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普天間飛行場代替施設建設事業の工事停止と環境調査の実施に関する要望書を提出しました

2020.09.24
要望・声明

16日に菅新内閣が発足したことを受け、日本自然保護協会(NACS-J)は、4団体と合同で、改めて普天間飛行場代替施設建設事業の工事停止と環境調査の実施に関する要望書を日本政府に提出いたしました。

世界的にも認められた生物多様性豊かな辺野古・大浦湾一帯の自然を守るべき理由と共に、軟弱地盤の改良に必要な大量の土砂の持ち込みに関する、公有水面埋立変更承認申請書の問題点を指摘いたしました。

普天間飛行場代替施設建設事業の工事停止と環境調査の実施に関する要望書(PDF/203KB)


2020年9月24日

内閣総理大臣   菅   義偉  様
内閣官房長官   加藤  勝信  様
防衛大臣     岸   信夫  様
環境大臣     小泉  進次郎 様
農林水産大臣   野上  浩太郎 様
沖縄・北方担当大臣 河野  太郎 様
沖縄防衛局長   田中  利則  様

公益財団法人 日本自然保護協会
理事長  亀山 章

認定特定非営利活動法人 国際環境NGO FoE Japan

美ら海にもやんばるにも基地はいらない市民の会

辺野古・高江を守ろう!NGOネットワーク

海の生き物を守る会

普天間飛行場代替施設建設事業の工事停止と環境調査の実施に関する要望書

私たちは、沖縄の生物多様性豊かな自然環境の保全に取り組んでいる立場から、以下の理由にもとづいて普天間飛行場代替施設建設事業の工事の停止と環境調査の実施を要望する。

この海域では、環境影響評価後に、事業を実施する海域で新種や日本初記録種の生物の発見、サンゴ礫が付着して成長する珍しい長島の鍾乳洞などの数々の新たな発見があり(日本自然保護協会、2014)、日本生態学会をはじめとする19学会から日本政府あてに「著しく高い生物多様性を擁する沖縄県大浦湾の環境保全を求める19学会合同要望書」(2014)が出されて、2019年には米国NGOミッションブルーによりホープスポットに認定されるなど生物多様性が豊かであることが証明されている。

現在、公有水面埋立変更承認申請書の告示・縦覧が行われているが、この申請書には以下に記すように多くの不備がある。

第一の問題は、絶滅危惧種であり国の天然記念物であるジュゴンに対する扱いである。環境影響評価の際にはジュゴンに影響を与えないということが保全措置としてあげられていた。現在は沖縄島東海岸に棲んでいたジュゴン2頭が行方不明となり、昨年12月に国際自然保護連合(IUCN)によるレッドリストにて南西諸島ジュゴン個体群に「近絶滅」の評価が下されるという結果につながった。また最近になりジュゴンの音声らしき音が計198回記録されているが人工物が風の影響を受けて出している音かジュゴンの鳴音かすらいまだに判明していない。これは、ジュゴンに「影響なし」と予測評価した防衛局の環境アセス(2012年)と相反するものであり、環境アセスの不備を如実に反映している。

第二の問題には、第一とも関連するが、これまでの工事や作業の影響が科学的に検証されていないことである。多数の船舶が継続的に航行することに伴う騒音等の影響、護岸設置や大型のコンクリートブロックが300個近く海に沈められたことによる海流の変化、問題の多い方法でのサンゴや海草の移植、貝類や甲殻類の移動などこれまで進められてきたことが生態系に及ぼす影響が科学的に検証されていない。

また土砂投入に伴う水質の劣化、騒音の影響などこれまで継続的に海の生き物へストレスを与えてきた累積的影響が科学的に検証されていない。例えば水の濁り自体は低濃度であっても、その影響が累積することにより、サンゴなどの生物の生存に影響が及ぶ可能性がある。同様に、一定以下の音量でもその影響が累積することによりジュゴンなどの生物に影響が及ぶ可能性がある。

第三の問題は、埋め立て土砂の調達予定地である。今回の申請では当初は予定になかった八重山諸島などの離島からも土砂が調達可能かどうかが検討されている。土砂の移動に伴う問題の1つは外来種侵入のリスクが増えることである。2016年に世界最大の自然保護団体であるIUCNから日本政府に出された勧告では「明確な生物地理学的な区域を超えた物資の移動は外来種の侵入のリスクを高める」ことに注意するようにと書かれている。沖縄県は県外からの土砂の移動を埋立土砂条例にて規制しているが、「県境」は人間の都合で作られているものである。事業者が八重山諸島や南大東島などから調達すれば県条例の対象からは免れるかもしれないが、沖縄島とは異なる自然を持つ島々からの調達は外来種侵入のリスクを高めるものである。

土砂移動に伴う第三の問題には、土砂採取地の自然破壊がある。1つ1つの採石場の規模は環境アセスメントにかける規模ではないこと、そして採石業者が環境破壊の責任を取ることとされているため、大量の土砂を取られる場所への影響を考慮しなくても工事は進められることになる。沖縄の脆弱な島嶼生態系への影響は甚大であると考える。

さらには、今回の申請には軟弱地盤をどのように改良するのか工法など詳細が書かれていない。世界で前例のない工事であり7万本以上となる大量の砂杭を用いて改良すると報道されていたが、本申請書には杭の規模も本数も工程も記載がなく、重大な欠陥である。

上記のことから、日本政府は工事を一時停止し、再度の環境調査及び科学的検証を行うことを要望する。

 

資料:

辺野古/環境アセス後に判明した新たな事実を発表します(日本自然保護協会、2014)
https://www.nacsj.or.jp/archive/2014/07/523/

「著しく高い生物多様性を擁する沖縄県大浦湾の環境保全を求める19学会合同要望書」(19学会、2014)
https://www.esj.ne.jp/esj/Activity/2014Ohura.pdf


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