、風車の建設には注意を要するエリア(A3)が含まれており、風車によるバードストライクなどによって、野鳥の生息への影響が強く懸念される。このようなことから、本事業実施想定区域からIBAおよび陸域版センシティビティマップのA3のエリアは少なくとも除外するべきである。

3.生物多様性の喪失が懸念される

本事業実施想定区域には、一般社団法人コンサベーション・インターナショナル・ジャパンにより生物多様性の鍵になる地域(KBA)として指定されている支笏・洞爺が含まれている。2030年までに世界の陸域・海域の少なくとも30%を保全・保護することを目指す生物多様性に関する新たな世界目標「30by30(サーティー・バイ・サーティー)」が推進されている中で、計画段階とはいえ、このような生物多様性保全上重要な場所での大規模な開発行為はおこなうべきではない。

4.重要な植物群落、植物種への影響が懸念される

特定植物群落「支笏湖自然林」が事業実施想定区域の半分近い面積を占めている。また事業実施想定範囲には、風力発電機の設置想定範囲の尾根部を中心に植生自然度9のササ-ダケカンバ群落やエゾイタヤ-シナノキ群落などが広範囲に分布し、対象事業実施想定範囲のほぼ全域が保安林に指定されている。美笛峠には車道があり、風力発電機設置想定範囲の稜線を横断して送電線があるものの、風力発電機設置想定範囲である稜線沿いには林道は存在しない。そのため、風力発電機を設置するためには、土地の改変および立木の伐採を伴う工事用道路の新設を大規模に行う必要がある。このような自然度が高く重要な森林群落を広範囲に伐採することは、自然環境保全上、行うべきではない。

5.支笏洞爺国立公園への影響が回避できない

想定区域及びその周辺には、自然公園法に基づき指定された支笏洞爺国立公園が存在しており、さらに当該国立公園内には、利用施設計画に位置付けられたポロピナイ、丸駒温泉、オコタン、美笛の各地区に宿舎、野営場、園地、舟遊場等の利用施設が整備されている。当該国立公園の区域内及びその近傍に風力発電設備等を設置した場合、これらの利用施設及び主要な眺望点から、眺望する際の重大な影響を回避又は十分に低減できない可能性が極めて高い。


以上


2022年6月30日


関西電力株式会社 御中


(仮称)川崎ウィンドファーム事業計画段階環境配慮書に関する意見書


公益財団法人 日本自然保護協会
理事長 亀山 章

日本自然保護協会は、自然環境と生物多様性の保全の観点から、宮城県川崎町で計画されている(仮称)川崎ウィンドファーム事業(事業者:関西電力株式会社、最大総出力: 96,600kW、基数:最大23基)の計画段階配慮書に関して意見を述べる。
本事業は下記のような懸念があり、生物多様性の喪失などの自然環境面での多大な影響が予測されることから、事業計画を中止するか、事業実施想定区域の抜本的な見直しが必要である。

1.種の保存法の政令指定種イヌワシとクマタカの個体群への影響に対する懸念

事業実施想定範囲では、「絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律」(種の保存法)において国内希少野生動植物種に指定されているイヌワシとクマタカの生息が確認されている。イヌワシは国の天然記念物にも指定されており、現在、生息数は400~500羽と推定されているが、年々減少しつつあると考えられている。本事業の遂行は、生息が確認されている同地域のイヌワシの生息環境を脅かし、生息個体を発電施設への衝突事故の可能性にさらすことになり、同地域のイヌワシ個体群の絶滅に繋がることが強く懸念される。環境省は2021年8月19日に「イヌワシ生息地拡大・改善に向けた全体目標」を発表し、地域ブロックごとのつがい数・繁殖成功率の目標値を設定した。本事業は今後求められるイヌワシの保全の取り組みに逆行するものである。

2.鳥類のバードストライクへの懸念

当該地域はノスリやサシバ、ハチクマなどの渡り鳥の渡りの経路となっている。また事業実施想定範囲の、(公財)日本野鳥の会が定めた重要野鳥生息地(IBA)の蔵王・船形に該当し、さらに、環境省作成の陸域版センシティビティマップにおける注意喚起メッシュ図では、風車の建設には注意を要するエリア(A3)が含まれており、野鳥の生息への影響が強く懸念される。風車によるバードストライクなどによって、生存に影響が懸念されることから、本事業実施想定区域からIBAおよび陸域版センシティビティマップのA3のエリアは少なくとも除外するべきである。

