日本初Hope Spot認定を受けて、 沖縄県に一歩踏み込んだ保護を要望しました
2019年10月27日に、辺野古・大浦湾一帯がホープスポット(Hope Spot:希望の海)に認定されました。
ホープスポットは、米国NGOミッションブルーによるプロジェクトで、100カ所以上が認定されていますが、日本では初となりました。対象範囲は、辺野古・大浦湾を中心にした天仁屋から松田までの44.5平方キロメートルの海域です。
今回、辺野古・大浦湾の生物多様性や地形の豊かさが改めて世界に認められたのですが、埋め立て工事による自然破壊も進んでいます。そこで、工事の影響がホープスポットに認定された工事の周辺海域にまで及ばないよう沖縄県による一歩踏み込んだ保護を要望する3本の意見書を提出しました。
沖縄県知事宛 要望書
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大浦湾チリビシのアオサンゴ群集について
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長島の洞窟について
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辺野古・大浦湾について
Hope Spotの認定についてはこちら
ホープスポットに関する詳しい解説、資料を掲載しています。
日本で初のHope Spotに辺野古・大浦湾一帯が認定されました!(2019.10.27)
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日本初認定!「辺野古・大浦湾 ホープスポット」〜希望の海のサポーターになろう!〜
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辺野古〜ジュゴン生息海域の海を基地建設による破壊から守る(ネット募金)
2019年10月29日
沖縄県知事 玉城デニー様
大浦湾チリビシのアオサンゴ群集について
沖縄県による天然記念物指定を求める要望書
公益財団法人 日本自然保護協会
理事長 亀山 章
ジュゴンの里
代表 東恩納 琢磨
私たちは辺野古・大浦湾の生物多様性豊かな自然環境の保全に長期にわたり取り組んできました。このたび、米国NGOミッションブルーにより辺野古・大浦湾一帯がホープスポット(Hope Spot:希望の海)に認定されました。対象範囲は、辺野古・大浦湾を中心にした天仁屋から松田までの44.5平方キロメートルの海域です。認定のポイントの1つが世界的にも貴重で普遍的な価値を持つチリビシのアオサンゴ群集であったことを踏まえて、改めてチリビシのアオサンゴ群集の天然記念物指定を要望いたします。
2007年9月に発見された名護市大浦湾のチリビシのアオサンゴ群集は、長さ50メートル、幅30メートル、高さ14メートルに達するもので、単一の種からなるサンゴ群集がこのような規模になるのはこれまで報告例がなく、大変貴重なものです。
滝野ら(2008)の研究によると、チリビシのアオサンゴ群集の遺伝子型と石垣島・白保のアオサンゴ群集の遺伝子型は異なり、またこの群集は全体が同じ遺伝子型であり、性別が雄である(山城、2015)ということが明らかになりました。2017年12月には新たに、最新の遺伝子解析の結果が判明し、同群集は勝連半島のアオサンゴ群集と異なる遺伝子型であることがわかりました。同じ沖縄島周辺に位置する勝連半島のアオサンゴ群集とも遺伝子型が異なるということは、大浦湾に存在するものがかけがえのない唯一無二のものであることが示唆されます。
2016年以降、夏になると気候変動の影響で、サンゴの白化が広範囲に起こり、大浦湾一帯のサンゴ群集は大きな影響を受けました。チリビシのアオサンゴ群集も白化しましたが、秋には無事にもとの状態に戻りました。しかし同じ海域で大規模な工事が進み気候変動も激しくなるなか、いつまでも健全な状態を保てる保証はありません。
唯一無二のこのアオサンゴを天然記念物として保全していくことは、将来的に観光資源としても有益であり、辺野古・大浦湾一帯の特性を全国にアピールすることにもなります。天然記念物として早期に積極的に保護し、次世代へ引き継ぐことを要望いたします。
<参考資料>
- 「沖縄島・大浦湾におけるアオサンゴ群集 合同調査レポート(速報)~生物多様性豊かな辺野古・大浦湾の海~」 日本自然保護協会・WWF ジャパン・国士舘大学地理学研究室・沖縄リーフチェック研究会・じゅごんの里、2008年7月発行
- 「Verdant seas」The Daily Yomiuri.2008年7月22日
- 「大浦湾生き物マッププロジェクト報告書」. 沖縄リーフチェック研究会.2009年3月5日発行
- 「辺野古・大浦湾 アオサンゴの海 生物多様性が豊かな理由 ―合同調査でわかったこと―」.日本自然保護協会・WWFジャパン.2009年4月発行
- 「特集 大浦湾の海 大浦湾を識る」月刊『地図中心』通巻442号財団法人日本地図センター、2009年7月10日発行
- 滝野 功ら(2008)「石垣島東海岸と本島大浦湾におけるアオサンゴ群集の地形的・遺伝的特性の把握」. 第10回日本サンゴ礁学会講演要旨集 p92
- Yasuda et al (2012).Large-scale mono-clonal structure in the north peripheral population of blue coral, Heliopora coerulea. Marine Genomics.
