高江ヘリパッド建設に伴う環境破壊への懸念に関する陳情書を出しました。
左:2016年10月15日に国立公園になったヤンバルの森
右:ヤンバルにだけ生息している飛べない鳥、ヤンバルクイナ
高江ヘリパッド建設(北部訓練場ヘリコプター着陸帯移設事業(仮称)) に伴う環境破壊への懸念に関する陳情(PDF/99KB)
平成28年9月26日
高江ヘリパッド建設(北部訓練場ヘリコプター着陸帯移設事業(仮称)) に伴う環境破壊への懸念に関する陳情
公益財団法人日本自然保護協会
理事長 亀山 章
沖縄島北部に広がるやんばるには、南西諸島の中でも最大級の面積を誇る亜熱帯の森が残り、ノグチゲラ、ヤンバルクイナ、トゲネズミ、ケナガネズミ、リュウキュウコテングコウモリなどの小型コウモリ類、ヤンバルテナガコガネ、リュウキュウヤマガメ、イシカワガエル、クロイワトカゲモドキ、ホントウアカヒゲ、カラスバトなど、国際的にも希少かつ固有な野生生物の生息地となっている。それゆえ世界自然遺産登録をめざし、今月15日には国立公園に指定された。
北部訓練場ヘリコプター着陸帯移設事業(仮称)(高江ヘリパッド建設)が行われている場所は、やんばるの森の一部であり、希少な生物が数多く棲む生物多様性豊かな場所であるが、国立公園の指定区域外とされている。このような場所が指定区域から外れたこと自体、承服しがたいことであるが、今回指定された国立公園を保全していくうえで、その周辺をいかに守れるかということは、沖縄の生物多様性保全において重要である。
そもそも本事業は工事現場へのアクセス道の建設も含めると、改変する自然環境の規模がきわめて大きい。報道されているように(琉球新報7月26日)、ノグチゲラや小型コウモリ類にすでに影響が及んでいることも懸念され、森林伐採に伴う赤土流出も危惧されている。さらに国有林が事前協議や環境調査のないまま伐採された事実も露呈された。また高江ヘリパッド建設は、米軍のMV-22オスプレイ機の訓練のために行われているものであり、訓練中の騒音やダウンワッシュによる環境への影響は大きな懸念となっている。
このような規模の大きな工事の実施に際して、沖縄県条例に基づく環境影響評価が行われなかったことは問題である。またやんばるも森で展開される米軍のMV-22オスプレイの訓練に関して行われた米軍の「環境レビュー」もまったく不十分なものであると考える。さらに、那覇防衛施設局の「環境影図書」と米軍の「環境レビュー」の間に、天然記念物であるノグチゲラやカラスバトの扱いに乖離があることなども問題である。
沖縄の大切な財産であるやんばるの森の将来に関わる問題であることから、各分野の専門家が集まる沖縄県環境影響評価審査会に、工事の内容や環境保全措置の妥当性、改善すべき点などについて諮るべきである。
日本自然保護協会は、上記の理由により以下のことを、沖縄県議会が働きかけて実現することを要請する。
- 1)沖縄防衛局と交渉し、工事をいったん中止させる。
- 2)沖縄県環境影響評価審査会に、ヘリパッド建設工事の内容や環境保全措置、改善点などを諮問し、その結果を沖縄防衛局に通知する。
- 3)沖縄防衛局に対してノグチゲラ、ヤンバルクイナ、小型コウモリ類などの希少な生物の生息状況の調査実施を要請する。
- 4)第三者機関にノグチゲラ、ヤンバルクイナ、小型コウモリ類などの希少な生物の生息状況の調査を依頼し、沖縄防衛局の調査結果と併せた総合評価を行う。
- 5)沖縄県赤土等流出防止条例に則り、沖縄防衛局に赤土防止対策を徹底させる。