みどりの食料システム戦略に関する法律(案)へ提言を提出
公益財団法人 日本自然保護協会は、「みどりの食料システム戦略に関する法律(環境と調和のとれた食料システムの確立のための環境負荷低減事業活動の促進等に関する法律案※1)」に関する提言を農林水産大臣に提出しました。
みどりの食料システム戦略に関する法律制定に向けた提言(PDF/253KB)
主な提言の内容は以下のとおりです。
- 日本の農地の生物多様性が衰退している現状※2,3を踏まえ、本法律の目的や事業内容に「生物多様性の保全」を入れること
- 農林水産業に関わるすべての交付金や補助事業等の受給要件として、本法で創設する環境負荷低減事業活動の認定取得を義務化すること
- 本法の制定にあわせて、環境負荷低減・生物多様性保全の取り組みを推進するための財政支援を大幅に拡張すること
▲棚田の様子(大山千枚田:千葉県)
▲生物多様性及び生態系サービスの総合評価報告書評価結果(環境省2021年)
参考文献
※1 環境と調和のとれた食料システムの確立のための環境負荷低減事業活動の促進等に関する法律案
https://www.maff.go.jp/j/law/bill/208/index.html (旧:持続性の高い農業生産方式の導入の促進に関する法律)
※2 環境省(2021) 生物多様性及び生態系サービスの総合評価 2021 (JBO 3: Japan Biodiversity Outlook 3)
※3 環境省自然環境局生物多様性センター. (2019). モニタリングサイト1000里地調査2005-2017年度とりまとめ報告書.
Retrieved from https://www.nacsj.or.jp/media/2019/11/17887/
2022年2⽉10⽇
みどりの食料システム戦略に関する法律制定に向けた提言
公益財団法人 日本自然保護協会 理事長 亀山 章
日本の農業の生産性や持続性を支える農地の生物多様性は、過去50年の間に大規模な農地整備や農薬・化学肥料の不適切な使用、伝統的な管理の放棄等の影響によって顕著に衰退しています(環境省2021)。農林水産省は2021 年5月に「みどりの食料システム戦略」を公表し、2050年までに耕地面積に占める有機農業の取組面積の割合を 25%(100 万 ha)に拡大する等の意欲的な目標を示しています。しかし、この戦略では農地の生物多様性の保全という観点が不十分であり、持続可能な農業の土台を支える生物多様性の衰退が続くことが懸念されます。現在、みどりの食料システム戦略に関連して「環境と調和のとれた食料システムの確立のための環境負荷低減事業活動の促進等に関する法律」の制定にむけた動きが進んでおりますが、上記の問題意識から、この法律の制定において盛り込むべき下記の事項を提言します。
記
- 日本の農地の生物多様性が衰退している現状を踏まえ、本法の目的に「生物多様性の保全」を明確に含める必要がある。さらに、法律の名称にある「環境と調和のとれた食料システム」の定義の中に、環境負荷低減だけでなく、生物多様性保全に積極的に貢献する持続的な農業を含むべきである。
- 本法で創設する認定制度の対象となる「環境負荷低減事業活動」として、土づくりや化学農薬・化学肥料の低減、温室効果ガス削減が含まれているが、この中に「生物多様性・生態系保全活動」を追加すべきである。
- 農林水産業に関わるすべての交付金や補助事業等の受給要件として、本法で創設する認定の取得を義務化すべきである。このことにより、多くの農家が本法の認定を取得し、さらには日本の農業全体を持続的な農業へと転換することが期待できる。
- 農地の生物多様性の保全のためには、本法の制定にあわせて、環境負荷低減・生物多様性保全の取り組みを推進するための財政支援を大幅に拡張する必要がある。
以上
引用文献 環境省(2021) 生物多様性及び生態系サービスの総合評価 2021 (JBO 3: Japan Biodiversity Outlook 3)