普天間飛行場代替施設建設事業に係る公有水面埋立承認の撤回についての再度の要望書を提出しました
沖縄県は7月13日にレッドデータリスト掲載種であるオキナワハマサンゴ9群体について沖縄防衛局に特別採捕許可を出したと報じられています。
沖縄タイムス_埋め立て海域の「オキナワハマサンゴ」採捕、沖縄県が許可 辺野古新基地(2018年7月14日 05:01)
日本自然保護協会は、工事を一刻も早く止め、効果のない環境保全措置を無効にする、すなわち公有水面埋め立て承認の速やかな撤回が必要であることから、このことを強く要望し、書面にて県知事に送付しました。
20180717_普天間飛行場代替施設建設事業に係る公有水面埋立承認の撤回についての再度の要望(PDF/107KB)
2018年7月17日
沖縄県知事 翁長 雄志 様
普天間飛行場代替施設建設事業に係る公有水面埋立承認の撤回についての再度の要望
公益財団法人 日本自然保護協会
理事長 亀山 章
沖縄県は7月13日にレッドデータリスト掲載種であるオキナワハマサンゴ9群体について沖縄防衛局に特別採捕許可を出したと報じられています。日本自然保護協会は、生物多様性豊かな自然環境の保全に取り組んでいる立場から、事業実施地の現状を伝え、以下の事項を要望します。
日本政府は、沖縄島周辺における最大の規模の海草藻場において護岸工事を進め、8月17日には土砂投入を始めると県に通知したと報じられています。この海草藻場には「沖縄の絶滅のおそれのある野生生物(レッドデータおきなわ)」の改定に伴い、追記された同海域に生息する海草や藻類など29種が含まれています(7月14日琉球新報)。海草については移植・造成が保全措置としてあげられているものの、事業者は移植は行わず造成のみを行う意向であると言われています(参議院外交防衛委員会、伊波洋一氏の質問に対する政府答弁(6月28日))。
希少な海草や海藻の生息が確認されたにもかかわらず、沖縄防衛局はその遺伝子を保存しようという試みさえしていません。これらの工事が進められれば取り返しのつかない海草藻場の喪失となります。
今回、オキナワハマサンゴ9群体について特別採捕許可を出したことにより、沖縄防衛局が予定している74,300群体のサンゴの移植も認めざるを得ない可能性が高いことが懸念されます。事業者のサンゴ移植計画には大きな欠点があることが、日本サンゴ礁学会保全委員会(2017)、日本自然保護協会(2013)など複数の専門家により指摘されており、適切な環境保全措置ではないことが明白です。
ジュゴンについては沖縄県環境影響審査会の議論の結果(7月4日公表)、保全措置に科学的に問題があるということが具体的に指摘されています。ジュゴンは調査のために鳴き声を放声することによりかえって危険にさらされる可能性があり、また現在の調査方法ではジュゴンの生息状況が把握できないという指摘もあります。
これまで日本自然保護協会(2013)が指摘してきたよう、埋め立て工事の影響は直接の改変地に及ぶだけではなく、周辺にも広く及ぶことが予測されます(日本自然保護協会、2013)。
上記のことから、このまま工事が進められることにより環境への影響が甚大となることは明確です。公有水面埋め立て承認の留意事項として附された環境保全の条件として設置された環境監視等委員会が環境保全のために機能していないことは明白です。
今年は国際サンゴ礁年であり、国際的にサンゴ礁保全の気運が高まっています。気候変動によるサンゴ礁への影響は沖縄島周辺にも及んでいます。国際社会にふさわしい保全ができるよう、沖縄県には沖縄の大切な財産である辺野古・大浦湾のサンゴ礁を大切していただきたいと強く願っています。
そのためには工事を一刻も早く止め、効果のない環境保全措置を無効にする、すなわち公有水面埋め立て承認の速やかな撤回が必要であることから、このことを強く要望します。
以上
参考文献
1) 日本サンゴ礁学会保全委員会(2017)
普天間飛行場代替施設建設事業に係るサンゴ類の環境保全対策について(回答)(PDF/181KB)
2) 日本自然保護協会(2013)
「普天間飛行場代替施設建設事業に係る環境影響評価書(補正後)」への意見