3.生物多様性の喪失が懸念される

本事業実施想定区域の大半は、一般社団法人コンサベーション・インターナショナル・ジャパンにより生物多様性の鍵になる地域(KBA)として指定されている蔵王・船形が含まれている。2030年までに世界の陸域・海域の少なくとも30%を保全・保護することを目指す生物多様性に関する新たな世界目標「30by30(サーティー・バイ・サーティー)」が推進されている中で、計画段階とはいえ、このような生物多様性保全上重要な場所での大規模な開発行為はおこなうべきではない。

4.重要な植物群落、植物種への影響への懸念

特定植物群落「蔵王山の植物群落」が事業実施想定区域の高標高域の半分近い面積を占めており、植生自然度9のチシマザサ-ブナ群団となっている。また、対象事業実施想定範囲の半分以上の範囲が保安林に指定されている。本事業実施想定区域には既設の林道は存在しないため、風力発電機を設置するためには、土地の改変および立木の伐採を伴う工事用道路の新設を大規模に行う必要がある。このような自然度が高く重要な森林群落が広範囲に伐採されることは、自然環境保全上、行うべきではない。

5.土砂災害の危険性増大の危惧

事業実施想定範囲の低標高地域から流下する渓流のほとんどが土石流危険渓流に指定されており、特に立野川左岸には土砂災害特別警戒区域が複数分布している。土砂災害が発生した場合、建築物に損壊が生じ、住民の生命に著しい危害が生ずる恐れがあり、一定の開発行為の制限や居室を有する建築物の構造が規制されている。さらには事業実施想定範囲には多数の地すべり地形がみられる。上流部の立石山の尾根上で大規模な土地改変や伐採行為を行うことは、下流部の各渓流での土砂災害リスクを高めることが懸念される。

以上


2022年6月30日

関西電力株式会社 御中

(仮称)古平・仁木・余市ウィンドファーム事業計画段階環境配慮書に関する意見書


公益財団法人 日本自然保護協会 
理事長 亀山 章

日本自然保護協会は、自然環境と生物多様性の保全の観点から、北海道古平町、仁木町、余市町および共和町で計画されている(仮称)古平・仁木・余市ウィンドファーム事業(事業者:関西電力株式会社、最大総出力:268,800kW、基数:最大64基)の計画段階配慮書に関して意見を述べる。
本事業は下記のような懸念があり、生物多様性の喪失などの自然環境面での多大な影響が予測されることから、事業計画を中止するか、事業実施想定区域の抜本的な見直しが必要である。

1.事業実施想定範囲のほぼ全域が自然度9と10のエリアである

事業実施想定範囲には、風力発電機の設置想定範囲の尾根部を中心に植生自然度9のエゾイタヤ-シナノキ群落などが広範囲に分布し、一部の稜線東側の風背斜面には植生自然度10の高径草原群落が分布する。事業実施想定範囲の東寄りのルベシベ山(793.1m)にはマイクロウェーブ波反射板があり、ルベシベ山よりも東の稜線沿いには登山道が存在するが、ルベシベ山の西側には、既設の登山道も林道も存在しない。そのため、風力発電機を設置するためには、工事用道路を新設する必要があり、広範囲の土地の改変および立木の伐採が予想される。事業実施想定範囲は、自然林が広範囲に分布する西側の積丹半島中央部と東側の余市岳との間に位置し、同地域の森林が失われることで、自然林の連続性が失われることが懸念される。
このような自然環境面で重要な森林を広範囲に開発する行為は、自然環境保全上、行うべきではなく、そもそも本地域に建設を計画した事業者の見識が問われる。

