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【奄美大島】大型クルーズ船の寄港地開発に対し要望書を送付しました

2019.03.27
要望・声明

本日、奄美大島瀬戸内町西古見集落での大型クルーズ船の寄港地開発に対する要望を環境大臣、奄美大島、徳之島、沖縄島北部及び西表島世界自然遺産候補地科学委員会、鹿児島県知事、瀬戸内町長あてに送りました。

本計画が進められた場合、(1)奄美大島の環境収容力、(2)新たに島に侵入する外来種管理、(3)市民・コミュニティの参画の3点について世界自然遺産登録に大きな影響を与えることが懸念されることから、受け入れの再考を求めています。

奄美大島瀬戸内町西古見集落での大型クルーズ船の寄港地開発に対する要望書(PDF/113KB)


2019年3月27日

環境大臣 原田 義昭 殿
奄美大島、徳之島、沖縄島北部及び
西表島世界自然遺産候補地科学委員会 殿
鹿児島県知事 三反園 訓 殿
瀬戸内町長 鎌田 愛人 殿

公益財団法人 日本自然保護協会
理事長 亀山章

 

奄美大島瀬戸内町西古見集落での大型クルーズ船の寄港地開発に対する要望

今年2月1日に環境省より「奄美大島、徳之島、沖縄島北部及び西表島」の世界自然遺産登録に係る推薦書がユネスコへ提出されました。

日本自然保護協会は1990年より南西諸島を世界自然遺産に登録するよう要望している立場であり、今回の推薦を通じ保全が進むことととらえ、期待しています。前回の推薦からの変更点の一つとして、特に周辺管理区域として奄美大島の全域が推薦区域内の自然を支えるものとして申請されていることが大きな進展であると考えます。

しかしながら、近時、このことに関して大きな懸念が生じています。2019年2月2日に瀬戸内町役場において第3回「クルーズ船寄港地に関する検討協議会」が開催され、西古見集落周辺での客船の寄港地開発の計画がロイヤル・カリビアンクルーズ社より説明されました。これは国土交通省が、南西諸島のうち奄美大島・徳之島をモデルケースとして行った島嶼部における大型クルーズ船の寄港地開発に関する調査を行い、その結果を受けて、西古見など瀬戸内町全体に及ぶ大きな計画へと展開したものです。

西古見も周辺管理区域に含まれることから、この計画が実現した場合に、以下に記すように(1)奄美大島の環境収容力、(2)新たに島に侵入する外来種管理、(3)地元住民や市民・コミュニティの参画の3点から世界自然遺産登録に大きな影響を与えることが懸念されます。

 

(1)奄美大島の環境収容力

奄美大島は小さな島であり、自然資源は限られており、無限に使える訳ではありません。奄美大島に残る数少ない自然度の高い海岸を壊すことは避けなければなりません。世界自然遺産登録を目指すならば、将来にわたり持続可能な形で資源を利用し続けることができるようにすることが必須です。このことに関しては、IUCN評価書では、推薦された4島全てに対する課題とされており、観光利用の増大への懸念など環境収容力の問題に触れられています。

 

(2)新たに島に侵入する外来種管理

外来種問題は人や物の移動が多くなるとリスクが高まります。奄美大島を訪れる観光客の数は増えており、また、自衛隊駐屯地が造成されるなど、観光活動と軍事活動の両方が増え、外来種の管理が難しい方向に向かっています。これは2016年にIUCN第6回世界自然保護会議にて日本政府あてに出された勧告「島嶼生態系への外来種の侵入経路管理の強化」においても、活発化する軍事活動と観光活動に伴い生じる外来種問題への懸念が記されています。
ロイヤル・カリビアンクルーズ社が以前に竜郷町で公表した計画に基づくと、今回も数千人規模のクルーズ船が週に複数回寄稿する可能性があると報じられています。これだけの人と物の移動が一度に行われた場合に、外来種管理ができるかどうか、世界自然遺産の周辺管理区域としての役割を果たすことができるのかどうか、懸念されます。

 

(3)地元住民や市民・コミュニティの参画について

世界遺産条約では遺産の管理における市民・コミュニティの役割を重視しています。今回の西古見へのクルーズ船誘致に関しては、地元住民への十分な説明がないまま進められ、大きな問題となっています。昨年の登録延期の際のIUCN評価書においても、世界自然遺産を管理していくうえで、絶滅危惧種の現状や人為または気候変動の影響などの総合的なモニタリングについて、実効性を高くするには、地元住民をはじめとする市民・コミュニティの参画が必須であると記されています。瀬戸内町の自然の改変を伴うことに関連する情報やプロセスは市民に広く公開すべきです。

 

日本自然保護協会は、すでに就航している名瀬や沖縄島の港や航空機を通じて島に入る全ての観光客や物資などについても外来種管理の観点から問題であると考えています。しかしながら、とりわけこの計画について憂慮する理由は、西古見は奄美群島の中でもとりわけ自然度が高いからです。

西古見は環境省が指定した「生物多様性の観点から重要度の高い海域」に指定され、また付近に高い被度を持つサンゴ礁があることが同省のサンゴ礁モニタリング調査にて知られています。また、WWFジャパンの南西諸島の生物多様性重要地域(BPAマップ)においても、最も保全価値が高いランクに評価されています。

このように手付かずの自然が残っている数少ない場所です。世界自然遺産の推薦区には入りませんでしたが、周辺管理地域であり、このような自然は優先的に保護されるべきであります。

以上のことから、世界自然遺産の周辺管理地域としての機能を果たすことができるよう、本計画の受け入れについて慎重に再度のご検討を要望いたします。

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