「(仮称)那賀・海部・安芸風力発電事業に係る環境影響評価方法書」に関する意見を提出しました
本事業の計画地は、四国のツキノワグマの生息地に隣接する自然度の高い森林が分布する場所です。
また、希少猛禽類のサシバ等の渡りルート上にも位置しています。予防原則に従い、本事業は実施するべきではないと考えています。
「(仮称)那賀・海部・安芸風力発電事業に係る環境影響評価方法書」に関する意見(PDF/178KB)
2020日自然第40号
2020年12月17日
「(仮称)那賀・海部・安芸風力発電事業に係る環境影響評価方法書」に関する意見
公益財団法人日本自然保護協会
理事長 亀山章
本事業の計画地には、四国でわずかに残された、この地域本来の自然度の高い森林がある。また、計画地は、四国で絶滅の危機にあるツキノワグマの生息地に隣接している。さらに、希少猛禽類のサシバとノスリの「渡りルート」上に位置しており、四国および日本の生物多様性保全において極めて重要な自然環境である。本事業が自然環境に重大な影響を与えることは明らかであり、予防原則に従い本事業は実施すべきではない。
本方法書に示された調査方法は、本事業の影響を評価するには以下の点において不十分であることから、調査方法の見直しを求める。
1)ツキノワグマへの影響を評価する調査
四国のツキノワグマは現時点で推定生息数16~24頭であり極めて危機的な状況にある。本事業地は現在確認されているツキノワグマ生息地に隣接しており、四国でツキノワグマを絶滅させないために不可欠な自然環境として位置づけられる。
本事業の影響を正確に評価するためには、①ツキノワグマの主要な餌資源であるブナ、ミズナラ、クリ、コナラについて、事業地内の土地改変予定地における全分布を把握し、消失する餌資源量を把握することが必要である。また、②カメラトラップにおける生息分布調査も、個体数が極めて少ない状況と、私たちの2017~19年の3年間の調査経験から、調査期間は少なくとも3年間実施しなければ正確な分布を把握することはできないと考えられることから、調査期間は3年間に延長が必要である。
2)サシバ等猛禽類の渡りルートへの影響について
本事業地はサシバをはじめとする猛禽類の「渡りルート」として極めて重要である。渡りルートは地形や天候等によりコースや幅が変化することから、センシティビティマップには主なルートのみが示されている。したがって、「渡りルート」は保全上極めて重要なルートと認識するべきである。
サシバの春と秋の渡りは概ね4週間程度見られ、1日に渡る個体数は、台風等の天候状況に大きく左右される。そのため、調査期間を「春季(3~5月)及び秋季(9~11月)に各期2回3日程度」としているのは調査努力量として非常に不足している。少なくとも、複数年実施することとし、過去の四国地域の渡りの観察記録からピーク時期を把握し、そのピーク時期を中心として各期にそれぞれ14日間程度の調査期間を確保することが、渡りルートの重要性を評価するために不可欠である。
以上
「(仮称)那賀・海部・安芸風力発電事業に係る計画段階環境配慮書」および「(仮称)那賀・勝浦風力発電事業に係る計画段階環境配慮書」に対する意見書を提出(2020年6月)