ラムサール条約国別報告書(案)に対する意見を提出しました
ラムサール条約は、特に水鳥の生息地として国際的に重要な湿地とそこに暮らす生物の保全を目的とする条約です。 保護地域に関する条約はいろいろありますが、ラムサール条約が対象にしている湿地は、とても広範囲で、水田や河川・湖など人々の生活・生存を支える上でも重要な環境が多く含まれていることから、「賢明な利用」という概念を掲げている条約です。
この度、環境省が2021年11月に中国で開催されるラムサール条約第14回締約国会議に提出する国別報告書の作成に当たり意見募集(パブリックコメント)を行っていたため、NACS-Jは意見を出しました。 NACS-Jの意見にもあるように、まだまだ改善すべき点は多くあるので、改善されるようみんなで注目していきたいと思います。 あなたの身近な湿地にもかかわる記載があるかもしれません。ぜひご覧になってみてください。
ラムサール条約国別報告書(案)に対する意見(PDF/595 KB)
2020年12月9日
公益財団法人日本自然保護協会
ラムサール条約国別報告書(案)に対する意見
[意見]
該当箇所 |
Target 5, p.19, 5-7 |
意見要約 |
中池見に横断的な管理委員会はない |
意見および理由 |
保全に関わる地元NPOよりヒアリングした。「委員会がある」とどのように把握したのか教えてほしい。 |
該当箇所 |
Target 8, p23, 8-5 |
意見要約 |
「過去3年で、全体的に湿地の状態は変化したか」a)ラムサール条約登録湿地について |
意見および理由 |
「O-変化なし」ではなく「N=悪化した」が適当であると考える。 根拠となる出典等 |
該当箇所 |
Target 8, p23, 8-5 |
意見要約 |
「O-変化なし」ではなく「N=悪化した」が適当であると考える。辺野古・大浦湾は、沖縄のサンゴ礁では珍しい大きく深い湾があり多様な湿地環境を有する。重要湿地500、沖縄県の自然環境保全の指針ランクIに指定され、沖縄島周辺最大規模の海草藻場、絶滅危惧種や新種が多く棲息し、4ページGの「海洋生物多様性の保全を着実に推進すること」にも大きく関連する。しかし大規模な埋め立て計画で危機に瀕しており、この事実を報告書に記載すべきである。 |
意見および理由 |
辺野古・大浦湾はその沖縄のサンゴ礁では珍しい大きく切れ込んだラッパ状の深い湾を有する特徴的な地形を持つ。沖縄島周辺最大の規模の海草藻場を持ち、ジュゴンをはじめとする多くの絶滅危惧種が棲息し、近年になり新種や国内初記録の生物種が発見されている。重要湿地500に含まれる場所であり、沖縄県自然環境の保全に関する指針ランク(自然環境の厳正な保護を図る区域)に指定されている。 根拠となる出典等 |
該当箇所 |
Target 8, p23, 8-5 |
意見要約 |
沖縄県・泡瀬干潟は、日本の代表的なサンゴ礁干潟で、絶滅危惧種が多く棲息し、渡り鳥が利用する。重要湿地500、沖縄県の自然環境保全の指針ランクIである。生物や地形の多様な環境だが埋め立てが進行中で貴重な生態系が損なわれつつあり、この事実を報告書に記載すべきである。 |
意見および理由 |
日本の代表的なサンゴ礁干潟であり、かつては沖縄島周辺で2番目の面積の海草藻場が広がっていた。多くの絶滅危惧種が棲息し、渡り鳥が利用している。海草とヒメマツミドリイシが共生する、珍しい海域もある。この場所は重要湿地500に含まれており、沖縄県自然環境の保全に関する指針ランクI(自然環境の厳正な保護を図る区域)に指定されている、生物や地形の豊かな多様な環境である。埋め立てが進行中で貴重な生態系が損なわれつつある。国別報告書に記入すべきである。 根拠となる出典等 |
該当箇所 |
Target 8, p23, 8-5 |
意見要約 |
2011年以来、東北や中部(静岡県など)、南西諸島など日本各地で復旧工事や防災の目的で巨大防潮堤や護岸が建設されている。砂浜の幅は1950年と比べると狭くなってきており、最も厳しい条件では21世紀末には砂浜消失という予測もある(有働、2014)。日本全国の砂浜の詳細について調査はなされていないものの、現状把握すら十分行われる前に消失の危機にあることを記載するべきである。 |
意見および理由 |
根拠となる出典等 |
該当箇所 |
Target 13, p35-36 |
意見要約 |
日本では海岸法は環境影響評価法の対象になっていないため、大規模な防潮堤建設などの計画があっても環境影響評価がなされていないことを明記するべきである。 |
意見および理由 |
根拠となる出典等 |
該当箇所 |
Target 13, p36 |
意見要約 |
環境影響評価法が改正され、計画段階からの検討が始まったが、事業を前提とした手続きであることに変わりはなく、戦略的環境影響評価手法の適用とは言い難い現状であることを明記すべきである。 |
意見および理由 |
環境影響評価法が改正され、戦略的環境影響評価手法を取り入れるための検討がなされて、配慮書手続きが加わり、計画段階から検討されるようになったのは事実である。しかし、事業者自身による影響評価手続きであり、保全のための措置が限定的であることに変わりはなく、戦略的環境影響評価手法とはいえないのが実態である。 根拠となる出典等 |
該当箇所 |
Target 16.8, p41 |
意見要約 |
2014年から毎年、サンゴの日(3月5日)前後の2週間をサンゴ礁ウィークとし、沖縄県サンゴ礁保全推進協議会では、沖縄を中心とする全国各地の市民団体や研究者などが「サンゴ礁ウィーク」としてサンゴ礁の観察会、学習会、シンポジウム、写真展などのイベントを20-30回開催している。 |
意見および理由 |
沖縄県サンゴ礁保全推進協議会 サンゴ礁ウィーク |
該当箇所 |
セクション5 p.51-54 |
意見要約 |
各ラムサール条約湿地の評価は、各湿地の保全に関わる市民団体や自治体へのアンケートなどにより事実にもとづく情報で評価してください。 |
意見および理由 |
現在は国定公園の管理計画や、各湿地の保全計画があるかで環境省で機械的に判断していると聞いている。そのため現状に即したものになっていない可能性がある。 |
参考
環境省報道発表資料 令和2年11月13日 ラムサール条約実施に関する国別報告書(案)に対する意見の募集について
ラムサール条約実施に関する国別報告書(案)に対する意見の募集(パブリックコメント)について(※外部サイトに移動します。)
ラムサール条約COP14 ラムサール条約国別報告書(案)(※外部サイトに移動します。)