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アマミホシゾラフグを瀬戸内町の天然記念物に指定することを求める要望書を提出しました

2021.01.27
要望・声明

1995年、奄美大島の海に不思議な形をした模様が作られることが発見されました。この直径約2メートルの「海底のミステリーサークル」の正体は暫く謎でしたが、2011年に、わずか体長10cmほどのアマミホシゾラフグが作る、産卵床であることがわかりました。

しかし、アマミホシゾラフグは発見例が少なく、生態はまだ解明の途上にある、世界的にも希少価値が極めて高い生き物です。

日本自然保護協会(NACS-J)は他団体とともに、アマミホシゾラフグを瀬戸内町の天然記念物として、同じく近年発見された周辺海域の貴重なサンゴ類とともに、積極的に保護することを求める要望書を提出いたしました。

アマミホシゾラフグを瀬戸内町の天然記念物に指定することを求める要望書(PDF/251KB)

ミステリーサークル(写真:マリンステイション奄美)▲アマミホシゾラフグが作る海底のミステリーサークル(写真:マリンステイション奄美


2020年12月28日

瀬戸内町教育委員会
教育長 中村 洋康 様

アマミホシゾラフグを瀬戸内町の天然記念物に指定することを求める要望書

海を守る会
代表 祝 隆之

奄美の自然を守る会
代表 杉岡 秋美

公益財団法人 日本自然保護協会
理事長 亀山 章

私たちは奄美群島の生物多様性豊かな自然環境の保全に取り組んでおり、その立場からアマミホシゾラフグ(Torquigener albomaculosus)を瀬戸内町の天然記念物に指定していただくことを要望いたします。

奄美大島の海に不思議な形をした模様が作られることが発見されたのは1995年でした。直径約2メートルほどのその模様は、迷路模様の中心部とその周りの放射状の溝からなる極めて幾何学的な形状から「海底のミステリーサークル」と呼ばれるようになりました。

2011年にこの模様を作っているのが、体長10cmのアマミホシゾラフグであり、また作られているものの正体が産卵床であることがわかりました。最近になりオーストラリアでは水深100mの深さでフグが類似の産卵床を作ることが分かりました。アマミホシゾラフグの標本が沖縄の浜比嘉島で採取された例はあるものの、生きている姿が記録されているのは奄美大島周辺のみであり、なかでも大島海峡での発見例が多いです。しかしながら発見された例が少なく、まだその生態は解明の途上にあります。

一方で、奄美大島周辺海域自体の生物多様性が高いこと、なかでも大島海峡の持つ生物多様性がとりわけ豊かであることが近年明らかになってきています。この海域では2018年にはアミトリセンベイサンゴの北限の分布が確認され、2020年11月にはツツナガレハナサンゴとツツコエダナガレハナサンゴが国内で初めて記録され、オオナガレハナサンゴが琉球列島で初めて記録されました。

いずれのサンゴもIUCN(国際自然保護連合)が定めるレッドリストおよび環境省が定める海洋生物レッドリストに掲載されている希少な種です。その他、大島海峡にのみ記録があるスツボサンゴツノヤドカリや2020年12月発見された新種のホコサキキララハゼなど新たな生物種の発見が相次ぎ、この海域の生物多様性の高さを示しています。

奄美大島のアマミホシゾラフグは世界的にも貴重で普遍的な価値を持っており、周辺海域で近年発見された貴重なサンゴ類とともに保護すべき価値が極めて高いものです。また、アマミホシゾラフグを天然記念物として保全し調査研究を進めていくことは、将来、貴重な観光資源となり、大島海峡の特性を全国にアピールすることにもつながり、貴町の地域振興に貢献する可能性があります。

 
以上の理由から、アマミホシゾラフグを天然記念物として早期に積極的に保護し、次世代へ引き継ぐことを要望いたします。

 

参考文献

1)Kawase, H.,Okata,Y.,Ito,K.(2013) Role of Huge Geometric Circular Structures in the Reproduction of a Marine Pufferfish.SCIENTIFIC REPORTS, 3 : 2106

2)Matsuura,k (2014) A new pufferfish of the genus Torquigener that builds ‘‘mystery circles’’ on sandy bottoms in the Ryukyu Islands, Japan (Actinopterygii: Tetraodontiformes: Tetraodontidae)

3)Kawase,H.,Okata,Y.,Ito,K.,Ida,A(2015) Spawning behavior and paternal egg care in a circular structure constructed by pufferfish, Torquigener albomaculosus (Pisces: Tetraodontidae)Bull Mar Sci. 91(1):000–000. 2015

4)T.Fujii (2016) A hermit crab living in association with a mobile scleractinian coral, Heteropsammia cochlea.Mar Biodiv DOI 10.1007/s12526-016-0505-2

5) 園山貴之、荻本啓介、石橋敏章 、須田有輔、青沼仁志、松浦啓一(2018)沖縄島東岸の浜比嘉島から得られたアマミホシゾラフグの記載と飼育下での行動.魚類学雑誌 DOI: 10.11369/jji.17–040

6)藤井琢磨、立川浩之、横地洋之(2018)アミトリセンベイサンゴLeptoseris amitoriensis(イシサンゴ目ヒラフキサンゴ科)の奄美大島からの記録. タクサ 日本動物分類学会誌. 44: 52–57

7)Todd Bonda,b*, Robert J. Muellerc、 Matthew J. Birtd、 Jane Princea,b, Karen Millerd, Julian C. Partridgeb、Dianne L. McLean(2000)Mystery pufferfish create elaborate circular nests at mesophotic depths in Australia. doi: 10.1111/jfb.14506

8)Fujii,T., et al.(2020) New Distributional Records of Three Species of Euphylliidae (Cnidaria, Anthozoa, Hexacorallia, Scleractinia) from the Ryukyu Islands, Japan
Species Diversity 25: 275–28

9) 南海日日. 2020年12月19日. 北半球初記録のハゼ確認 鹿児島大学


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