「(仮称)美浜新庄ウィンドファーム発電事業」の環境影響評価方法書に関する意見書を提出いたしました
日本自然保護協会(NACS-J)は、福井県三方郡美浜町で計画されている(仮称)美浜新庄ウィンドファーム発電事業について、自然環境に重大な影響を与えることが予測されるため中止すべきとして、事業者の株式会社グリーンパワーインベストメントに意見を出しました。
また、環境影響評価方法書に示された以下の調査は、影響評価として不十分な内容であることから、調査方法の見直しについて意見を出しました。
「(仮称)美浜新庄ウィンドファーム発電事業」の環境影響評価方法書に関する意見書(688KB/PDF)
2021年3月3日
株式会社グリーンパワーインベストメント 御中
(仮称)美浜新庄ウィンドファーム発電事業
環境影響評価方法書に関する意見書
〒104-0033 東京都中央区新川1-16-10 ミトヨビル2F
公益財団法人 日本自然保護協会 理事長 亀山 章
(仮称)美浜新庄ウィンドファーム発電事業の実施区域は、種の保存法の指定種であるクマタカ、イヌワシの生息確認区域であるとともに、希少猛禽類のサシバ、ノスリ、ハチクマの「渡りの経路」上に位置している。さらに、日本海型のブナ林やカツラやサワグルミの渓畔林が広範囲でみられる福井県嶺南地域で自然度の高い地域である。本事業が自然環境に重大な影響を与えることは明白であり、予防原則に従い本事業は実施すべきではない。
なお、本方法書に示された調査方法は、本事業の影響を評価するには以下の点において不十分であることから、調査方法の見直しが必要である。
1)種の保存法の指定種クマタカとイヌワシの生息調査
対象事業実施区域ではクマタカのペアが複数確認されているとともに、イヌワシの飛翔も確認されている。クマタカは表6-2の専門家の指摘にあるように、周辺区域に複数のペアが繁殖している可能性が高く、この地域におけるクマタカの生息に対する影響が強く懸念される。そのため、事業者は事業によるクマタカの繁殖等生息への影響を回避・低減する観点から、環境省「猛禽類保護の進め方(改定版)」にしたがって繁殖成功年を含めた2営巣期以上の調査を行い、行動圏の内部構造を適切に評価すべきである。
2)サシバ等希少猛禽類の渡りの経路への影響調査
対象事業実施区域および周辺地域は猛禽類のサシバ、ノスリ、ハチクマの「渡りの経路」上にあたる。サシバの春と秋の渡りは、概ね4週間程度見られ、1日に渡る個体数は、台風等の天候状況に大きく左右される。そのため、調査期間を「2月、3月、4月、5月及び9月、10月の実施とし、各月3日間実施する」としているのは調査努力量として不足している。少なくとも、複数年実施することとし、過去のこの地域の渡りの観察記録からピーク時期を把握し、そのピーク時期を中心として各期にそれぞれ 14 日間程度の調査期間を確保することが、渡りルートの重要性を評価するために不可欠である。
3)自然度の高い植生の調査
対象事業実施区域は植生自然度8および9の自然度が高い植生が多く占め、特に、北側には福井県嶺南地域で最大面積の日本海型ブナ林が広範囲に分布している。本事業では尾根上での風力発電施設の設置や、新設および拡幅される林道によって、伐採を伴う大規模な環境改変が予想される。その影響予測には、目視観察と植物社会学的植生調査だけでは不十分である。また、対象事業実施区域にはブナの大径木がまとまって存在し、一部の尾根上には風衝的な植生が存在する。ブナ林を伐採した場合、伐採した樹木個体の喪失だけでなく、林冠構造の変化による環境の変化にともなって周辺の森林にも大きな影響が及ぶ可能性がある。どのような変化が起こるかを推定するためにも、改変予定区域の周囲で毎木調査を行い、伐採による直接的および間接的な影響の評価を行う必要がある。
以上