稲嶺進名護市長に、大浦湾チリビシのアオサンゴ群集と長島の洞窟について名護市の天然記念物に指定するよう要望書を出しました。
稲嶺進名護市長に、大浦湾チリビシのアオサンゴ群集と長島の洞窟について名護市の天然記念物に指定するよう要望書を出しました。
アオサンゴ群集は世界的にも貴重で普遍的な価値を持ち続けており、長島の洞窟についても希少性が高いと判断されています。しかしながら周辺海域では、なお重大な環境変化が起こっているため、天然記念物として早期に積極的に保護し、次世代へ引き継ぐべきであると考えます。
大浦湾チリビシのアオサンゴ群集の天然記念物指定を求める要望書(PDF/344KB)
長島の洞窟の天然記念物指定を求める要望書(PDF/306KB)
2017年7月21日
名護市長 稲嶺 進 様
公益財団法人 日本自然保護協会
理事長 亀山 章
大浦湾チリビシのアオサンゴ群集の天然記念物指定を求める要望書
日本自然保護協会は辺野古・大浦湾の生物多様性豊かな自然環境の保全に18年前から取り組んでおり、その立場から意見を述べます。
2007年9月に発見された名護市大浦湾のチリビシのアオサンゴ群集は、長さ50m、幅30m、高さ14mに達するもので、単一の種からなるサンゴ群集がこのような規模になるのはこれまで報告例がなく、大変貴重なものです。
2016年の夏に沖縄を襲った高水温等により、大浦湾一帯のサンゴ群集は大きな影響を受けました。チリビシのアオサンゴ群集も白化しましたが、秋には無事にもとの状態に戻りました。
また、毎年春先にチリビシのアオサンゴ群集の下に繁茂する海草のトゲウミヒルモが、今年は繁茂しませんでした。この海草は2015年の春までジュゴンが好んで採餌しに来ていたものです。海草の繁茂を阻んだ原因はわかりません。気候変動の影響と、工事や工事に伴う作業の影響の両者の可能性があります。
琉球列島のサンゴ礁が危機的にあるなかで、チリビシのアオサンゴ群集は世界的にも貴重で普遍的な価値を持ち続けていますが、周辺海域では、なお重大な環境変化が起こっています。そのため天然記念物として早期に積極的に保護し、次世代へ引き継ぐべきであると考えます。
2018年は第3回国際サンゴ礁年であり、世界的に気候変動の影響をサンゴ礁が受けていることからも、サンゴ礁保全の機運が高まっています。また、今年6月にニューヨークで開催された国連海洋会議においても、海洋環境の回復のための緊急対策が合意され、サンゴ礁の保全や海洋保護区の大切さが確認されました。
以上のことから、チリビシのアオサンゴ群集の天然記念物としての早期指定を求めます。
以上
2017年7月21日
名護市長 稲嶺 進 様
公益財団法人 日本自然保護協会
理事長 亀山 章
長島の洞窟の天然記念物指定を求める要望書
日本自然保護協会は辺野古・大浦湾の生物多様性豊かな自然環境の保全に18年前から取り組んでおり、その立場から意見を述べます。
2014年7月に、洞窟学、環境動態解析、およびカルスト・システム学専攻の2名の専門家により、長島の洞窟が、鍾乳洞であり、石筍にサンゴ礫が付着して成長している現象が日本での報告例が少なく、希少性が高いと判断されました。
この洞窟を調べることにより、長島や辺野古周辺の地域の数万年から十数万年にわたる海面変動に関連した自然史が判明する可能性が高く、その年代を確定するために、鍾乳洞や固着したサンゴ礫の年代測定をすべきであるという助言をいただきました(浦田健作、2014)。
また、一般にこのような洞窟には光がないことから、特殊な環境に適応した生物(例えば、真洞穴性や好洞穴性生物)が生息していることが知られています。長島の洞窟は、地理的に隔離分布しているため、ここだけに生息しており固有種化している生物の生息の可能性も高いと考えられます。
長島は米軍普天間飛行場代替施設建設事業予定地の近くに位置しているため、工事の影響を受ける可能性が高く、また気候変動による海域全体への影響も考えられるため、名護市が洞窟を調査し、それにもとづいて天然記念物に指定して、保護していくことを要望いたします。
以上
参考資料:
日本自然保護協会(2014年)記者会見資料
https://www.nacsj.or.jp/archive/files/katsudo/henoko/pdf/20140709henokokaikensiryo_0715kaitei.pdf
琉球朝日放送(QAB)2014年7月15日放送
http://www.qab.co.jp/news/2014071556056.html