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長島の洞窟の現地調査および天然記念物指定を求める要望書を提出しました

2018.11.19
要望・声明

長島の洞窟が、世界に類を見ないような貴重な地形であるということが2014年に初めてわかりましたが、沖縄防衛局により長島への立ち入りが制限され、長く調査ができませんでした。

2018年8月31日の沖縄県による公有水面埋立承認撤回を受け、カルスト地形の専門家である浦田健作氏(九州大学/日本洞窟学会元会長)をはじめとする皆様の助力を得て、この洞窟の正確な測量などの調査行うことができました。

しかし、これらの調査では洞窟の全てはわからなかったため、沖縄県に調査を行うよう要望しました。

 

20181115_長島の洞窟の現地調査および天然記念物指定を求める要望書(PDF・579KB)


2018年11月15日

沖縄県議会議長 新里 米吉 様

 

長島の洞窟の現地調査および天然記念物指定を求める要望書

 

公益財団法人 日本自然保護協会
理事長  亀山 章

名護市辺野古崎沖に位置する長島の洞窟の存在は、地元の人々には知られたことでした。藤田喜久氏(沖縄県立芸術大学)は2014年にその洞窟内で、サンゴ礫が付着した鍾乳石があることを確認しました。日本自然保護協会がその写真を鍾乳洞などのカルスト地形の専門家である浦田健作氏(九州大学/日本洞窟学会元会長)に提供したところ、「このように石筍にサンゴ礫が付着して成長した鍾乳石は珍しく、日本での報告例はない」ことと、より詳細な調査の必要性が指摘されました。
その後、この海域は米軍普天間飛行場代替施設建設に伴い、沖縄防衛局により長島への立ち入りが制限されたため、日本自然保護協会は6回にわたり洞窟の専門家による調査のための上陸を沖縄防衛局に申請してきましたが、回答をいただけない状態が続いていました。
2018年6月に、日本自然保護協会は、名護市東海岸エコツーリズム推進協議会、北限のジュゴン調査チーム・ザン、ヘリ基地いらない二見以北十区の会と連名で、沖縄県に対して長島の洞窟の現地調査と沖縄県の天然記念物指定を陳情しました。

このたび2018年8月31日からの公有水面埋立承認撤回に伴う工事の停止を受け、日本自然保護協会は辺野古海域において複数の分野の緊急調査を実施しました。
長島の洞窟の調査については、9月8日と12日の2日間に2名の専門家の助力を得ました。サンゴ礁地理学・地形学を専門とする中井達郎氏(国士舘大学)には洞窟内を観察して地形や堆積物の状況を記録していただきました。また前出の藤田喜久氏(沖縄県立芸術大学)には、同島の甲殻類相調査の際に、洞窟の簡易な測量を行い、その平面的形状と断面的形状の概要を明らかにしていただきました(中井・藤田、2018)。
さらに、10月27日と29日には、前述のカルスト地形の専門家である浦田健作氏(九州大学/日本洞窟学会元会長)の助力を得てこの洞窟の正確な測量などの調査をしました。
これらの調査から、この洞窟は、国または県の天然記念物に指定するに値する高い学術的な価値があることが推察できました。洞窟の規模は小さいものの多様な鍾乳石が見られること、人の立ち入りなどでそれが破損されていない状態にあることは、洞窟が多数ある沖縄県の中できわめて珍しい状況であること、サンゴ礫が付着して成長している石筍は現在も形成中の非常に新しいものであること、鍾乳洞内に鍾乳石に覆われたビーチロックやサンゴ礫などが存在し、海からの影響も受けている学術的に珍しい状態であること等がわかりました。鍾乳石の年代測定結果も約半年後に公開できる見込みです。

しかしながら、洞窟の測量の過程で確認された最奥部についての詳細測量、洞窟に流れ込んでいる地下水の化学分析、鍾乳石をつくる地下水をもたらしている島の陸上部の地質や植生は調査ができていません。また隣に位置する平島も海沿いに多くの洞窟を有しており、今回の調査時に船から鍾乳石があることを確認できたことから、平島についても上陸調査をおこなうことで、長島と平島の関連や、辺野古周辺の地域の数万年から十数万年にわたる海面変動に関連した自然史を解明できる可能性につながります。これらの解明には、洞窟の専門家が再度上陸しての調査が必要です。
また、一般にこのような洞窟には光が乏しいことから、真洞穴性や好洞穴性生物などの特殊な環境に適応した生物が生息していることが知られています。長島や平島は他所から地理的に隔離されているため、洞窟や島全体に固有種なども含む特異な生物群集が存在している可能性が考えられ、詳細な生物調査も必要です。

長島は米軍普天間飛行場代替施設建設事業予定地の近くに位置しているため、工事の影響や、潮流の変化による影響を受ける可能性があり、また地球規模で起こっている気候変動による海面変動の影響も考えられます。

洞窟をはじめとする辺野古・大浦湾の自然は沖縄県の大切な財産です。沖縄県がこれらの洞窟を有する長島と平島を調査し、保護していくことを以下のように要望いたします。なお調査の際に日本自然保護協会も同行させていただけますと幸いです。

  1. 沖縄県が浦田健作氏をはじめとする洞窟分野の専門家に長島および平島の洞窟および周辺環境の調査を依頼して実施すること
  2. 沖縄県が藤田喜久氏をはじめとする生物分野の専門家に長島および平島の洞窟および周辺環境の調査を依頼して実施すること
  3. 1と2の調査結果をもとに沖縄県の天然記念物に指定すること

 

参考資料

  • 1)中井達郎、藤田喜久(2018)長島洞窟群の緊急調査結果とその学術的重要性について
  • 2)日本自然保護協会(2014)7月9日記者会見資料
    https://www.nacsj.or.jp/archive/2014/07/523/

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