2.道指定の余市鳥獣保護区の余市特別保護地区

事業実施想定範囲内には、稲倉石山東側の余市鳥獣保護区および余市特別保護地区が含まれる。鳥獣保護区は鳥獣の保護及び管理並びに狩猟の適正化に関する法律に基づき、鳥獣の保護繁殖を図るために指定される区域であり、特に特別保護地区を事業想定範囲内に含めたことは、自然保護上の問題が大きい。森林に生息する鳥獣の保護を目的とした余市鳥獣保護区および余市特別保護地区を事業実施想定範囲からは除外すべきである。

以上


2022年6月30日


関西電力株式会社 御中

(仮称)小樽・赤井川ウィンドファーム事業計画段階環境配慮書に関する意見書


公益財団法人 日本自然保護協会 
理事長 亀山 章

日本自然保護協会は、自然環境と生物多様性の保全の観点から、北海道小樽市、赤井川村、および余市町で計画されている(仮称)小樽・赤井川ウィンドファーム事業(事業者:関西電力株式会社、最大92,400kW、基数:最大22基)の計画段階配慮書に関して意見を述べる。
本事業は下記のような懸念があり、生物多様性の喪失などの自然環境面での多大な影響が予測されることから、事業計画を中止するか、事業実施想定区域の抜本的な見直しが必要である。

1.計画地の大半を占める自然度9の森林の伐採への懸念

事業実施想定範囲には、風力発電機の設置想定範囲の尾根部を中心に植生自然度9のエエゾイタヤ-シナノキ群落などが広範囲に分布し、対象事業実施想定範囲のほぼ全域が保安林に指定されている。本事業を実施するためには、小樽峠への林道はあるものの、それ以外には既設の林道がほとんど存在しない。風力発電機設置するためには、土地の改変および立木の伐採を伴う工事用道路の新設を大規模に行う必要がある。このような自然度の高い森林の広範囲な伐採行為は、自然環境保全上、行うべきではない。

2.鳥類のバードストライクへの懸念

当該地域はノスリなどの渡り鳥の春季の経路となっている。また表4.3.3-11表(2)の専門家等へのヒアリング結果に示されているように、オジロワシの繁殖やクマタカの生息の可能性がある。風車が建設されればこのような鳥類がバードストライクの危険に晒されることになるため、同地域で事業を計画すべきではない。

3.勝納川への影響への懸念

事業実施想定範囲の北側の勝納川上流の奥沢水源地は小樽市の重要な水源の一つであり、北海道最古の水道用ダムがある。また、奥沢水源地は小樽八区八景に選ばれており、市民のレクリェーションの場として親しまれている。一方で、勝納川は急流河川のため、過去には何度も氾濫を起こしており、特に1962 年の台風9号による氾濫の際には、死者を含む大災害が発生している。本事業実施のために、勝納川の最上流部の水源涵養保安林の指定を解除し、大規模な伐採を行うことは、市民の水源である奥沢水源地への影響だけでなく、勝納川の氾濫リスクを高める可能性があり、保安林を解除しての事業は行うべきではない。

 以上


2022年6月30日


関西電力株式会社 御中


(仮称)夕張ウィンドファーム事業計画段階環境配慮書に関する意見書


公益財団法人 日本自然保護協会 
理事長 亀山 章

日本自然保護協会は、自然環境と生物多様性の保全の観点から、北海道夕張市および栗山町で計画されている(仮称)夕張ウィンドファーム事業(事業者:関西電力株式会社、最大総出力:84,000kW、基数:最大20基)の計画段階配慮書に関して意見を述べる。
本事業の事業実施想定区域の一部である栗山町は「栗山町景観計画」を策定している。同計画では、工作物は周辺の景観から突出しないように、機能上やむを得ない場合を除いて高さ13m以下とし、できる限り目立たない位置に配置することが求められている。また工作物の表面は周囲と調和する目立たない色彩とすることが求められている。本計画で建設予定の風力発電機は4200~6100kW級であり、高さは100mを超える可能性が高い。
栗山町は緩やかに連なる丘陵の森林を背景に、すそ野に美しい田園景観が広がっている。「栗山町景観計画」は、その美しい田園景観を後世に引き継いでいくために策定されたものであり、風力発電機建設が栗山町の田園景観に悪影響を及ぼしてはならない。このようなことから、風力発電機の設置にあたっては、「栗山町景観計画」の指針に最大限配慮して事業を実施すべきである。

 以上

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