- Yasuda et al (2014). Genetic structure and cryptic speciation in the threatened reef-building coral Heliopora coerulea along Kuroshio Current. Bulletin of Marine Science.
- 山城秀之(2015)名護市大浦湾のアオサンゴ群落の保全に向けた生殖等の基礎調査.pro naturaニュース.No25.p7.公益財団法人自然保護助成基金.
- 希少アオサンゴ確認.琉球新報.2017年12月7日
別種のアオサンゴか.東京新聞.2017年12月17日
辺野古アオサンゴ、「遺伝的に独立」日本自然保護協会など、保護訴え.2018年1月22日.朝日デジタル
2019年10月29日
沖縄県知事 玉城デニー様
長島の洞窟について
沖縄県による現地調査および天然記念物指定を求める要望書
公益財団法人 日本自然保護協会
理事長 亀山 章
私たちは日本の生物多様性豊かな自然環境の保全に長期にわたり取り組んできました。このたび、米国NGOミッションブルーにより辺野古・大浦湾一帯がその生物や地形の多様性が認められ、ホープスポット(Hope Spot:希望の海)に認定されました。対象の範囲は、辺野古・大浦湾を中心にした天仁屋から松田までの44.5平方キロメートルの海域です。この機会に、改めて長島の洞窟の現地調査および天然記念物指定を要望いたします。
名護市辺野古崎沖に位置する長島の洞窟の存在は、地元の人々には知られたことでしたが、その貴重さはよく知られていませんでした。藤田喜久氏(沖縄県立芸術大学)は2014年にその洞窟内で、サンゴ礫が付着した鍾乳石があることを確認しました。日本自然保護協会がその写真を鍾乳洞などのカルスト地形の専門家である浦田健作氏(九州大学/日本洞窟学会元会長)に提供したところ、「このように石筍にサンゴ礫が付着して成長した鍾乳石は珍しく、日本での報告例はない」ことと、より詳細な調査の必要性が指摘されました。
その後、米軍普天間飛行場代替施設建設に伴い、沖縄防衛局により長島への立ち入りが制限されたため、日本自然保護協会は6回にわたり洞窟の専門家による調査のための上陸を沖縄防衛局に申請してきましたが、回答をいただけない状態が続いていました。
2018年8月31日からの公有水面埋立承認撤回に伴う工事の停止を受け、日本自然保護協会は辺野古海域において複数分野の緊急調査を実施しました。長島の洞窟については、9月の2日間の調査では、サンゴ礁地理学・地形学を専門とする中井達郎氏(国士舘大学)には洞窟内を観察して地形や堆積物の状況を記録していただきました。前出の藤田喜久氏(沖縄県立芸術大学)には、同島の甲殻類相調査の際に、洞窟の簡易な測量を行い、その平面的形状と断面的形状の概要を明らかにしていただきました(中井・藤田、2018)。さらに、10月27日と29日には、前述のカルスト地形の専門家である浦田健作氏(九州大学/日本洞窟学会元会長)にこの洞窟の正確な測量などの調査をしていただきました。
これらの調査から、この洞窟は、国または県の天然記念物に指定するに値する高い学術的価値があることが推察できました。洞窟の規模は小さいものの多様な鍾乳石が見られること、人の立ち入りなどでそれが破損されていない状態にあることは、洞窟が多数ある沖縄県の中できわめて珍しい状況であること、サンゴ礫が付着して成長している石筍は現在も形成中の非常に新しいものであること、鍾乳洞内に鍾乳石に覆われたビーチロックやサンゴ礫などが存在し、海からの影響も受けている学術的に珍しい状態であること等がわかりました。鍾乳石の年代測定も行っています。
しかしながら、洞窟の測量の過程で確認された最奥部についての詳細測量、洞窟に流れ込んでいる地下水の化学分析、鍾乳石をつくる地下水をもたらしている島の陸上部の地質や植生は調査ができていません。また隣に位置する平島も海沿いに多くの洞窟を有しており、2018年の緊急調査時に船から鍾乳石があることを確認できたことから、平島についても上陸調査を行うことで、長島と平島の関連や、辺野古周辺の地域の数万年から十数万年にわたる海面変動に関連した自然史を解明できる可能性につながります。これらの解明には、洞窟の専門家が再度上陸しての調査が必要です。
一般にこのような洞窟には光が乏しいことから、真洞穴性や好洞穴性生物などの特殊な環境に適応した生物が生息していることが知られています。長島や平島は他所から地理的に隔離されているため、洞窟や島全体に固有種なども含む特異な生物群集が存在している可能性が考えられ、詳細な生物調査も必要です。
長島は米軍普天間飛行場代替施設建設事業予定地の近くに位置しているため、工事の影響や、潮流の変化による影響を受ける可能性があり、また地球規模で起こっている気候変動による海面変動の影響も考えられます。
洞窟をはじめとする辺野古・大浦湾の自然は沖縄県の大切な財産です。沖縄県がこれらの洞窟を有する長島と平島を調査し、保護していくことを以下のように要望いたします。なお調査の際に日本自然保護協会も同行させていただけますと幸いです。
- 沖縄県が浦田健作氏をはじめとする洞窟分野の専門家に長島および平島の洞窟および周辺環境の調査を依頼して実施すること
- 沖縄県が藤田喜久氏をはじめとする生物分野の専門家に長島および平島の洞窟および周辺環境の調査を依頼して実施すること
- 1と2の調査結果をもとに沖縄県の天然記念物に指定すること
参考資料:
日本自然保護協会(2014 年)記者会見資料. 沖縄・辺野古/ジュゴンの新たな食痕、わずか 2 ヶ月で 110 本以上の記録、日本初のサンゴ礫付着成長の鍾乳石が発見されました!
http://www.nacsj.or.jp/archive/files/katsudo/henoko/pdf/20140709henokokaikensiryo_0715kaitei.pdf
琉球朝日放送(QAB)2014 年 7 月 15 日放送「長島で貴重な鍾乳石発見!」
http://www.qab.co.jp/news/2014071556056.html
日本自然保護協会(2018年)「長島の洞窟の現地調査を求める要望書」
https://www.nacsj.or.jp/archive/2018/09/8831/
中井達郎、藤田喜久(2018)長島洞窟群の緊急調査結果とその学術的重要性について
https://www.nacsj.or.jp/archive/wp-content/uploads/2018/09/20180919_nagashimacave_houkokusyo.pdf
2019年10月29日
沖縄県知事 玉城デニー様
辺野古・大浦湾について
沖縄県による自然を守る制度の設置を求める要望書
公益財団法人日本自然保護協会
理事長 亀山 章
私たちは日本の生物多様性豊かな自然環境の保全に長期にわたり取り組んできました。このたび、米国NGOミッションブルーにより辺野古・大浦湾一帯がホープスポット(Hope Spot:希望の海)に認定されました。対象の範囲は、辺野古・大浦湾を中心にした天仁屋から松田までの44.5平方キロメートルの海域です。この認定により、辺野古・大浦湾の生物多様性やそれを育む地形の豊かさが改めて世界的に認められました。
2018年3月24日に沖縄県と当会の共催で実施した「沖縄の財産・世界の宝~辺野古・大浦湾シンポジウム」では、国際自然保護連合(IUCN)のフランソワ・シマール博士から工事の影響を緩和するために新しい海洋保護区を設定すること、その上で地域の住民がエコツアーなど持続可能な形で自然を活かした活動をすることが提案されました。
現在、辺野古・大浦湾では埋め立て工事による自然破壊が進んでいます。工事実施区域の影響が周囲に及ばないよう保護を強化しておくことが必要であり、工事実施区域内で日本政府が自然破壊を止めない現状では、沖縄県の宝である辺野古・大浦湾を守るために、沖縄県によるいっそうの努力が必要です。
沖縄県の権限でかけられる保護の制度として、文化財保護法の天然記念物、ラムサール条約登録を見据えた鳥獣保護法の禁止区域の推進などがあります。チリビシのアオサンゴ群集などの重要な場所については、エコツアー事業者の環境保全利用協定の認定などで持続可能な利用を進めていくことも大切であると思います。
沖縄県が保護の制度を設けて、それを適用し、世界中に大事な海を守るためのさらなる一歩を踏み出していただくことを望みます。私たちはチリビシのアオサンゴ群集、長島の洞窟、大浦川河口などの重要な場所を工事の影響等から守っていただくことを要望します。
参考:
2018年3月24日「沖縄の財産・世界の宝~辺野古・大浦湾シンポジウム」講演要旨集
https://www.nacsj.or.jp/2018/05/9950/